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13話 ハピネスストーン



 新たに採掘したハピネスストーンを手にしていると、背後からものすごい形相のルピナスとフィリオが駆けてきた。いくら美少女とはいえ、あまりの迫力に思わず後退りしてしまう。


「いま、『ハピネスストーン』って聞こえたんだけど!?」


「う、うん。ほらこれだよ」


「ほんとにハピネスストーンのようね。出発前に鑑定させてもらっててよかったわ」


「ですが、こんな簡単に採掘できるなんて。……まあ、ナツハちゃんのことですので基準にしてよいか悩みますけど」


 わたしの手と一緒に桃色の鉱石を握り締める2人は、まじまじと観察を続けながら頷きあっている。桃色でカワイイから見惚れて当然だよねー。


「どこで、どのように採掘したのですか? 見た目には違いがありましたか?」


「ほえ……?」


「手応えはどんな感じでしたか? 周囲の環境に違いは?」


「えっと……」


 どうしよう。すごい勢いで聞いてくるから、なにから答えていいのかわかんない。


「フィリオは研究となると熱くなるのよ……。こうなったら止まらないから、しばらく満足するまで付き合ってあげて」


「ええー……」


「ぜひ! 教えてください!」


「ええぇぇー」


 仕方ないなぁ。わたしの説明だから、あんまり期待しないでね。




「……もういい?」


「はい。貴重なお話をありがとうございました」


「それじゃあ採掘の続きに向かいましょ。アタシ達の目的はハピネスストーンを手に入れることなんだから」


「あっ、すみませんでした……」


 研究熱が冷めたのか、正気に戻ったフィリオが顔を赤らめて恥ずかしそうに顔を伏せてしまった。1度スイッチが入ると周りが見えなくなるタイプなんだね。わたしも人のことは言えないけど。


「さっそく次のハピネスストーンを掘り出そうか」


「次のって、そんなに早く見つけられないでしょ?」


「んーん。あそこに見えてるよ」


「どこですかあ!? ハピネスストーーン!!」


 さっきまで顔を赤らめてたのに、もう研究熱が再燃してしまったようだ。水色のポニーテールをブンブン振り回してハピネスストーンを探している。


「ほら、これだよ。なんとなく他のポイントより『パッ』としてるでしょー」



「「…………。全くわからない」」



 え、そうなの……?


「よく見比べてみて。なんか目が合う気がしない?」


「じーー。じーー。……ないわね」


「色、形、輝き具合、固さ、熱、どれを取っても他のポイントと変わり映えしません……」


「そうかなぁ……? なんとなく違う気がするんだけどなぁ……」


「そもそも鉱石がポイントに埋まっているときは色の着いた石で覆われていて、採掘していかないと鉱石の種類がわからない仕様になってるのよ」


「埋められている時点でどんな鉱石なのかわかってしまうと、誰もレア以外の鉱石を採掘しなくなってしまいますから」


 2人がなにやら説明してくれているが、どうにも内容がわからないよう。……だって、わたしには違うように見えてるんだもん。ほんとだもん。


 採掘ポイントとして埋まっている状態では見分けが付かないと2人は言うけど、わたしがやんわりとした違いを感じているのは事実なのだ。この感覚が伝わらない限りは理解してもらえないのだろうが、上手く言葉にできなくてもどかしい。


 そうしてわたしが主張を受け入れてもらえずに拗ねていると、ルピナスが背を屈めてほっぺをつついてくる。


「ほーら、子どもみたいに拗ねないの。アタシ達だって別にナツハを疑ってるわけじゃないんだからね」


「そうなの……?」


「むしろすごいと思ってるわ。アタシ達には無い才能があって、羨ましいくらい」


「えへへ、そんなことないよ。2人には攻略組に入れる才能があるし、わたしにはできないもん」


 ルピナスとフィリオには攻略組で戦い続けられる才能があるように、わたしにはレアアイテムを見つけられる才能があるんだろうな。人と違うところがあっても、きっとみんなそんなものだよね。


「よし、アタシもハピネスストーンを見つけるわよ!」


「ナツハちゃんに負けないくらい採掘してみせます!」


「……いや、それはムリじゃないかなー?」


「「…………」」


 ありゃりゃ、2人とも拳を挙げたまま固まったよ。最近はそんなポーズが流行ってるのかな?





「というか、ナツハならもっとハピネスストーンを採れてたんじゃないの? どうして1つしか持ってなかったのよ」


「ナツハちゃんなのに……」


 わたしなのにと言われてもわからないけど、確かにまだハピネスストーンは1つしか手に入れていない。別に見つけられなかったわけではないのだが、これにはある深い事情が関係しているのだ。


「わたしも採れるだけ採掘したかったんだけど、困った理由があってね……」


「困った理由って……。別にモンスターが追いかけてくるわけでもないでしょうに……」



「あ、……」

「あー……」



「なによ2人して」


「ルピナス、そんな発言をなんて言うか知ってる?」


「えっ……、まさか……、フラグ……?」


 魔光石に照らされた廃坑を、蠢く何かが忍び寄る。……ルピナスのフラグに導かれるように。


「アタシのせいなの!?」



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