ブランドン領へ
今朝、アメリアとウィルはブランドン領についた。
王都から鉄道で1日揺られ、やっとブランドン領都に到着し、次の列車に乗り換える。
「ルバートへは3時間ぐらいね。そこに迎えが来てるはずよ。」
アメリアの説明にウィルが頷く。
ブランドン領の北西部は、かつてはブランドン領とは別の領地で、ルバート領と呼ばれていた。今ではブランドン領の一部だが、その時の名残りで、今でもこの地域は領民からは「ルバート」と呼ばれている。ルバート領で1番大きな町の名も「ルバート」。
「叔父様にお会いするの、久しぶりだわ。」
アメリアの呟きがウィルの耳に届いた。「久しぶりなんですか?」
「そうね、2年ぶりかな。いつも私たちが夏に領都に戻った時、叔父様と叔母様が挨拶に来てくれるのよ。だけど去年は、叔父様が風邪をひかれてね、お会いしていないのよ。」
アメリアは小首を傾げ、去年を思い出している。
「お父様とお兄様は城まで行ったけど、私たちはお留守番ね。」
「お二人は馬で?」
ウィルの質問に、アメリアは首を縦に振って肯定した。
ルバート街から城まで、馬で駆ければ半日程度で着く。しかし、馬車では数日かかる。領主の家族、しかも妻や娘などの女性を伴えば野宿というわけもいかず、泊まる宿側にもそれなりの準備が必要だ。
2人でそんな話をしているうちに、列車はルバート駅に着いた。
駅舎を出た2人に、壮年の大柄な男性が手を振りながら近づく。
出迎えたのは、養父となる『砦の城』の城主、アレックス・ルバート男爵だった。




