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24話 運営の告知



 ハイキングを楽しみつつも無事に2頭のヒツジを見つけ出したわたしとキュリちゃんは、隣接する牧場に向かうため森の出口へと急いでいた。


 思わぬ収穫をしてほくほくしているのもいいけど、みんなを待たせてしまっては申し訳ない。


「……あれ? 皆さんが集まっているようですね。こんな所で何をしているのでしょうか」


 ヒツジが通れるように広めの道を選択していると、崖沿いで集まるみんなと合流した。そこにいるのはルピナス、フィリオ、ジョージの3人なので、全員が揃うことになる。


「ああ、ナツハ。ちゃんとヒツジを連れて来れたのね。遅かったからまた採取でもしてるのかと思ったわよ」


「えへへ……。みんなは崖の下を覗いてどうしたの? なにかレア素材でも見つけた?」


「それが……」


 言葉を詰まらせるルピナスは、暗い表情をしながら崖を指差した。そこでは崖の一部が崩落したように地面が抉られていて、わたしに嫌な不安を掻き立ててくる。


 まさか……、嘘であってほしい……。


 そんな儚い思いは簡単に打ち崩されてしまった。


「モリワカさん……!? どうして崖の下に……!?」


 四肢を突いて覗き込むわたしの視線の先には、崖から数メートル下った絶壁にしがみつくモリワカの姿が。眩むような高さで岩肌を掴む彼の手は震えていて、今にも力尽きてしまいそう。


「アイツが崩落トラップに引っ掛かったのよ。このとおりヒツジだけは無事だったけど、どう助け出せばいいのやら」


「フィリオお姉ちゃんの魔法で、なんとか打ち上げられないのですか?」


「わたしの魔法では彼の紙装甲が蒸発してしまいます。自力で登ってもらうにも、あまりにSTRが脆弱なようで……」


 万事休す。モリワカを助け出す方法は本当に無いのだろうか。


「皆様方……」


「モリワカさん……?」


 成す術無く見守ることしかできないでいるわたし達へ向けて、モリワカが最後の力を振り絞って語り掛けてくる。


「私のことは見捨ててくれたまえ。これでは足手纏いで、自分が情けない……」


「そんなこと言わないで! 絶対に助けてあげるから!」


「ナツハ殿。僅かながら君と語り合えたことで、私の何かが変わった気がするよ。あとは、せめてヒツジを……、頼む! 私の、生きた……、あかし!」


「モリワカさああぁぁぁーーん!!!」


 …………



 モリワカは散った。わたし達に全てを託して、尊い犠牲となったのである。


 わたし達は彼の意志を無駄にしてはならない。彼の生きた証を、彼に代わって成し遂げるのだ。



 …………


「さ、茶番は終わりにして先を急ぎましょ」


「そだねー」




 モンスタートレインのあとだったからか、戦闘も無く無事に牧場へ辿り着いた。視界の開けた牧草地を夕陽が照らし、6頭のヒツジ達が鈴を鳴らして元気に仲間の下へと帰ってゆく。


「これでバグの修繕は完了です、皆さんお疲れ様でした。そして、手を貸していただきありがとうございました」


「べつにいいよー。なんか楽しかったから、ねー」


「ねー、ナツハさん」


 思えばいろいろとあった1日だけど、楽しく終わればそれでいいのだ。ルピナス、フィリオ、ジョージ、そしてキュリちゃん、みんなと遊んだ思い出は一片の曇りも無く輝き続けることだろう。


「ところで皆さん、このような運営の不手際に巻き込んでしまっただけでは申し訳ないので、1つ特別な情報を全プレイヤーに先んじてお知らせしておこうと思うのですが、よろしいですか?」


 夕焼けの中に一番星が瞬いたとき、運営のジョージがお礼にと情報公開を持ち掛けてきた。『特別な情報』を『先んじて』と言われれば、欲を出さないプレイヤーはいない。


「「「ぜひ教えてください!」」」


「ははは、それでは遠慮なく。実は近頃の運営では『とある計画』が進められていまして、ついに実装の時期が近づいているのですよ」


「それにはわたし、キュリちゃんも関わらせてもらっていますので、きっとプレイヤーの皆さんには喜んでいただけるかと!」



 果たして、その計画とは……



「VRMMOキュリオスにおいて、ついに初の対人イベントが開催されるのです!」



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「VRMMOキュリオスにおいて、ついに初の対人イベントが実装されるのです!」 この文章ちょっとおかしいですね。イベントは「開催される」か「行われる」と述べるべきでしょう。 小さいこと…
[一言] モリワカ、憐れ
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