貴族ってすごい!
魔法ってロマンがあっていいですよね。私は好きですよ。
ラヴィーネがロゼットと一緒に暮らすようになってから1ヶ月が経過した。ラヴィーネがしっかりと誰が誰かを認識できるようになるのにかなりの時間がかかったが、その分ラヴィーネの色々な一面を見ることができた。大好物が高級お菓子のスライムまんじゅうであること。純粋に剣の稽古が好きで、まだ騎士の道は諦めていないこと。自分の夢に続く道を切り開こうと努力している彼女の姿は、ロゼットにとって大いに励みになった。そのおかげで、自分にしかできないことを見つけるという目標ができた。誰かに必要とされなくたって構わない。自分なりの「誰かを守る力」を見つけてみたくなったのだ。
ある日、ラヴィーネがついに学校に行くと言い出した。
「私、今日からちゃんと学校に行こうと思うの。」
「ラヴィがしたいことなら、僕は止めないよ。それくらい元気になって本当に良かった。」
これはロゼットの本心だが、内心心配でもあった。クラスの中では既に仲良しグループが出来上がっている。ラヴィーネがクラスに馴染めるのかは運次第だ。
「えー、それでは今からホームルームを…あら、ガーチェさん!体は大丈夫ですか?」
「はい、長らくご心配をおかけしました。」
クラスの皆は騒然とした様子だった。完全にこいつ誰状態だ。しかし、このようなちっぽけなことでへこたれるほど、ラヴィーネはヤワではない。そのような空気をガン無視してそのまま授業が始まったのだった。
「はい、それでは今日はキュアーとポイゼルのテストをします。あぁ、ガーチェさんがやらなくていいですよ。」
「あの、先生。質問があるのですが。治癒魔法は義務教育で習うものではないのですか?」
しばらくの間、教室を気まずい空気が支配した。普通、平民の子は信託を受けるまでは家業の手伝いをする。小さな頃から魔法を教えてもらえるなんて、貴族でしかあり得ない。
ザシュッ!突然、ラヴィーネは先生の腕を少し剣で斬った。一同は余計に騒然としている、というか何が起きたのかわかっていない。
「が、ガーチェさん…どうして?」
「キューラ」
なんと、ラヴィーネはキュアーどころかその2段階上のキューラを安々と使っていた。キューアはかすり傷程度のものを治す魔法だが、キューラはどんなに深い傷でも一瞬で治せる最上級魔法だ。
「貴族って、なんか凄い!」
そしてこれは、ロゼットが一切の語彙力を失った瞬間でもあった。
「僕と同い年で最上級魔法を使える上に、剣術も一丁前とか無敵じゃん。はぁ…」
「ロゼ、料理に集中しなさい。カレー焦げそうになっているじゃない。」
ロゼットは家に帰ってくるやいなや、母に今日の晩御飯作りを頼まれてしまった。そこで、明らかに乗り気でなさそうなロゼットの様子を見かねたラヴィーネが手伝ってくれることになった。基本的にはサバサバしていても、根は優しいのだ。
「ラヴィはさ、学校卒業したらやりたいこととかあるの?」
「騎士の適性がないから王国騎士団の試験は受けられないし、どうしようかしら。まだ決まっていないわ。そういうあなたはどうなのよ。」
実はロゼットもまだやりたいことがハッキリと決まっている訳では無い。しかし、ラヴィーネに怒られる気がしたので、ロゼットは適当に話を逸らしうやむやにした。
どんでもないサイコっぷりを発揮してしまいましたね、、、そこがラヴィーネの良いところ。