記憶
周りが何も見えない暗闇の中にいる。
「どこだここメルア?」
「こっちよ」
オレは手探りで辺りを調べる。
柔らかいものに触れた。
「きゃあ! このバカ!!」
「ぐはっ!!」
メルアに殴られた。
「なんなんだよ。
ここは!」
「多分......魔法かしら、ほらあそこ光」
光がある場所にいってみる。
そこに行くとは周囲にいくつかの仄かな光が点在していた。
「これは記憶だわ......」
確かにその光りには映像が写っている。
その一つにメルアが触れると、オレたちは石で囲まれた遺跡のような場所にいた。
そこには黒い光りの球体の前にヴァルキサスがいた。
オレが構えると、メルアが止める。
「これは過去の記憶よ。
あの宝石がみせているのね」
オレたちがみていると声が聞こえる。
「本当かそれは」
ヴァルキサスは狼狽している。
「そうだ......
このままではいずれこの大地は全て消え去るであろう」
頭の中にくぐもった声が聞こえた。
「これあの黒い光の声か......」
「もう少しみてみましょう......」
「この世界が人間だけではなく、魔族もか」
「そうだ......
生きとし生けるもの。
動物や植物、大地、海、山、そして......」
「父上も......」
「ヴァルキサス......
我を目覚めさせよ......
さすればこの世界は救われる。
ファースト......いやヴァルザベールも」
「だが、私は人間だ......
それほど魔力も命も続かない......」
「我がお前に知恵を授けよう。
かつての文明の技術を」
そこで周囲は消え暗闇に戻された。
「あれは......」
「よくわからんが、あの球体がヴァルキサスをそそのかしてるみたいだったな」
「まずいんじゃない!
あの球体なんかたくらんでるみたいだわ!
ベルに伝えないと!」
「でもこっからどうでるんだよ!?」
「......衝撃を与えれば......
仕方ないわね。
シンジ歯を食い縛りなさい」
「えっ? 待って!! 待って!!」
逃げるオレを楽しそうにメルアが追いかけてくる。
「フッフッフッ、さあ、おとなしく死に......
なぐられなさーい」
「お前楽しんでるだろ!!」
「フェアリーナックル!!」
「ぐへえ!!」
衝撃で目が覚める。
空では黒い巨人とベルが戦っていた。
「あれを止めねえと!」
オレは魔力を両手に集めて撃ちだした。
メルアは魔法を放った。
ベルは少し距離をとった。
「シンジ、メルア!?」
「おーい! ベル!
ヴァルキサスは人間への復讐より、お前を救いたいみたいだ!」
「魔王ゼロとかいうのにそそのかされてるみたい!」
「なに!?
まことかヴァルキサス!」
「......あ、なた、は人間......
の、愚かさを......しっているはず......
このままでは......
いずれ......かつてのように......ヴヴ」
ヴァルキサスは突然苦しみだした。
「どうした!?
ヴァルキサス!!」
「久しいな...... ファースト。
私だ......」
「ファースト...... その呼び名どういうことだ......
お主はまさか......」
「そうだ私は魔王ゼロ......
いやプロトタイプゼロ」
「プロトタイプ......
まさか意志があったのか......」
「そしていま体も手に入れた。
これで任務を遂行できる」
「任務まさか!?
やめよ!!」
黒い巨人が息を吸い込むと周囲から黒い霧がどんどん巨人に吸い込まれていく。
ベルからも黒い霧がでていき空から落ちてきた。
オレはそれを受け止める。
見るとベルは子供の姿に戻っていた。
「これは!?
どういうことだベル!?」
「やつが全ての魔力を奪っておる......
このままでは全ての魔力がエネルギーがこの星からなくなり、この星は崩壊する......」
「なによそれ!!
確かに魔力が減ってるわ......」
地上でもモンスターたちが倒れていく。
「なんなんだあいつ!
なんのためにこんなこと」
「......おそらくかつての命令なのであろう。
任務といっておった......」
「任務? それにプロトタイプとかファーストとか......」
「それは我ら大魔王がかつての超文明が作り出したものだからだ」
「作り出した?」
「かつて人類は魔力......
いやグランと呼んだエネルギーの枯渇に悩んでいた。
そこでエネルギーそのものに意志を持たせ、生物、無生物、様々なものからエネルギーを吸収利用しようと考えた......
そこでつくられたのが我ら四体の大魔王、そして試作品のプロトタイプゼロだ」
「それがあいつか」
「そうだ......
我らは産まれたが人間たちはその力を誤って使い、世界を滅ぼした......」
「誤って使い......」
「戦争だ...... 少ないエネルギーをぐり戦いがおこった。
我らを兵器のエネルギーとして使ったのだ。
その戦争の結果人類は激減し、エネルギーは散りこの星は荒廃した。
我らは星をもとに戻すため古代の技術を使い我らの複製を作った」
「それって魔族......」
「......うむ、そして永い年月をかけて周囲に散った魔力を集め少しずつ星を元にもどしていったのだ」
「じゃああいつは」
「あやつには元々エネルギーを集める能力はない。
ただ貯めて使うだけの試作品だった。
おそらくヴァルキサスを取り込んでその力を得たのだろう。
このままではこの星のエネルギーは食い尽くされてしまう......
やつの元にまで行ければ......」
ベルは押し黙り沈黙が続いた。