最終懲罰的結婚相手~奥さんがまた駆け落ちですって!~
なんか、降ってきました。
世の中が理不尽だ。
「えー、また、駆け落ちされたの? 今度はなに? 執事? 幼馴染? 異国のつがい?」
ぎゃははと笑いながら言うのが心底むかつくこいつが国王で諸悪の根源。
「あのなぁ、俺を利用するのもたいがいにしろよっ!」
「そぉいうつもりはないんだけどなぁ。どれもひっどい境遇か、ひっどい性格の女の子たちで、他に頼る人なんていないはずなんだよ」
「そんな事故物件じゃなくて普通の嫁をよこせ」
「えー、その、なりで、言える?」
「ぐむむっ」
残念ながら言い返せない。
この世界において、俺が絶望的なくらいの不細工だからである。
忌み嫌われている、というのとはちょっと違う。生理的に無理に近い、らしい。なにせ人に近づくとぱたぱと倒れていく。気絶したのを介抱しようかと近づけばうへへとちょっと気持ち悪い笑い方をしていたりもする。
声をかけようとすればおやめくださいと。
出来ればと進呈された仮面。俺、泣いていい? 幼児期から無理もう無理と言われ続けた俺ではあるが、どうにか生きてこれたのは遠巻きでも誰かがいたからだ。
あとついでに前世の記憶があった。
おかしい。前世の感覚で言うとイケメンなはずなんだ。顔立ちは整ってるし、背も高くて筋肉もそこそこついてて。
それなのになぜモテない。
ある日突然に気がついたのはきっとこの世は美醜逆転世界なのだということ。つまりは相当な不細工なのだ。
気落ちした。一か月くらい引きこもった。さすがに周りから心配されたのか手紙が届いたが、人が訪ねては来なかった。扉を叩いて、出ればいなくなっているというのは何かの嫌がらせだろうか。
もう何もかも嫌になって、仮面をつけて生活して今に至るが。
顔が悪いというのはそれほど悪なのだろうか。
「俺は傷ついてるんだけど!」
「おっかしーなー、誰かはほだされてくれると思ったんだよ? ほんとだよ?」
首をかしげて難ありな嫁を投げつけてくるな。それで、なんで公開処刑のように毎回、嫁に逃げられた男と言われなければならない。
そして、元嫁は幸せにやっているらしい。
ふざけんな。
「リア充死すべし」
「あはははっ! どこへなりとも連れて行けばいいとか言いだすのに本音はそれとかウケるわー」
「少しくらいは好きになってくれるかと甲斐甲斐しく世話もしても! なんで! 出ていく!」
「いい人すぎたかなー」
「責任、取れよ。もう、振られるのヤダ」
「んー?
じゃあ、僕が」
「それはお断り」
「なんで?」
「友達だから」
沈黙が長かった。
ふはははと国王は笑う。そりゃあもう自棄のように。
「そこ! そこなんだっ! よし、わかった。婿にする。うん、決めた」
「な、なにを勝手に」
「親の都合で性別偽って生活するのもうヤダ。それも好きな男を他の女にくれてやるとかマゾかよってやつで」
「は?」
「かなり前から、恋情をこじらせてる」
「はあ!?」
お、おかしい。なぜ、友人だった国王が女王になる手伝いをさせられたのだろう。性別は最初から知っていたが、異性という気は全くないので、そもそも範疇外で友人枠だったのだが。
「うちの旦那様は世界一」
うっとりと見上げてくる元国王、現女王様が可愛いなんて嘘だ。
「そういうのおまえだけ」
「うんうん、そうだね」
幸せそうに笑うから、じゃあ、いいかと思ったのは永遠に秘密にしておきたい。俺は嫌々、王命に従ったんだ。
そういうことにしている。