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36話 打開策を考えよう!



 マスターの店で打開策を練っていると退屈になってきたので、着信音をオフにしているメッセージ一覧を整理してみる。この数日間で多くのメッセージを受信しており、こうしてスクロールしていても、新たな内容が次々と追加されていった。


 めんどうだなぁ。一斉返信しちゃってもいいよね。


「きゅぴーん☆」


 送信、と。


 これでわたしのファンを名乗る人たちも満足してくれるだろう。役目を果たし終えたことに笑みを浮かべ、カウンターを挟んで悩み続けている3人に顔を向けると、みんなは一様に何かから語り掛けられたように空を仰いだ。


「ん? メッセージね」

「わたしもです」

「僕も。ちょっと失礼します」


 わたしと同じ状況にあるルピナスとフィリオは、一般からのメッセージを拒否設定にして、フレンドからのモノしか受信しないようにしているらしい。申し訳ないけど、わたしもそうさせてもらおうかな……?


「……なによ、これ」

「……かわいい(ほぞん)」

「……うげっ、なんてモノ送ってんですか、ナツハさん」


「ほあ?」


 どうして名指しで。しかも「うげっ」って言われたような気がする。


「なにかあったの?」


「もう『なにかあったの?』じゃないわよ。いきなりナツハのウインク写真が送られてきたからビックリしたでしょ」


「あれ、ルピナスのところに送っちゃった?」


 おかしいな。


「わたしにも送られてますよ。間違ってフレンドに一斉送信したのでは? ……(凝視)」


「僕も同じく。誰に送るつもりだったのかは知りませんが、こんなモノなら細心の注意を払ってくれないと困ります。受け取った側が迷惑窮まりないですよ」


 一斉送信? むむむ?


「アンタまさか、未返信のヤツに『一斉返信』なんて、してないわよね……」


「したよ。あ、だから3人にも届いちゃったんだね、ごめん」


 面倒臭がらずに、ちゃんと選択しなくちゃだった。今度からは気をつけよう。……てへ。


「知らない人に、なんてモノ送ってんのよアンタはああぁぁぁ!!!」


「ごめんなさぁい!!」




 ぐずん、おこられた……。気を取り直して打開策を考えないと、真剣にね。


「そうだ。マスターをさいつよにして、わたし達よりも目立ってもらうのはどうかな?」


 ルピナスやフィリオみたいなヒーローを超える新たなスーパースターとして、マスターを究極的に鍛え上げるのだ。最前線を風のように駆け、あらゆる敵を一撃で倒し、全てのプレイヤーの頂点に君臨してもらう。


 わたし達はその陰に隠れる形で、みんなの視線からも自然に離れていく。完璧だよー。


「ルピナスさんよりも速く、フィリオさんよりも攻撃力を上げるんですか……」


「そしてブラームを倒すんだよ。圧倒的にね」


 『あの』ブラームをドッタンバッタンと倒したならば、全世界が注目しないはずがないだろう。


「まあ、一理ありますが。まずは実現方法をお聞きしても……?」


「三日三晩、不眠不休のレベリング」

「ブラームを付け回して弱点を網羅する」

「千の固定ダメージを出せるグローブを着ける」


「却下!!」


「「「チッ、」」」


 わたしの罠を取り付けたグローブを造りたかったけど、マスターは意地でも受け入れようとはしなかった。ヒットする度に『ドカーン』『ドゴーン』するグローブ……、わたしが着けてみようかな。



 ……よく考えたら自爆しちゃうね。



「そこまでの行動力があるなら、人目を浴びても平気な忍耐力を鍛えてくださいよ……」


「それができれば苦労なんて――」


「人目を浴びる……、いいんじゃないかなー」


 何気ないマスターの言葉によって、わたしは思いも寄らないことに気づかされた。どうして人目を避けることばかり考えていたのだろうか、なにもわざわざ避ける必要は無かったんだ。



 これはゲームなんだから、楽しまなくちゃね。



「いまを存分に楽しむ、それがゲームなんだよー」


「『いまを楽しむ』か……」


「確かに、わたし達が閉じ籠もってるなんてバカバカしいですよね」


 わたしはゲームを始めて、たくさんの楽しいことに出会った。きっとこれからも、もっと楽しいことに出会うのだろう。


「どんなことでも、楽しめた人が勝つんだよ」


「楽しむって、具体的には何をするつもりなんですか?」


 むむむ……、考えてなかった。わたし達はもちろん、他のみんなも楽しめないとだよね……。

 具体例を問われたわたしは頭を捻る。大勢の人たちが喜べるといえば遊園地やコンサートだけど、このゲーム内で実現できなければ意味がないし、4人という人員を考慮すると、大掛かりなことは難しいのではないか。


「ウインク写真を、送ってみる……?」


「「「却下」」」


「じゃあ、グッズ販売とかは、どうかな……?」


「グッズ販売……?」



 おっと、マスターが食いついたよ。



 大きなイベントは無理でもグッズのような小さいモノならば用意も簡単だし、幸いにこのゲームにはユニークというシステムが存在するのだから、1枚の絵からたくさんのアイテムを造り出すことも可能だ。


 これならば現実的で、なにより販売となれば……


「ちなみに、皆さんのファンはどれくらい……」


「1人につき千人だとしても、ザッと3千は軽いわね」


「およそ3千を超えるプレイヤーに対して1つにつき500ゴールドのグッズさらにアクセサリーやおしゃれアイテムで種類も増やして写真も悪くないさらにさらにセット売りなんてのもしたら……うへへ……うへへへへ……」


 マスターが黒い笑みを浮かべる。


「ナツハさん、割合は……、どのくらいで」


「1……、いや、2でどうですかい」


「いいや、4だ」


「3! 受けないのならこの話はなかったこと――」


「乗った!!」


 よし、マスターを巻き込むことに成功した。2人の冷たい視線を背中に感じるけど、商売とはこういうものである。


 何を作ろうかなー、場所や日にちも決めないとねー。


「いいねー、盛り上がってきたよ。この自主企画イベント、絶対に成功させるぞー」


「おーー!!」


「「お、おーー」」







 さてと、イベントとなれば『マスコットキャラ』も用意しないとね。










 3割もあげるんだから、それなりの働きをしてもらうよ。




 ぐへへへへ……



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