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ああああああああああ  作者: あああああ
3/5

第三話

 どうやら長い眠りについていたようだ。

今まで俺は何をしていたんだっけ?

あれ、なんか柔らかくて暖かいところにいるようだ!!

 長い眠りから目覚めたような感覚で目を開けると、目の前には地平線の彼方まで深緑の大平原が広がっていた。

 この景色を見るのは初めてな気がする。というか今まで俺は何をしていたんだ?眠る前の記憶が思い出せない。

 「あー…あー…ここはどこだぁ!?」

 自分の頭をげんこで叩いてみるが、どうやら夢ではなさそうだし、呼吸も視界もはっきりしている。

とりあえず辺り一片を歩いてみることにした。

そう思った瞬間、後ろの方からいきなり地響きがなる。


ドドドドドド…

どうやら馬が地面を走る音だ

「オオッー!!!」

馬に乗っていたのは汚らしい衣服を身にまとった男たちで、手には槍やら吹き矢やらを持っていた。


途端に、彼らに絡んではまずいと感じる。遠い昔にいじめっ子に絡まれたときに感じた感覚と、同じものが頭をよぎる。

彼らはこっちを見ている。明らかに俺のことを狙っている。


「うわぁぁぁ!!!」

俺は必死になって走り、彼らを振り切ろうとするも、相手は馬に乗っている。すぐに追いつかれるのも時間の問題だ。しかも俺は極めて足が遅くマラソンが大の苦手なんだ!!


「ゴラァァァ!!!」

尻の部分に異物感を感じたかと思うと、馬に乗ってきた男の一人が、俺のベルトに矛を引っ掛け、俺を上に持ち上げだ。


「おい!腰抜け!!お前、変な服着てるなぁ!!それにこの辺じゃあ見ない顔だ!!土から生まれてきたのか?」

 それに釣られて周りにいた男たちも嗤う。


 俺はその男たちにあえて尋ねる。

「あのぉ…俺は、今まで何をやっていたのか忘れてしまったんだ、なぜここにいるのかもわからないしぃ。良かったらここを案内してくれないか?」

 

 それを聞いたリーダー格の男は

「オイオイ!野郎ども聞いたか!?こいつぁ本物のキ印だぜぇ!?それも遊牧民の俺たちに道を聞きたいだとよ?こっちが聞きてぇぐらいだぜ!」

 すると他の男が、

「親分!こいつはぁ痴呆じゃあねぇのか?こんな奴に関わってたら、俺らまでくされ脳になっちまうぜ!?」

 「ぎゃははははは!!!」

 一斉に嘲笑の嵐が巻き起こる。すると俺を引っ掛けている矛をリーダー格の男が振り回しながら

「オラオラ!!!鈍くさいやっちゃのー!!!」とまくしたてる。

 これには俺もたまらず、

「や、やめてくれー!!」と叫んだ。

あまりにも揺らされるので、ポケットから何かがこぼれ落ちた。なんだっけあれ??

すっスマホだっけか?

 すると親分はスマホを手に取り、

 「なんじゃあこりゃあ?なんか変な文字が書いてあるぜぇ??兄弟きょうでぇこれはなんだぁ?」

 続いて彼の弟分はこう答える。

 「兄貴ぃ!これは何か貴重な石版じゃねぇのか??質感は陶器に近そうだがなぁ」

 「げへへへへ、陶器か、俺らの世界では高貴な品物よ!これは預かっておくとするか!!」

 すると男は、馬の脇に掛けてあった木箱に俺のスマホをしまってしまった。

 「おいっ!やめっ!それは俺の大事な!」

 「大事な…何だぁ!?」 

 クソっ…!思い出せない!それがなぜ大事なのか!

 「お前の…大事な玉かよ!このかま野郎!!ギャハハハ!!」

 男は俺を強く罵ると、矛を大きく振り下げ、俺を地面に叩きつけた。

 「うぅ…いってぇ…」

 「あばよ腰抜け!」

 男たちは馬に乗り、来た道を帰ってしまった。

 俺は今までに経験したことのない痛みと、それよりも酷い屈辱感に襲われ、やっとのことで自分の愚かで空虚くうきょな妄想を思い出した。俺は異世界で無双をしたかったが、それはできなかった。現実と同じだ!いや現実よりも酷いぞ!!異世界がこんなにも残酷で危険な場所だったなんて!!それに大切なスマートフォンまであいつらに奪われてしまった!!俺はこれからどうすれば良い!?意識が朦朧もうろうとする中で、俺は二度目の眠りについてしまった。そして俺は頭の中でこの一言がよぎった。

 「弱い人間は、どこであろうと弱い!」

 

 「う!ぅぅ…」

 体中を激しい痛みに襲われ、俺は起きた。しかし、ここは寝る前にいた草原ではない。なんせ、とても柔らかい感覚がある。それに、夜なのに明るいのはなぜだ?

