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短編詰め合わせ

電線

作者: まかろに

ショートショートです




窓の側にござを敷いて横になる。


窓からは丁度、電線が三本見える。

私の定位置だ。




屋根の熱を風が掬って運んでくる。

扇風機で熱風を迎え撃つがそれもまた、熱風である。

まあいい。

風が体に当たれば良いのだ。



乾燥するのでクーラーは嫌いだ。

凍らせたペットボトルをタオルで巻き、首に当てている。

暑さと涼しさを同時に味わう。なんともお得だ。






電線に燕が三羽。



メトロノームの様に揺れ、バランスを取っている。

ちょこちょことした動きがなんとも愛らしい。



ぼうっと見ていると、みんな左へ飛んで行ってしまった。

虫でも見つけたのだろうか。





電線の奥には入道雲だ。



雨が降るのだろうか。

洗濯物は昼前に取り込んだ。大丈夫。



最近は夕立ではなく、ゲリラ豪雨というなんとも物騒な雨が降る。

雨も大量に仕入れ、薄利多売が主流になってきたのだろうか。

供給がかなり多すぎると思うのだが。

生産調整待ったなしである。



上手いこと言ったなと思った。

が、他人に話すと、は?ってなるので止しておこう。






そんな事を考えていると、いつの間にか電線に黒い鳥が止まっていた。

今度は一羽。



烏にしては小さいが雀より大きい。

真ん丸で真っ黒で、アニメに出てくる煤玉みたいだ。



初めて見る鳥だ。

よく見ようと体を起こすと、いなくなっていた。

飛んで行ってしまったようだ。






起きたついでに、台所へ向かった。



ガラスのコップに、冷えた緑茶を注いで、氷を入れた。

毎回順番を間違え、注いだお茶が溢れそうになる。

いい加減学習しろよとつっこみ、コップの縁をすする。



お盆にコップとお茶ポットを乗せ、ござの側に置く。

定位置に座り、一口飲むと冷たいお茶が胃の熱を奪っていく。

氷が少し溶け、カランと音をたてた。





電線を見ると、さっきの黒い鳥がいた。

燕の様に揺れる事はなく、じっと止まっている。





いや、


あれは本当に鳥だろうか。



そこだけぽっかりと穴が開いていて、輪郭がゆらゆらと波打ってるようにも見える。


額の汗が垂れ、目に入りそうになる。



タオルで汗を拭うと、黒い何かがもう一匹増えていた。


はっとして目を擦るが、やはり二匹。

飛んで来たようには見えない。


落ち着こうとコップの緑茶を飲み干し、また注ぐ。二杯目も飲む。





それは五つになっていた。



汗が吹き出る。

タオルで顔から胸まで拭う。

生暖かい風が体を包む。


ポットの緑茶を飲み干す。

氷は全て溶けきってしまった。




増えていた。あれが増えてる。

二十、いや三十だろうか。

電線を埋め尽くしそうだ。



やつを見てるとくらくらする。頭が痛い。汗が止まらない。体が震える。吐きそうだ。



瞬く間、

黒い何かは窓を覆い尽くし、

私は気を失った。












大きな音で目を覚ました。大雨だ。


水が窓のサッシに溜まり、部屋に入ってきている。



雷の光と音が頭を揺らす。

全身汗だくだ。

私は震える手で冷凍庫から保冷剤を取り出し、額に当てた。


クーラーつけて、ちゃんと塩分とろうね。


※文字も遊びに来たり、海に行ってパリピな夏を過ごしてるかもしれません。誤字脱字はご了承ください。

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