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姉が愛の逃避行をしました(スペア(妹)でいいと言った王子と、それなりに楽しく暮らしていきます)  作者: 風野うた
本編

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27 温泉でテンション上がっちゃいました?

楽しい物語になるよう心がけています。

どうぞ最後までお付き合いください!!


今回のお話は少し休憩と言った感じです。まったり温泉の回、どうぞお楽しみくださいませ。

「マリー、どうした?」


 レオナルドは振り返らずに、声を掛ける。


「殿下、私の三つ編みが最悪な状態です。ゴワゴワー!!」


「マリー、まさか!湯で流したのか?」


「いえ、先に身体の汚れを流していたので、まだです」


「血の付いた髪は水で流した方がいい。マリー、俺が流してやる。体を洗って、湯船に浸かったら、俺を呼べ」


(は?聞き間違いじゃないわよね。殿下が私の髪を洗う???)


 マリアベルは一先ず、髪を頭の上にグルグルと巻き付けて、洗い場に置いてあった石鹸で体を洗い始める。しっかり手の平で泡立てて数回擦ったら、皮膚に付いた汚れはきれいに取れた。


「殿下―!洗い終わりました。浴槽に入ります」


「浴槽の中に座り、洗い場の方に後頭部を向けておいてくれ」


「はーい」


 マリアベルがレオナルドの提案に抵抗しなかった理由の一つは、この温泉のお湯が白く濁っていたからである。湯に浸かり、後ろを向いていれば、互いの身体も見えないし、顔も合わせなくていい。


「殿下―。用意出来ました」


「では、そちらへ行く」


 マリアベルは浴槽に浸かり、背中を洗い場の方へ向けて座った。すると、間近に来ていたレオナルドから話し掛けられる。


「マリー、真上を向けるか?」


 言われた通りに顔を上げると、レオナルドの頭が視界の上の端に少し見える。


「水で流す間は、少し冷たいかもしれないが我慢してくれ」


「殿下、ありがとうございます。冷たくても、今はお湯の中にいるので平気です」


「これは俺からの感謝の気持ちだと思ってくれ。マリーがいなかったら、俺は先ほどの戦いでケガをしていたかもしれない」


 レオナルドはマリアベルの髪紐をほどきながら、鍾乳洞での戦いを思い出していた。あの時、マリアベルが的確なサポートをしてくれたお陰で、レオナルドは敵に隙を突かれることも無く、安心して戦えたのである。


「いえいえ、殿下があんなにお強いとは知りませんでした。あの刀一振りで人を飛ばす力業は、どうすれば出来るようになりますか?」


「――――出来るようになりたいのか?」


「いえ、聞いてみただけです」


「俺は、もともと力が強い方だった。それと、体格もいい方だ」


「なるほど、天性のものによるところが大きいということですね」


 マリアベルは納得するように深く頷いた。


 レオナルドは浴槽の横にある洗い場の水栓をひねって、桶に水を汲む。そして、マリアベルの髪を少しずつ冷たい水で解しながら、汚れを流していった。


「感謝の気持ちとは言え、殿下にこんなことをさせていいのでしょうか?」


「ああ、気にしなくていい」


 お湯に浸かり、ゆっくりと身体が温まって行く。久々に酷使した筋肉の緊張もほぐれて、マリアベルはいい気分になって来た。それと同時に背後で冷たい水を使い、婚約者の髪に付いた返り血を健気に流しているレオナルドのことが不憫になって来る。


(私だけがこんなにぬくぬくと甘やかされていいの?これままでは、殿下が冷え切ってしまいそうで心配だわ。せめて、お湯を掛けてあげたいけど、振り返るわけにもいかないし)


