貴族ユリアーノ
「なにがではまただ!
二度とくるか!」
「そうよ! そうよ! ベー」
オレたちは悪態をつきながらレスパー邸宅をでた。
「これが報酬か」
オレたちは十個の金貨の袋のひとつを開けた。
中から黄金のかがやきが放たれる。
「すげー!!」
「わたしのよ! わたしのものよ!」
「ほう、十万という価値の金貨もあるのか......
で、ユリアーノとか言う貴族の方はどうする?」
「んー、もういいんじゃない、こんだけあれば遊んで暮らせるだろ」
「そうそう、めんどくさいしねー」
金貨に抱きついていたメルアが言った。
「シンジを鍛えたいのだが......
まあ気が変わるまで待つか......」
オレはハッと気づいた。
「だが相手は貴族、機嫌を損ねれば厄介なことになる。
難癖つけられて金をとられるかもしれない......
いやだー! この金はオレんだー!」
「確かにあり得るわね。
一応挨拶だけして帰らない」
「そうだな」
仕方なくオレたちは貴族ユリアーノの元に向かった。
「ここも、でけーな」
ユリアーノの大きな屋敷をみてオレは言った。
「まあ、あたしたちもこのぐらいの家建てられるんじゃない」
「まあ、それもそうか、はははは」
屋敷の中に通されると、貴族ユリアーノが大きな椅子に腕を組み座っていた。
「ずいぶん時間がかかったな」
ユリアーノは眉間にシワをよせそういった。
「オレこういう圧かけてくるの苦手なタイプ」
「わたしもー」
オレたちがこそこそ話していると、ユリアーノが一枚の紙を机に置いた。
「実は、魔王を復活させようと企む者たちがいる。
そして多くの者が犠牲になっておるのだ」
「ああ、それならやっつけましたよ」
「うん」
「うむ」
「なに!?」
驚くユリアーノにオレは事情を話した。
「......なるほどあのキツネ......レスパーが。
確かに王宮より教団を調べるよういいつかっておったな......」
「じゃ、そういうことで」
「まて! 話は終わっておらん。
いまだ教団は存在するのだ。
そう、まだな......」
「あいつらみたいのがまだいんのか......」
「そこで、お前たちにある迷宮に向かってもらう」
「なに勝手なことを!」
「そうよ! そんなのギルドに頼めばいいでしょ!」
「できぬ事情があるのだ......
これはこの国の存亡がかかっておる。
我らとて動ければお前たちなどにたよりはせぬ」
そういって苦悶の表情を浮かべる。
(よしここは受けて、さっさと他の国に逃げよう)
オレがメルアを見るとうなづいている。
「わかりました。
迷宮にいけばいいんですね」
「そうだ。
夢魔の巣という迷宮が南の森にある。
そこの地下にある鉱石をとってきてもらいたい」
「じゃあ、行ってきます」
オレたちが部屋からでようとした時。
「まて。
もしこの事を外にばらしたり、この国より逃げようとしたりした場合、お前たちをこの世の果てまで追い詰め、生きてきたことを後悔させるからな。
このことゆめゆめ忘れるな」
そういってギロッとにらんだ。
「は、は、はい~ わかりました~」
オレは震えて答えた。
ユリアーノの屋敷をでて、南の森へ向かいオレたちはあるいていた。
「くそーー!
会うんじゃなかった!」
「ねえ! まだこのまま逃げちゃうってのはどう!」
「それな!」
「止めておいて方がよいな」
「なんで?」
「魔力で探ってみよ」
オレが魔力感知で探ってみると、うっすらと魔力の帯がオレたちを包んでいる。
「これは!?」
「これおそらくあたしたちが逃げないように見張ってるんでしょ。
この距離を探れるなんてかなりの手練れね」
「そいつを迷宮にいかせなさいよ!」
「なにか訳がありそうだな」
「仕方ない、いくか......」
オレたちは森にいくことになった。