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男子高校生冒険者の約束

続きました。



男子高校生、依頼掲示板を見る。



「そういやソンもなんかごちゃごちゃ考えてたよな。お前、そういうのあんまこだわんないタイプかと思ってたんだけど」



 机に突っ伏して身悶えしてるコバを弄り倒すのに飽きたのか、ユーイチが声をかけてきた。コミュ強だなあ。良いやつではあるんだけど、正直ちょっと苦手なタイプだ。

 4,5人くらいの仲良しグループがあるとして、間違いなくその中心にいるタイプ。僕としてはこう、居心地は良いから一緒にいるけどあんまり喋らない、でもたまに的確な助言をする文化系タイプのポジションに落ち着きたいんだけど……まあ、3人だと難しいよね。



「あー……ほら、この世界、結構前から日本人が来てたってお爺さんが言ってたでしょ?『イトー』とか『スズキ』って家名の人がたまにいる、って。名前だけじゃ僕たちと同類なのか判別できないから、登録名に何か現代人だけがわかるような要素を入れておけば、お仲間と出くわした時に便利かな、って考えてたんだけど」



「ふーん。頭良いやつって色々考えてんのな。で、結局どんなのにしたんだよ。ほら、おにーさんに見せてみなさい」



 言うが早いが僕の手から登録用紙をひったくるユーイチ。これだから陽キャは……



「なんだ、結局ふつーに『タケル・サトー』にしたのな。つまんねーの。で、こっちの隅にちょろっと書いてるのが考えてた方か?『サトー・ココノカドー』ってなんだそりゃ」



 本気でわからないようで首を捻っている。というかリアルで首を捻る人始めてみた。



「ほら、伊藤さん家のヨーカドーの親戚の。埼玉のやつ。…………え、知らない?ホントに?」



 説明したけど理解した様子がない。というか段々ジト目になってきてるんですがなんでしょうか。



「でたわね」



「でたな」



 いつの間にか登録を終えたらしいコバが突然ぬっと顔を出してきた。2人してジト目されるとひじょーに怖いんですが。



「伊藤さん家の店なんてものは俺の地方にはない」



「俺のところにはありませーん!なんだろう。関東の常識が日本の常識みたいなマウントやめてもらっていいすか?」



 め、面倒臭いな君ら……!



「お前こっち来てもドリームタウンで買い物するなよ?」



「お前みてーなやつがコンビニの店内放送みたいに『自然豊かな八王子で……』とか言い出すんだよね。自然豊かな都会育ち様に本当の自然を教えてやろうかあぁん?」



ぷちっ。



「本当に面倒くさいな君ら!!」



。。。。。


。。。。


。。。


。。





「ねえ……何回見てもねえ。やくそう採取の依頼がねえってのはどういうこった?」



 ドタバタしつつ登録を終えたあと、取り敢えず見てみるか、という感じで見に行った依頼掲示板の前でユーイチが唸っている。コバの視線はまだ上の方。どうやらコバは左上からきっちり読んでいくタイプらしい。ユーイチは予想通りというかなんというか、大雑把に読み飛ばすタイプだった。



「いやまあ、冷静に考えたら誰に使うかわからない薬の原料なんて危険なもの、薬剤師……こっちだと多分薬師さん?が自分で採取してきっちり管理するよね多分。素人が乱獲したり、薬効台無しにするような取り方したら目も当てられないし」



 ですよね?という想いを込めて受付のお姉さん(普段から意識しておかないとついおばさんって口に出してしまいそうで怖い)を振り返ると、笑顔で頷いてくれていた。どうやら正解だったらしい。



「なん……だと……!?」



 両手両膝を床に付いてがっくり項垂れるユーイチ。いや、そこまで?



「なんでそんなに薬草採取したかったのさ?ユーイチならてっきり『みみっちい依頼なんてやってられるか!モンスター倒しに行くぞ!』とか初っ端から言いそうだなとか思ってたんだけど」



「ばっかお前、冒険者の初めての依頼は『やくそう採取』がお約束に決まってるだろ!『薬草』じゃなくて『やくそう』な!」



「あー……ハイ、ソデスネー」



 目逸らし。コバさん、へるぷみー。あ、ちょうど見終わったのか目を合わせて頷いてくれた。そのまま未だに項垂れ続けているユーイチの肩にポン、と手を置いた。



「そうだぞ、ユーイチ。まずは街の外に出ようとして、門番に『そんな装備で外に出るつもりか!?』って呼び止められてからがチュートリアルスタートだ」



 ちがう、そうじゃない。



「ああもう!!どうせ依頼なんて受けられるまとまった時間なんてないんだし、ほら今日は帰るよ!」



 ユーイチの襟を掴んでズルズルと引きずっていくと、少しの間駄々を捏ねて抵抗していたけど、途中でいきなり立ち上がった。……なんだかモーレツに嫌な予感がしてきたんだけど。あ、まずい。コバの目も輝いてる。


「なあ、コバ。新人の登録帰りと言えば『アレ』だよな」



「おう、『アレ』だ」



 何?今度は何?



「「ギルドも黙認してる、帰り際に『おう、先輩に挨拶もなしか?』って絡んでくる中堅冒険者っ……!」」


「「あるかっ!!!!」」


「「ないのっ!!??」」



 あ、受付のおばさんとハモった。



「いや、そんな新人イビリみたいなの黙認なんてしてたら、そのうち新人なんて誰も来なくなっちゃうでしょうが。それに冒険者を管理するギルドが目の前のトラブルを放置して何もしないなんてギルドの信用も下がっちゃうよ」


 僕の言葉にギルドの真ん中で2人して体育座りで落ち込むユーイチとコバ。それを見てクスクス笑う職員や他の冒険者。ああもう……敢えて言おう。



「本当に面倒くさいな君ら!!」




次は、街に出ます。


次回『男子高校生冒険者の散策』

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