「殿下も一度、お湯に入って温まりませんか、寒いでしょう?」


「いや、そんなに寒くはない」


「じゃあ、手を貸してください」


 マリアベルは湯から手を出して、後方へ向けた。レオナルドは遠慮なく、マリアベルの手を握る。


「ぎゃあ!!!冷たっ!!」


 マリアベルは素早く手を取り戻すと、もう一度、湯に浸けた。


「ハハハ、マリー、冷たかったか!」


 頭の上から、楽しそうな笑い声がして来る。


「殿下、ダメです!!一刻も早く、お湯に手を浸けてー!!しもやけになっちゃいますよ!!」


「いや、あと少しだから・・・」


 レオナルドはマリアベルと話している間も、コツコツと汚れを落とす作業を続けていた。


 徐々に返り血で固くなっていた三つ編みも緩んで、柔らかくなって行く。手触りが変わったところで、レオナルドはマリアベルへひとつ気になっていることを確認した。


「マリー、三つ編みはきれいに解けた。だが、この柔らかい髪を石鹸で洗ったら、ミシミシにならないか?」


「ミシミシ?」


 レオナルドから、ミシミシという謎の言葉が出て来て、マリアベルの眉間に皺が寄る。


「もしかして、“ギシギシする“と言いたかったのですか?」


「あ、ギシギシ!それだ!」


 レオナルドは自分の言い間違いを指摘され、苦笑を浮かべる。


「殿下、そこまでしていただけたら充分です。後は自分で洗います」


「分かった」


「では、そのまま、後ろを向いてください」


「俺に後ろを向けと?」


「はい」


 マリアベルは髪を洗うために天井を見ていた顔の顎を引き、洗い場の方へと振り返った。レオナルドはマリアベルに言われた通り、後ろを向いて座っている。


 マリアベルは浴槽から上がり、レオナルドの背後に両ひざで立つ。そして、手元にある桶で浴槽の温かい湯を汲み、それをレオナルドの肩へと流し掛けた。


(殿下の背中は筋肉が隆々としていて、いかにも強そうというか・・・、まるで戦士みたいだわ)


「マリー、ありがとう。ここの温泉は柔らかくて、いい湯だな」


「私も殿下へ髪を洗ってもらったお礼に背中を流します!そのまま、座っていてくださいね」


 マリアベルは、浴場に入るときに持ってきたタオルを手に取ると、石鹸を使って泡を立てる。準備が整うとレオナルドの大きな背中へ手を伸ばし、しっかりと力を込めて擦り始めた。


「まさか、マリーに背中を流してもらえるとは思わなかったな」


 温泉の成分のせいなのか、石鹸の品質の問題なのかは分からないが、泡立ちはイマイチだった。だが、レオナルドはそんな細かなことは全く気にしていないようだ。


「殿下、次は腕を横に伸ばして下さい」


 マリアベルの指示通り、レオナルドは腕を伸ばす。


(うわっ、殿下の腕って、太いし長いのね。身長も高いし、身体の造りが私とは全く違うわ。って、そんなの当たり前!!)


 レオナルドの腕に付いた血を、マリアベルは丁寧にタオルで擦って落としていく。最後にお湯でしっかりと泡を流した。


「殿下、背中と腕は終わりました。後はご自分でお願いします」


 マリアベルはレオナルドの背中を流し終えると、再び浴槽へ入り、洗い場に背を向けた。


 レオナルドは浴槽へ背を向いたまま、身体のまだ洗っていないところを自分で洗う。そして、最後に頭へ付いた返り血を石鹸と冷たい水を使ってしっかりと洗った。


「よし、俺は全て洗い終わった。マリーはこの後、髪を洗うだろう?俺は右の浴槽へ戻っておく」


「ええっと殿下、わざわざ戻らなくても此処に入っていいですよ。お湯が真っ白に濁っていて、何も見えませんから大丈夫です。私は目を瞑っておきます。どうぞー」


 マリアベルは目をぎゅっと閉じる。レオナルドは少し考えてから、マリアベルの言葉に甘えることにした。正直なところ、右と左に離れていると話をするのも大変なのである。


 チャポン、チャポンとお湯に足を入れ、レオナルドは浴槽に身体を沈めた。と、同時に大量のお湯が、ザーッと洗い場へ流れ出ていく。


「マリー、もう目を開けても大丈夫だ」


 レオナルドの言葉を聞いて、マリアベルは瞼を恐る恐る持ち上げる。目の前にレオナルドがいた。彼は首までお湯に浸かって、マリアベルを見ている。


「ここのお湯は長く浸かっていても大丈夫そうな、いい湯加減ですよね」


「ああ、ぬるめで気持ちいい」


 しばし、二人は無言のまま、お湯に浸かる・・・。


(殿下が凍えてしまわなくて、本当に良かったわ。理由が婚約者の髪に付いた返り血を洗い流していましたって、流石にマズイでしょう・・・。ところで、アレ(摘発書類)は何処に置いたのかしら。もしかして脱衣所?この隙に盗まれたりしたら、マズくない?)


 マリアベルは湯の中でレオナルドに、そーっと近づいた。


「殿下、例のアレは何処へ」


 レオナルドの耳元へ、くちびるを寄せて囁く。


「うわっ!?マリー、ドキッとするから、急に近づくのは止めてくれ」


 珍しく、レオナルドが狼狽えたような素振りを見せる。


「アレなら、そこにある」


 レオナルドが指差した先には、濡れていない(使っていない)桶があり、そこへ黒い布で包まれた何かが差し込まれていた。


(あ、私が心配するまでもなく、殿下は抜け目がなかった!!)


