騎士の1番(後)
違う? 1番じゃない? それって、どういうこと?
キョトンとするアメリア。それを見て、アメリアの兄が苦笑を漏らした。
「ウィルの1番は、アメリアなのさ。」
ウィルの1番が私? よくわからないわ。。。
まだキョトンとしたままのアメリアに、彼が説明を続ける。
「ウィルが軍で出世したら、妻であるお前には荷が大きいってことだよ。ある程度の地位以上なら、社交界にも出ないといけない。貴族夫人としての振る舞いが、お前にも求められる。」
そこで兄はウィルを振り向き、ニヤニヤと笑った。
「さっきウィルは、アメリアの負担になる事は避けたいって言っていたぞ。お前の幸せが1番ってさ。」
兄の言葉に、アメリアの頬は喜びと気恥ずかしさで赤くなる。
私のことを大切にしてくれているのね。それはすごく嬉しい。嬉しいけど。。。
「ダメよ、ウィル! 私、貴族として生活するのは苦手、というか嫌いよ。でもね、私が原因で、ウィルのやりたい事ができないのは、もっと嫌! 私よりも、自分のことを優先してちょうだい!」
アメリアにまっすぐ見つめられて、ウィルの頬もほんのりと赤くなる。
そして、いたずらが見つかった幼子のように、視線をそっとそらす。
「ええっと、それは、、兄君への言い訳といいますか、、、」
うん? 言い訳?
ウィルの声は、だんだんと小さく、最後は独り言のようになった。
「軍で働けば、宿直や遠征があります。出世すればするほど、あなたと離れる時間が増えてしまう。それが嫌なのですよ。城主なら、あなたと共にいられますから。」
言い終えたウィルの顔は真っ赤だ。
こんなに照れている顔を見るのは初めでだわ。でも、きっと私の顔も真っ赤ね。頬が熱いわ。
そんな2人の様子を、兄はニヤニヤと見ている。
「やっぱり、ウィルの1番はアメリアってことじゃないか。まるで護衛騎士のように、アメリアのそばに、ずっといたいってことだろ?」