10話 お店の常連さん
『【アイテム効果倍化】スキルを獲得しました』
『レベルが上がりました』
レア素材を空っぽになったアイテムボックスに入れて、立て続けに表示されたお知らせを確認していく。
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【アイテム効果倍化】
■能力
アイテムの威力、効果時間が2倍になる。
■獲得条件
アイテムのみで☆3以上の大型モンスターを討伐する。
■次のレベルまで
なし
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「アイテム効果倍化か、すごいねー。タル爆弾のお金が半額で済むよー」
このクエストを周回するのにも、25万ゴールドだけで済むんだね。……完全に赤字ですが、なにか。
「次は……、レベルが上がったから、ステータスポイントを振り分けないと。10を超えたときのボーナスも入ってるね」
これは考えるまでもない。DEXとLUKの2つへ均等に。
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■名称:ナツハ Lv13
■ステータス
HP 250
MP 50
STR 5
VIT 5(+24)
INT 5
MND 5(+20)
AGI 5(+15)
DEX 70
LUK 70
CHA 5
■スキル
AS おっと、これは見せられないよ~ん。
PS 【採取 Lv:3】【生産 Lv:3】【アイテムコレクター Lv:4】【アイテム効果倍化】
■装備
武器
右手:なし
左手:なし
防具
頭:なし
胴:カエルの雨具(+6)
腕:丈夫な手袋(+3)
脚:新人鍛冶のベルトズボン(+6)
足:お花の長靴(+3)
アクセサリー:なし
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むふふ。わたしもかなり強くなってきたねー。装備が変わらないけど、お気に入りだから大事に使いたいの。
「よし、帰ろう!」
うきうきのステ振りが終わったので、わたしは村の冒険者ギルドでクエスト報酬を受け取ってから、ポータルに乗って始まりの街へとワープした。
「行きは長いが帰りはワープ。行きにもワープを使わせてほしいよ……」
新しい集落のポータルを使えるようにするために歩いて現地へと赴くのは、正直言うとかなり面倒くさい。かといって道中にも未知の素材があるかもしれないので、やっぱり歩いて行かざるを得ない。……う~む、悩ましい。
初のログイン地である中央広場でポータルに乗ったまま首を傾げている間にも、多くのプレイヤー達が他の町へとワープしていく。光の粒子となって空に飛んでいく彼らはどこへ向かうのだろうか。
「……ねぇ、ナツハはポータルのド真ん中でなにをしてるのかしら」
「さぁ。ラグでないことは確かなんですけどね」
「あ、いまアタシ達と目が合ったわよ。……逃げる?」
「なにかまたトラブルに巻き込まれそうですが、わたし達もナツハちゃんには用がありますからね」
「そうよね。……おーい、ナツハ!」
わたしを呼ぶ声がすると思ったらルピナスとフィリオだ。手を振ってくれているので、スタミナダッシュで2人の下へ駆けていく。
「こら、街中でスタミナダッシュなんてしたら危ないでしょ」
「大丈夫だよルピナス。わたしのAGIじゃ、そんなに早く走れないし」
「こんにちはナツハちゃん。今日も元気そうですね」
「フィリオもこんにちはー。2人は攻略に戻るの?」
先週の出会いのあとすぐにランカーとして攻略組に合流した2人は、今ではゲーム内でもかなり有力なプレイヤーとして名を馳せている。βテスト期間である1カ月の間にエリア攻略を完遂するために、最前線を毎日駆け回っているのだ。
ワープポータルの前にいるということは、これから最前線の町に戻るところかもと思ったんだけど。
「攻略はしばらくお休みでしょうか」
「装備を新調しようと思って、ナツハを探してたのよ」
ありゃ、わたしを探してたのか。競争の激しい攻略を中断してまで来てくれていたのに、何日も遠出してお店を留守にしていたなんて申し訳ないことをしちゃったよ。
「メッセージを何度も送ったんだけど、またスルーしたわね」
「うわ、ごめん。あとで確認しようと思って……」
「直接お店に行っても閉まってるし、また採取に夢中になってたんでしょ?」
「まあ、そんなとこかなー。えへへ」
言えやしない。山を爆破してきたなんて、言えやしないよ。
「でも、もう満足したから2人の装備を造ってあげるね」
「ありがとう、助かるわ。アタシ達の装備を預けられるのはナツハだけだから」
「えへへ。そんなに褒めてくれるならがんばってみるよー。新しい素材もいっぱいあるから試してみるねー」
さあ、今日はなにを造ろうかな。マイブームに合わせて、爆発する剣でも造ってみようか。
……え、振る度に爆発する剣なんていらない? 反動が強いし視界が悪くなるからって?
そうなのか。じゃあ、爆発する杖なら……、これもダメなの?