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31話 集いし猛者たち



 バトルロワイヤルの開始から1時間。ちょうど折り返しのタイミングになったとき、塔の内部にアナウンスが流れてきた。


「おほ、わたしが1位だって。もう30分は動いてないのにねー」


 全200の罠を3階層に設置して回ったので、今はとある部屋(?)にて休憩中。ゲームとはいえ走り続けると体も頭も疲れてしまうので、あとはイベント終了まで立て籠もるのだ。


 とても大きな部屋の隅にて膝を丸めていると、視界の右側に新たなアイコンが現れたことに気づく。さっそくタップしてみよう。


「地図だねぇ。階層毎に分かれてるし、この塔の地図かな?」


 もっと早くに出してほしかった。それならぐるぐる迷子になることもなかったのに。


「この赤い点はなんだろう。3つもあるけど、1つだけ動いてない」


 塔は7層構造になっていて、2層、4層、7層には赤い点が点滅している。4層の点が動いていないけど、2と7は忙しなく移動を続けているようなので、もしかするとプレイヤーを示しているのかもしれない。


「そういえば、上位3人の場所がどうとか言ってたかも。……上位、3人か。まあ、大丈夫だよねー」


 となると動かない点は、1位であるわたしのモノなのか。このままでは狙われてしまうのだろうけど、ぜひとも3位、2位を倒してからにしてもらいたい。


 わたしと戦いたければ四天王を倒してからにするのだ、フヌハハハハ。……ダメ?


「見つけたぞ、1位のプレイヤーだ!」


「うぎゃ、見つかった!?」


 言ったそばから複数のプレイヤーが駆けつけてきた。扉も無い部屋の入口に横並びで剣・槍・斧と様々な武器を構えている10人のプレイヤー達は、凶悪な形相で1人の乙女を睨みつける。


「女の子か……?」

「油断はするな。中身は知れたもんじゃねえ」

「だが、武器が見当たらないぞ。まさか……、暗器使いか」


 大の男が揃って「暗殺者」「アサシン」「座敷童」と、わたしを無礼な言葉で呼んでくる。小槌でも投げつけちゃろか、持ってきてないけど。


 わたしに対する評価が的外れであるためか、相手は必要以上に警戒心を剥き出しにして、些細な動きも見逃すまいと躙り寄ってくる。


「油断はするな、少しずつ囲い込め。少しずつ……、少しずつ……、すこ――「「ぎぃやああぁぁぁ!!!」」」


「あ、ごめん。そこには『カマイタチ』を仕掛けてたんだ。……、もう聞こえてないかな」


 相手の1人が部屋の半ばに踏み入れた瞬間、足下に設置された罠が作動して、集団は風の刃の餌食となってしまった。ポリゴンの煌めきが舞い落ちるなか、わたしに新たなポイントが加算される。


「おお、けっこう持ってたみたいだね」


 後半戦になったので、どのプレイヤーもそれなりにポイントを獲得しているのか、1人でも相当な稼ぎになってくれるようだ。


 この部屋にもまだまだ罠が残っているはずだし、魔法も届かないだろうから、このままじっとしてても大丈夫かな。……ZZZ。


「見つけたぞ! ぐああぁぁぁ!!!」

「トラップだ! 警戒を怠るぐはあぁぁ……!」

「なんとか接近できないのがはぁ!?」


 ZZZ……。わたしが寝息を立てている間にも大勢のプレイヤーが訪ねてきたみたいだけど、知らないうちに帰っていく。ポイントが増える増える。ZZZ……。




「ついに本性を表したみてぇだな……!」


 残り30分を告げるアラームに起こされたとき、新たな刺客が部屋に乗り込んできいるのに気づいた。この隅にいればどんなことが起こっても安全だけど、いちおうの確認として、寝起きの眠気を堪えながら次の相手に視線を向けてみる。


「わぁ、モヒカン君だよ! 久しぶりだね!」


 わたしの前に現れたのは、ショッキングピンクが目印のモヒカン君だ。麻痺キノコを見る度にあの光景が蘇ってくるけど、思い返せばβ初日以来の再会になるのかな。


「おう、久し振り! ……って、オレはもう騙されねえからな! どんな卑劣な手段を使って1位になったのかは知らねぇが、今日という今日はお前の化けの皮を剥がしてやるぜ!」


「……なにかあったの?」


 何かに取り憑かれたように怒りを露わにするモヒカン君。あんなに面白かった漢がこんな風になってしまうだなんて、よほど酷い目にあったのだろう。かわいそうに。


「だあ! もういい! オレはてめぇの真っ黒な腹の内を曝してやらなきゃ気が済まないんだよ!」


「あ、そこにも罠があるから気をつけてね」


「だから、騙されねえって言って――カチーン――」


「もう、ちゃんと注意したのに……」


 また新たな氷像が砕け散った。




「随分と派手に仕掛けたようですね……」


「フィリオ! よかった、元気みたいだね」


 氷の破片が舞うなか新たに姿を現した訪問者はフィリオ。部屋を見渡すその大きな瞳は、的確に罠の位置を確かめているようだ。


「ちょっとナツハ! この階層、罠だらけじゃない!」


「わあ、ルピナスも!」


「罠を踏む度にヒヤヒヤしたわよ! アタシだから逃げきれたけど……」


 どうやらルピナスは罠を踏んだ瞬間に飛び退くことができるらしいけど、ここへ辿り着くまでなんども冷や汗をかいたのだそう。申し訳ない。


「もしかして、2人にはわたしの罠が効かない……!? どうしよう、勝てる気がしないや……」


 そんなわたしの絶望を掻き立てるように、2人はゆっくりと近づいてくる。万事休す。このままでは、報酬のレアアイテムが……。


「おいおい、ようやくボス部屋を見つけたと思ったら、ボスが3体もいやがるじゃねぇか」


 わたし達の頭に直接響くような低い声を放ってきたのは、真っ黒な鎧を身に纏う大男。その顔や声には覚えがないけど、彼が担ぐ銀色の大剣は忘れもしない。


「ブラームさん! ……で、あってる?」


「ぐぉっ、正解だが、いきなりの精神ダメージ。さすが1位なだけあって侮れねえぜ」


 ブラーム。そう、ブラームといえば、攻略組の要とも呼ばれるまさにトッププレイヤーだ。聞いたところではβ初日から誰よりも強くなり、常にレベリング1位を維持しているらしい。


 そんなキュリオス界の猛者まで現れてしまったら、この部屋でのわたしがあまりにも場違いではないか。


「……フィリオ、一時休戦よ」


「そうですね。彼はさすがに危険ですから」


「ハッ、攻略では肩を並べる2人が敵になるか……」


 ぅゎぁ、殺気がっょぃ。




 ついにバトルロワイヤルも決戦のとき。上位4名が集っての真剣勝負が幕を開ける。果たして、勝者の座に輝くのは誰なのか!!




 逃げたいです……。



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― 新着の感想 ―
[一言] 三人が戦ってるとこに接触地雷でもぶちこめばいいじゃないか(粉蜜柑)
[一言] 罠以外持ってきてないの?
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