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エピローグ

エピローグ


 あの大事件が遠い過去だったかのように、私立カシミシュナ学園の学校生活は静かに進んでいる。破損した各施設の補修も完了し、じっと目を凝らして見ない限り以前と違う点に気づかない。学園に関係する人物全員が、あの時の事を思い出そうとはしなくなった。学園全体に記憶を失くす魔術でも施されたかのように……

 季節は春から夏へと向かい、構内を歩く生徒達も冬用の制服から夏用へと移行している。

「はぁ〜夏がすぐそこって感じだね」

 いつの間にか定位置になった窓辺に佇む、ヘルメットを被ったような髪型の女子生徒。しかし、前回とは異なり、どこか楽しそうで眩いぐらいに輝く陽射しに包まれていた。

「そうだな」

「あっ! あそこに大きな入道雲がある!」

 それぞれ夏用の制服に身を包み、窓の外に広がる空と雲を眺めていた。

 溢れ出る魔力の持ち主だった雅毅は、あの事件以来、魔力が極端に低下し一般生徒並みになってしまった。それでも、海涼は体勢を変えず常に行動を共にしようとしている。

「相変わらず魔法が上達しないなぁ〜。どうしてかな?」

 愛用のクマさん傘を左手に置き、海涼は何となく呟く。あの時のような魔力の高まりはなく、学校生活は天然娘を貫いている。

「まぁ、あン時は、誰かを守りたいとかって思ったからできたんじゃないか? 証拠に、毎回毎回実習は失敗ばっかだし」

 意地悪く笑みを見せつける雅毅に、海涼はさりげなく足を踏みつける。

「ちょっと……言い過ぎた」

 すかさず訂正を入れると、フグのようなふくれっ面を元に戻す。

「まぁ……何だ、オレも力が弱くなったし、デキの悪い者同士、ガンバッか。いいかげんに思ってた『魔術』をもっと真剣に考えてみる」

 ちょっとした決意表明を聞けた海涼は、嬉しさに顔が綻び太陽のような笑みを浮かべる。

「そう言えば、あの時のお礼を言ってなかったね」

 何かを思い出した海涼は、口元に手をやりハッとした表情になる。

「お礼?」

「一度しか使えない禁術を使わせてくれて、ありがと」

 面と向かってお礼を言われるのが慣れていないのか、顔を俯かせこめかみ辺りを掻く。

「あっ、ああ、あれか。あン時は、オレはボロボロだったし、魔術を使うなんて、オレ、何となく怖かったし……」

「マーくんて、無愛想なんだけど、ホントは優しいんだね」

 曖昧な理由で誤魔化した雅毅に対し、海涼は下から顔を覗き込みながら微笑むのだった。

『前に話してくれたじゃねぇか。一回でもいいから、ジー君と遊びたいって……』


                                    終わり


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