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12話 レアアイテムを求めて



 ユニークアイテムを造るには、特別なレアアイテムを使用しなければならない。どんなに優秀なモノでも、必ずリスクやハードルが存在しているのだ。


「そのレアアイテム、いくつ持ってるの?」


「1つだけだよー。『ハピネスストーン』ていう鉱石なんだけど、今のところ採れるダンジョンが1カ所しかなくて」


「装備を造るには全く足りませんね……。そのハピネスストーンという物を購入するにも、また資金問題に戻ってしまいます」


「じゃあ、一緒に採掘に行こうよー。わたしもたくさん欲しいし」


「ちょっとナツハ。そんなレアアイテムの採掘場所を教えたら、アンタのお店の売り上げにも左右してくるでしょうが」


 ハピネスストーンの採掘場所を知っているプレイヤーはまだまだ少ないと思われる。情報とは力だ。そんな貴重な情報は高値で取引されることもあるというのに、今のように容易く教えようとしてはいけないとルピナスが指摘してくれる。


「大丈夫だよ。ハピネスストーンはもっとみんなにも知ってもらって、わいわい楽しくなってほしいから」


「ナツハちゃんがそれでいいなら、あとでさり気なく掲示板に流しておきますね。話を聞いたわたし達が独占するようなことになっては意味がありませんから」


「そうと決まれば、3人で一緒に採掘へ行きましょ」


「うん!」


 3人で『いっしょに』か。他のプレイヤーと協力するなんて初めてだよ。わくわくするね。





 壁に並んだ魔光石の明かりを頼りに、トロッコのレールに沿って廃坑を歩いていく。


 ハピネスストーンを採掘できるのは、周囲にこれといった取り柄もない鉱山にある廃坑だ。一応は幾つものパーティーが調べ上げたそうだけど、特に目立った収穫も見つからなかったとして皆の記憶からも薄れつつある。


「ここって……、なんかあったっけ?」


「攻略掲示板に発見情報が載せられてから、何かあるはずだと言われ続けて、結局は何もなかった場所ですね……」


「『パターンからしてこの地帯にも目玉があるはずだ』って、話題になってた場所か。あれだけ徹底的に探索されても見つからなかったのに、ほんとにハピネスストーンなんて採れるの?」


「わたしはプレイヤーがいなくなってから採掘に来たんだけど、そのときはすぐに採れたよ」


 ネットや掲示板に詳しくないわたしがこの『採掘者の廃坑』を見つけ出したのは、ブームが過ぎ去ってプレイヤーが訪れなくなったあと。ハピネスストーンと出会ったのも、誰もいない廃坑で鼻歌混じりにピッケルを振っているときだった。


「そんなに簡単に採れるんだったらどうして話題にならなかったのよ。隠し通路はなかったし、時間限定で出現するとか?」


「探索に慣れたパーティーがそんな見落としをするとは思えませんが、なにかしらの条件があると見てよさそうですね」


 ルピナスとフィリオが難しい話を始めたので、わたしは遠慮なく採掘に集中させてもらう。


「条件か……。そればっかりは探索パーティーに改めて任せるしか――って、ナツハはどこに行ったの!?」


「あれ、さっきまで隣に――いました。あそこです」


 えへへ、大量大量。人が少ないと採掘ポイントも多くて助かるねー。


「こらナツハ、勝手に離れちゃダメじゃない!」


「ほえ? ご、ごめん……?」


「わたし達はパーティーを組んでいるのですから、なにかあったのなら声をかけてください」


 注意を受けて視界の左上を見ると、HPバーやスタミナゲージの下に、2人の名前とHPバーが並んでいるのがわかる。これは2人とパーティーを組んでいる証であり、同じ目的のために行動を共にしているという意味でもあるのだ。


 なにをするにも相談したり、困ったときにはお互いに助け合う。それが仲間になるということ。


「仲間とは友情であり、絆なんだね!」


 すごく大切なことを教えてもらったよ。


「うっ……、ナツハちゃんの瞳が眩しい……!」


「ぐぅ、そんな目でアタシを見ないで。浄化されちゃう……!」





「……で、ナツハはなにをしてたのよ」


 息を切らしたように肩を上下するルピナスは、なぜかわたしの手をそっと握って問うてきた。


「鋼を見つけたから採掘してたんだー。お客さんの注文でも鋼を使うことが多くなったから、見つける度に採掘するようにしてるのー」


「ふ~ん。確かに中層のプレイヤー達なら、そろそろ玉鋼系の武器にしていく時期なのかもね。ナツハのお店は客層が広いから、素材を揃えておくだけでも大変でしょう」


「そうなのかな? わたしはずっと採取してるから、今のところは素材が足りなくなることはないよ。もしものときは素材を売ってるプレイヤーのお店もあるから大丈夫」


「ナツハちゃんは収集家ですからね。フィールドで出会うときも常に採取していますし、戦闘している姿なんて一度も……」


「そもそも、ナツハって武器は持ってるの? いつも手ぶらでチョコチョコしてるイメージしかないけど」


 2人のキレイな眉が揃って垂れ下がる。こんな美人を困らせるなんて、わたしも罪な乙女になったものだ。


 わたしが戦う姿を想像しているのだろうけど、残念ながら未だに『まともな』戦闘経験が無いのでなんとも答えられない。非力なわたしがモンスターを倒す方法だって、亀の甲羅をピッケルしたり、鳥さんを山ごと爆破するしかないのだから。


「スミスといえばハンマーだけど……」


「ナツハちゃんには合いませんね……」


 2人がまた難しい話を始めたので、わたしは遠慮なく採掘を再開させてもらう。



 ……なんかめっけー。



「ハピネスストーンげっと。やた」


「「そのハピネスストーン待ったああ!!」」



 ……へ?



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