「要らぬ心配でした!!」


「いや、そういう確認は大切だ。ところで、マリー、髪を洗うのだろう?後ろを向いておこうか?」


「ええ、よろしくお願いします」


 しっかり温もったマリアベルは、返り血を流してもらった髪を洗うことにした。レオナルドは気を遣って、マリアベルを見ないように明後日の方向を向いている。


(最初は右左に分かれて入ろうって言ったのに結局、仲良く一緒の浴槽に入ることになるなんてね)


 マリアベルはふわふわした気持ちで石鹸を泡立てて、髪の汚れを落としていく。最初は絶望を感じるくらいゴワゴワになっていた銀髪も、いつも通りの柔らかな感触に戻っていた。これもひとえにレオナルドの丁寧な洗浄作業のおかげである。。


「殿下―!髪の毛が元通りになってます!!ありがとうございます!!」


マリアベルは感謝の気持ちをレオナルドへ直ぐ伝えた。


「それは何よりだ。マリー、良かったな」


「はい!」


 マリアベルは元気よく返事をした後、再び浴槽へ。


「殿下、少し近づいてお話をしても?」


(さっきは驚かせちゃったから、今回は先に了解を取っておこう)


「ああ、何だ?」


「あのー、ポルトスのことなのですけど。将軍にはポルトスのことをお話にならないのですか?」


「その件は言わないつもりだ。アレのことも言わない」


 レオナルドは書類の入った桶の方を見た。


「了解です。私も口に出さないようにしますね」


 レオナルドは身体が温まって、少し頬が赤くなった顔で微笑みながら頷く。


「殿下、やっぱり今までモテなかったというのは絶対、気のせいですよ。もう、カッコいいし、逞しいし・・・あ!」


「――――マリー、最初の約束はどうなった?俺はちゃんとマリーを見ないようにと約束を守ったのに」


「ごめんなさい」


 マリアベルは上目づかいでレオナルドを見詰める。その姿が可愛くて堪らないと感じたレオナルドはついに・・・、いつもの如く、意図的に触れることにした。


 腕を伸ばし、間近にいるマリアベルの肩を掴んで首筋をガブリもとい、強く吸い上げた。急に猛獣に攻撃されたマリアベルはビックリして動けなくなる。


 それを良いことにレオナルドは顔を上げると、マリアベルのくちびるにも襲い掛かった。触れるだけではなく、マリアベルの頭の後ろに手を回し、舌で口をこじ開けた。


(えっ!はぁ?何、何をしようと言うの!?もう、ダメだってばー!!)


 我に返ったマリアベルは、レオナルドの肩をバンバンと強く叩いた。


「レオナルド様!!もう!!」


 憤った声を上げ、マリアベルはレオナルドを睨みつけた。首筋に赤い痕をくっきりとつけられているとも知らずに・・・。


「これでお相子だ」


「えっえええ・・・!?それじゃあ、私の方が大損ですよ!!」


 マリアベルはムーっと頬を膨らませる。


「マリー、その顔も俺にしてみれば可愛いとしか思えないから無駄だ」


「は?」


 レオナルドの残念な発言に呆れたマリアベルは戦うのを止めた。これ以上、レオナルドに何か仕掛けても勝てそうな気がしないと思ったからである。


「さあ、そろそろ上がろう。エヴァンスが帰りの道を見つけていればいいのだが・・・」


「――――はぁい、そうですね」


 マリアベルは一気に疲れた。


「じゃあ、俺が先に上がる。また左右に分かれるか?」


「はい、分かれます。流石に真っ裸をご披露する勇気はありませんから」


「分かった」


 レオナルドはマリアベルに返事をするなり、躊躇なく湯船で立ち上がる。マリアベルは慌てて目を伏せた。


(何よ!殿下は裸体に自身があるのでしょうけど、私は無理!!もう意地悪っ!!)


――――――――――

 

 ドスン!!


 マリアベルは脱衣所へ戻るなり、湯あたりで突然、床へ倒れ込んだ。異変に気付いたレオナルドはマリアベルに駆け寄る。


「マリー!大丈夫か?」


「んー、目が回る・・・」


 レオナルドはマリアベルを床に寝かせ、冷水でタオルを絞ってきた。それをマリアベルの首の後ろに当てて冷やす。


 水も少しずつ飲ませた。


 三十分後、マリアベルは無事に回復。


 このアクシデントのせいで、約束の一時間を超えてしまい、エヴァンス達にレオナルドは白い目を向けられる。「――――違います」と反論したマリアベルも、まだ本調子が出ず、ふらふらとしていたので尚更、エヴァンスからレオナルドへの不信感は増してしまった。


「殿下、王子として正しい行いをしてください。理性を失ってはいけません」


 狸爺にまっとうな注意を受けたレオナルドは言い返す言葉もなく、反省するしかなかった。確かにやり過ぎたという自覚もある。横で真っ青な顔をしているマリアベルに申し訳なくて、だけど何と謝ればいいのかも分からず、レオナルドは途方に暮れてしまったのだった。


“何故、俺はあと少しを我慢出来なかったのだ”と。

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