守護者《ガーディアン》
祭壇の上には大きなピンク色の球体があった。
それは卵のようだった。
「なんだこれ? デカイ卵?
それで、どうすんだ? デュエリア」
「祈るのだ。
マーメイドの守護者メルリール。
我が声にその眠りより目覚めよ!」
そうデュエリアが祈りを捧げると、卵がわずかに動いた。
「んー なにぃ? まだ眠いのじゃ」
そうだるそう声が卵から聞こえた。
「あかん! これはあかんやつや!
帰ろう時間の無駄だこれ!」
「何をいっている!
我らが守護者だぞ!
おおきください!
今マーメイド族が大変なんです!」
「えー マーメイド族ぅ? ああそういや眠るとき任せたっけ?
んー あれね。
行けたら行く」
そういうと、スピーと寝息をたてた。
「お前ふざけんな! さっさとおきろ!」
オレははらがたってガンガンと卵を叩く。
「やめるのじゃ!
まだ中身固まってないんだから、ちょっとトロっとしてるのじゃから!」
「止めよシンジどの!」
「いーんだよ! デュエリアこいつに似たやつをよーく知ってる。
多分同じ系統だ。
おい! 手伝ったらうまい飯食べさせてやるぞ」
「えっ!? ご、ごはん! ちよっとまって仕度するから!」
「仕度ってなんだよ! さっさとでてこい!」
オレが卵を剣の柄でガンガン叩く。
「だから止めろというに! 女の子には仕度ってものがあるのじゃ!
お主もてないじゃろ!」
「うるせえ! そうだよ! ガッツリもてないよ!
だからこうしてやる!」
ガンガン、ガンガンガ、ガンガンガガンガン。
「人の卵でリズムとるのは止めるのじゃ!」
オレは柄で連打した。
すると、卵にヒビが入り割れた。
「ふっふっふっ、永き時をこえ、いまこの現世に再び現れる......
そうわらわこそは......」
「いいから行くぞ」
オレは卵の中から女の子をひょいとつかむ。
「止めるのじゃ! 久しぶりの口上なんじゃから言わせるのじゃ!」
それは幼いピンクの髪の女の子だった。
「おい、デュエリアこんなのがホントに使えんのか?」
「こんなのって何じゃ!
わらわはメルリール!
さっさとごはん食べるのじゃ! ごはん! ごはん!」
「止めんかシンジどの!
メルリール様食事はすぐ用意しますので、私は先に帰ります!
シンジどのメルリール様を頼む」
デュエリアは急いで戻っていった。
「お主シンジとか言ってたの。
わらわをおぶるのじゃ」
「歩けよ」
「いやじゃ!
わらわはなるたけ楽がしたいのじゃ」
「あいつとクリソツだな。
しゃーない」
オレは仕方なくメリエールを背負う。
「うむ、くるしゅうない」
偉そうにメルリールはいった。
「お前いったい何なんだ? お前によく似た妖精を知ってるけど」
「妖精? ちがうのじゃ!
わらわは精霊じゃ」
「いや、一緒だろ」
「ちがう。
自然界の魔力が集まってうまれるのが妖精、そしてさらに上位なのが精霊、そしてそしてさらに上位なのが神じゃ。
つまりわらわは神に近い存在なのじゃ。
わかったな。 わかったら敬うのしゃ。
なんなのじゃ! その疑いの眼差しは失礼な!」
「疑ってはないよ。
神ですらあんなのだったからな。
妖精もあんなだったし、まあ精霊もこんなのだろう」
「なんなのじゃ! こんなのあんなのって......
いや神にあったのか!?
そうかお主、転生者か!」
「そうだよ」
「ふぅん、わざわざこの世界を選ぶなんて変なやつじゃの。
どうせ他の世界じゃ役立たずだったから、他の世界でワンチャンってとこじゃろ」
「ちがわい! この世界に来れば妖精ついてくるって言われたからだわい!」
(まあ半分当たってるけど......)
「妖精なんてお主の思ってるのと違うのじゃ。
わらわたちもそうじゃけど、善でも悪でもないのじゃ」
「よく知ってるよ。
オレの知ってるやつは悪よりだけどな」
「そうなのか。
まあよいわ。 ではいまの状況を簡潔に説明せよ」
オレはメリエールにサハギンに襲われていることや、魔王ゼロ、三魔将のことを話した。
「十年前に魔王がのう。
まあわらわが封印されてなかったら、そんな魔王はワンパンじゃけどな」
「封印ってまさか千年前の勇者カイか」
「そうじゃ、そうじゃ、あのカイじゃ。
よく知ってるのう。
って千年もたってるのか!!
そうかそれでわらわの武勇伝が世の中に広まってるのか。
うんうん」
「ううん、お前のことは全然知らん。 全然知らん」
「二回もいうな!
いやなんじゃと! どういうことじゃ!
わらわは大魔王ヴァルザベール様の四天王、界律のメリエールじゃ!
有名じゃろうが!」
「えっ!? お前ベルの四天王なの!!」
「なにベルとは? そういやその剣グランドレインじゃないのか!」
オレはベルのことを話した。
「そうなのか! ヴァルザベール様が復活なされたか!
なら余裕じゃの、ゼロとかデコピンで倒せるわ!」
「いやそれがいまは魔力が少ないんだよ。
だから魔王倒す力がないんだ」
「そんなはずは......
そうか、この世界の為に」
メリエールは何かを考えているように黙った。