海境神殿《アクアテンプル》
オレとデュエリアは海境神殿に入った。
「おお! 水の中なのに息もできる!
多少浮力があるから歩きづらいが、まあなんとか体も動かせるな」
「早くいこう。
サハギンたちはおそらく夜の闇に乗じて総攻撃してくる。
それまでに守護者を起こさねばならない」
「で、守護者ってなんなの?」
「私もみたことはない。
千年前に封印されたらしいから、起こしてはならないと掟として伝わっている」
「そんなの起こしていいのかよ」
「マーメンドが危機となったときのみ起こすという掟だ。
十年前の大戦でも起こさなかったから、何が起きるかは正直わからない」
「しゃーないな。
このままだと敗北確定だしな」
神殿は入り組んでいてしかもサハギンたちまで入り込んでいた。
オレとデュエリアは何とか排除して先に進む。
「もう少しだシンジどの。
あとすこしで祭壇のある最下層までたどり着く」
「ふう、なんとかいけそうか」
「さすがだな。
あのサハギンたちをああもあっさり倒すとは、あなたを連れてきてよかった」
「ま、まあね。
それよりデュエリアは強いな。
そんな細くてきれいなのにそのでかい槍を片手で振るうなんて」
(あと動くたび揺れるのがいい!)
「そ、そうか。
そんなことを言われたのははじめてだ」
デュエリアは照れている。
オレたちが最下層の奥に進むと少し上にいける穴があった。
そこにあがると空気がある。
「ここは、空気があるな」
「ああ、この先が祭壇になっている。
いや、これは......」
「ああ、後ろから何かとても高い魔力を感じる......
こいつヤバいぞ......
隠れた方がいい」
「ダメだ!
もうマーメンド族を救うには守護者の力を借りるしかないのだ!」
(初見ならリブーストでやれるか......)
「まあ、やるしかないか。
どっちみちこのままだと死ぬしな」
オレたちはゆっくり距離をとり魔力を抑えると、後ろから来る者を
待った。
すると、水の中から髪の長い女が現れる。
「あらあ、先客かしらね」
それは死神のような大きな杖を持つ露出度の高い服を着た赤い髪の妖艶な女性だった。
(えっろ! いや今はそんなことはどうでもいい......
いやよくない! よく見とこう)
「貴様は何者だ! 神殿に何のようだ!」
デュエリアは語気を強める。
(まってー! デュエリアちゃーん! そのお姉さんあんまり刺激しないでよー!)
「私は召喚師と言うものよ。
あなたたちこそ何者、一人はマーメイド、もう一人はゴブリンかしら」
「誰がゴブリンじゃーい!!」
(いや、サモンマスター? どっかで聞いた......
あっ! あいつ人形師と同じ!
確か三魔将の一人か!?)
「あら人間なのね。
で坊やとお嬢ちゃんはここに何のようかしら」
(用があっても、このまま帰りたいです)
「貴様こそここから去らねば、このシンジどのと私デュエリアが許さぬぞ」
(止めてーー! きっとすごい強いから!)
「そう言うわけにはいかないわ。
あなたマーメイドなら魔宝玉の場所知っているわよね」
そういうと召喚師は呪文を唱える。
(まずいなにか魔法を! いまやるか! いや壁だったら死ぬ!)
地面から青い光の柱が何本も出てそこからサハギンたちが現れた。
「貴様サハギンどもと結託しているのか!」
「サハギンと結託......」
召喚師はふふふと笑う。
「サハギンは私が操ってるのよ」
「なに!?」
(やっぱりか...... なら狙いは)
「あなたか坊やか捕まえて体に聞けば教えてくれるかしら」
「ええ、なんなりと」
「何を言ってるのだシンジどの!」
「あぶねえ、つい!」
サハギンたちが向かってくる。
(色々聞きたいが、そんな時間もなさそうだ!
サハギンよりあっちのお姉さんを狙う)
「デュエリア、サハギンを頼む!」
オレはリブーストを使い一瞬で召喚師に近づきグランドレインで斬りつけ走り抜けた。
「くっ!? なに!!」
召喚師に深い傷を負わせた。
オレは再度リブーストで攻撃しようとした。
「サハギンどもたてになれ!」
サハギンが召喚師を囲む。
「くそ! 追撃は無理か仕方ない。
お前は魔宝玉を使って魔王ゼロを復活させようとしてるのか」
オレがそう言うと、召喚師は驚いた顔をした。
「......そうか、人形師が言っていた高速移動する
アホずらの少年とはあなたのことだったのね......」
「誰がアホずらだ!」
召喚師は立ち上がる。
「その傷じゃ戦えないだろ。
さっさと帰ってマーメイドから手をひけよ」
「......確かに、この傷じゃ戦えないわ。
でも、サハギンたちであなたたちを蹂躙してあげるわ。
楽しみに待っていなさい......」
そういうと召喚師の体が光輝くとその姿が消える。
「転移魔法か」
「さすがだな! シンジどの!
あやつを退却させるなんて」
「一度だけだよ。 もう使えない。
それより確実にサハギンは襲ってくる。
早く守護者を」
「ああ」
オレたちは祭壇に走って向かう。