新たなる冒険の始まり
「う、ここは? 宿屋か......
確かオレは......」
「やっと目が覚めたわね。
全く心配させてこのバカシンジ」
「うむ、まさか、グランブレイクを使うとはな」
「シンジさん。
大丈夫ですか?」
みんなの話によるとアメンテラーは捕まり王も無事だったようだ。
そして報償をかなりもらったとのことだった。
「じゃあ、あたしこのお金銀行に預けてくるから!」
メルアがそういって袋一杯の金貨をもっていこうとする。
「......リーゼルついていってくれ」
「は、はい」
「なによ! わたしが信じられないっていうの!!」
オレは無言で頷く。
「バカシンジ!」
「その金になにかあったら、むく」
「このどヘンタイが!」
そう怒鳴りながらメルアはリーゼルと出ていった。
「それはそうと、シンジこれからどうするつもりだ」
「金はあるからな......
まあ、冒険も今となっては楽しかったが、取りあえずのんびり暮らそうと思う」
「そうか」
「ベルはどうする?
オレたちと暮らさないか」
「それもおもしろいかもしれぬが、会いたいものがおってな」
(会いたいもの......? もう死んでるだろ)
しばし沈黙があって。
「なんか遅くないか......
メルア」
「確かにな」
「まさか!? あいつ」
「何者かにおそ......」
「もって逃げやがったのか!」
「いやそれはあまりだぞ。
シンジ」
その時部屋のドアが開いた。
ゆっくりと入ってきたメルアとリーゼルの顔をみてオレは悟った。
「い、いくらだ......
三分の一、いや半分までなら許そう......
いくら使った......」
少し時間があって。
「うん。 全部」
「はは、は、いいって、メルアさんそんな冗談いまは、はは、は......」
この世の終わりかのような絶望的なリーゼルの表情をみてオレはゆっくりあるき、メルアをむんずとつかんだ。
「むく」
「うきゃあああああ!!!」
「止めぬかシンジ。
人には間違いもある」
「わかってる。
でも人じゃない妖精だから、むく」
「いーーーやーーー!!!」
「すみません!!
賭け事は止めたんですが! 許してください!」
リーゼルか深く頭を下げる。
「そ、そうよ!
リーゼルもあやまってるじゃない!
許してあげましょうよ」
「お前があやまらんかーーー!!!」
オレの声が町中に響いた。
「まったく!
これでまた冒険者しなきゃいけないだろーが!」
「まあ、よいではないか。
これも人生経験のひとつとして受け入れよ、ほほほ」
「オレは一回人生終わってんの!!」
「まあまあ、シンジ。
すんだことはくよくよしても仕方ないわ。
頑張ってお金返していきましょうよ」
「お前がいうな!!
......ん? お金返すってなに?」
「あ、あのメルアさん足りなくなって、怖い人からお金かりちゃいまして」
言いづらそうにリーゼルは目を伏せていった。
「お前いくら借りた......」
「1000万、あれがくれば十倍だったのよ。
十倍。
ほんとについてないわ」
「......やっぱむく」
「ごーーーめーーーーーーーん!!」
「どーすんだよ!
1000万なんて返すあてないぞ!」
「大丈夫よ。
いざとなれば踏み倒して他の国に逃げちゃえばいいんだし」
「なるほど! それもそうか」
「あわわわわ、おふたりなにをいっているんですか!」
「なるほどではないわ。
借りたものを返さぬでどうする
魔王の名がすたるわ」
「でも、どーすんだよ。
1000万なんて無理だぞ。
ユリアーノとか無理か」
「そうね。 恩もきせてあるし......
断わられたら、あの家家具とかいいものありそうだし......」
「だな...... クックックッ」
「二人とも止めよ。
盗賊にでもなるつもりか。
こうなってはあやつに頼むしかあるまいな」
「あやつ?」
オレたちはレスパーの邸宅にきていた。
「これは皆さんおそろいで、やはりおいでくださいましたね」
「くっ! 来たくなかったがな」
「では、お引き取りを」
「サーセン!
お仕事! 高額なお仕事をクダサーイ!!」
オレはためらいなく土下座をした。
「いいんですか。
わたしのこと嫌いでしょうにプライドとか傷つきませんか」
「腹の足しにもならんプライドなどいらぬわ!」
「フッフッフッ、いいですね。
その性格好きですよ」
「それよりお仕事プリーズ」
「そうですね。
ではひとつ実はある盗賊団が荷物を襲うんです。
そいつらを倒してもらえますか」
「またあの教団じゃないでしょうね」
「いいえ、今度のは本当の盗賊です。
我々商会の荷物もやられて困っているのですよ」
「まあ、なんだっていいや。
そいつをやっつければいいんだな」
「ええ、お願いします」
そういうとレスパーはその涼やかな顔に笑みを浮かべた。