表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/35

勇者パーティーをクビになったのですが

「やっぱり勇者パーティーの回復担当と言えば【聖女】だよな。」


「そうそう♪やっぱ男の神官より、【聖女様】だよな~♡」


「という訳だ!セイマ、お前はクビな!!

明日から来なくていいぜ♪」



????



何が『という訳』なのでしょうか?

因みに上から魔法使い、斥候兼弓師、魔法剣士のセリフです。



「えっ!?()()ですか??」



護衛達は訳のわからない事を言って、サッサと冒険者ギルドの休憩所から、出て行ってしまいました。



あの人達、何を言っているのでしょう?

貴方達を雇っているのは、私の方なのですが……



護衛対象を()()()()()、出て行く護衛とか聞いた事がないんですけど。



あ、そう言えば自己紹介がまだでしたね。

私はセイマ、()()は【聖人】です。



各地を旅し、怪我や病気で苦しんでいる方達を聖魔法や薬師・医療の技術を駆使して、救う事を生業としております。



先程、私をクビにした彼等は【稀人のA級パーティー】だと聞いたので、護衛を依頼したのですが、何か勘違いをしている様子です。



確か『勇者パーティーには【聖女】だ。』とか何とか言ってましたね。



勘違い①


異世界転移して来た稀人の方々の世界の常識は知りませんが、こちらの世界の【聖女】と呼ばれる女性達は基本的に、担当する地域から出ません。

彼女達の仕事は神殿や治療院等で、怪我や病気の方達の治療をする事。



そして、神に祈りを捧げる事です。



勘違い②


冒険者の回復担当は、ほぼ男性です。

偶に女性もいらっしゃいますが、そういう方はだいたい水魔法の回復魔法を使える方か、稀人で聖魔法スキル持ちの方で体力のある方ですね。



稀人でも体力のない方は、神殿で保護してもらい、能力に合わせて各地の神殿か治療院に派遣されて行きます。



何故、【聖女】が旅に同行しないのか?



それは彼女達に、旅に出られる様な体力がないからです。



【聖女】のほとんどが貴族や大商人のご令嬢達なので、そんな体力がある訳ありません。



稀人でも、体力補正の無い方では旅に同行するのは不可能でしょうね。

基本的に、冒険者の旅は徒歩ですから。



たまに、馬車に便乗させてもらったりとかもありますが。



勘違い③


聖魔法スキル持ちで特にレベルが高い者の事を女性は【聖女】男性は【聖人】と呼びます。



【聖人】は私の様に、()()()()()()各地を旅しながら、神殿や治療院まで来れない人達を癒して廻る者と、冒険者パーティーと旅をしながら、彼等を支援する者に分かれます。



勘違い④


特に稀人の方達の勘違いに多いのが、【勇者】に関する事です。

こちらには【勇者】という職業はありません。



実際に【勇者】と呼ばれているのは、冒険者パーティー等(偶にソロの方もいらっしゃいます。)で目覚ましい活躍をされている方々や、【聖人】の中でも高レベルで神殿から認められている人の事を言います。



有名な方ですと皆さんよくご存知の【勇者シルバー】とか。

まぁ、彼の場合通称ですけど。 



外国ではズーラシアン王国の、タイガ王子とかですね。

あの方は単独でドラゴンを倒し、ズーラシアン王国を救った正に【勇者】です!!



しかしなんと言っても、一番有名なのはユイナーダ王国初代国王、トール王でしょう。



『稀人が一代で国を造る』とか、憧れます。

彼の活躍を描いた作品は、子供から大人までたくさんの方々が読んでいます。



ただしトール王の事を作品にする場合、神殿を通して審査が行われ、許可が無いと発表する事は出来ません。



過去にはトール王を、BLという特殊なジャンルの作品に登場させて、投獄された稀人の作家がいたとかいないとか……



【聖人】で【勇者】の称号持ちはだいたい国に、5人くらいはいます。



ユイナーダ王国で、一番有名なのは私の尊敬する《クラウス》様。

この方は治水工事を得意とし、各地で活躍されています。



例外は別大陸にある、あの国くらいでしょう。

異世界から人を拐って来ては、



『あゝ【勇者】様!どうか【魔王】から我らをお助け下さい!!』



と言って、こちらの大陸に送り込んで来るんです。

もちろん【魔王】なんて存在しないんですけど。



大陸間もかなりあるので、侵略とかも面倒なだけですし。



まぁ、とにかく私の護衛依頼を途中で放棄して、出て行く様な方達に【勇者】の称号が付くはずありません。



それにしても困りましたね。

これでは目的地まで辿り着けません。

少しでも早く、皆さんの治療をしたいと思って彼等を雇ったのに、とんだ見込み違いでした。



今回の目的地は初めて向かう場所なので、道案内も兼ねていたのにまさか()()()()()()()()だと勘違いして私を置いて行くなんて……



私が途方に暮れていると冒険者ギルドに、なんと知り合いが入って来たのです。

ここで会ったが百年目(※1)、チャンスですよ!



「ハーシー!ハーシーじゃないか!?」


「えぇっ!?セイマ様?何故こんな所にお一人で?

護衛の方はどうされたんですか?」



冒険者ギルドに入って来たのは我が心友、学園で教師をしているはずのハーシー・F・サイドでした。



「実はね…先程まで一緒だったんですけど、パーティーをクビになったんです。」


「…………はい?」



ハーシーが、意味がわからないという顔をしています。

大丈夫、私も意味がわかりませんから。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


※1


誤用はわざとです。


ことわざ・慣用句など過去の稀人達が間違えて伝え、そのまま広まっています。


地域によってはまともに伝わっている場所もある為、知らないとたいへんな事に……


特に【力不足】【役不足】、この二言は要注意です。

転移して来た稀人の多くが、若い世代だった為か、間違えて覚えていたのが原因かと思われます。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