 「き…君!大丈夫かね!?」

 目の前に現れたのは立派な口ひげを蓄えた中年男性だった。

 「あっ…はい」

 「草原で倒れていたから助けたんじゃ。調子はどうじゃ?先程医者を呼んだら腕と背中を骨折していると言われたぞ!動くと危険じゃ、安静にしておきなさい。」

 どうやら俺はこの親切な男性に助けられたようだ。それを悟った瞬間、俺はこの人に対しての圧倒的感謝を感じた。彼のように良心の溢れる人がいなければ、俺は今頃狼の餌にでもなっていた所だ。

 「食事は自分で食べれなさそうだな。今、娘を呼んで世話をさせるから待ってなさい。」

 男性は階段を伝って下に降りた。

 娘か。今思えば俺はなんとけがらわしいことを考えていたのだろう。女性のことだけ考えすぎて、本来の人間の美しさというものを忘れてしまっていたのだ。

 下から娘が伝ってくる階段を伝ってくる音が聞こえる。

 「どうも。」

 登って来たのは色付きの洒落たドレスを着た15.16の娘だった。娘と言っても自分とは殆ど同年齢なのだが。

 そしてなんと言ってもこの女性、何処かで見覚えがあるのだ。過去に何か恐ろしいことをされたような…

 

 「竹林くん。大変なことをしてくれたね」

 そう娘はつぶやいた。

なぜこの女は俺の名前を知っているんだ?

続けて「まさかスマホをあの蛮族どもに取られるなんて」

 俺はなにがなんだか分からなくなり、彼女に尋ねる。

 「き…君は誰なんだ?そしてなぜ俺の名前を知っているんだ?」

 すると彼女は

 「私は現実世界の榎本雫よ。この世界ではライラ・デサリーヌという名前だけど。」

 俺はその一言を聞き、かなりの衝撃を受けた。

 「なんだって!?」

 

「私は貴方がこの映画の世界で何をするかが見たかったの。でも貴方は貴重なスマホを落とした。あれが蛮族の手によって使われたりしたら、この映画とこの世界は壊れてしまう。つまり、私達は元の世界に帰れなくなってしまうの。そして、私はもう一つの椅子でこの世界に来たから、あなたが本当に目的を果たすまで、この世界から出ることはできないの。」

 

 「俺の…目的?」

 俺は再び彼女に尋ねる。

 「そう、この椅子に座る瞬間、貴方が思い浮かべ、望んだこと。覚えてる?」

 俺は頭を抱え込んで思い出そうとしたが、その答えは出てこなかった。

 「ごめん、榎本さん…出てこないよ」

 「ふーんそう。まぁ貴方のことだから色欲関連のわかりやすいことかしらね。」

 俺の望んだ答えはいとも簡単に色欲関連のことであると決められてしまった。しかし、俺は本当にそれだったのかを思い出せる自身はない。

 すると下から、男性が榎本さんの父役の男性が上がってきた

 「おおっー!仲良くしとるの。同年代のものどうし会話が弾むじゃろうて。飯ができたぞ。下へこい。旅の人はわしが支えてやるからまってろ。」

 すると榎本さんは下に下がり、俺は男性に支えて貰って階段を降りた。


 晩ごはんはあまり豪華だとは言えないが、とても栄養のありそうな代物だった。良い匂いがここまで漂ってくる。豆のスープにじゃがいもと、塩で味をつけた肉だった。

 「お前さんの滋養強壮じようきょうそうに良いと思っての。」

 「良くして頂いて本当に感謝しています。このお礼、何をしたら良いか。」

 俺が男性に対して感謝を述べると横から榎本さんが、

「あーら、なに気取ってるの?」

 とからかって来た。

 「申し遅れたが、わしの名前はアントワーヌ・デサリーヌという。この国の伯爵をやっとる。今は中央政府から外され、この田舎町の警視隊長だがな。」

 「は…伯爵!?こ、これは度重なるご無礼失礼いたしました!」

 伯爵という位がどれだけ偉いのかはわからないが、この人が高貴な方なのはよくわかる。俺はそんな方にお世話になっているのを申し訳なく思い、思わず頭を机につけた。

 「いやはや、そんな頭を下げるような者ではないよ。」

 俺は思わず、

 「榎本さん、俺どうすれば良いのかわかんないよぉ…」

 と隣にいた榎本さんにこぼす。すると榎本さんは「あら?エノモトって誰かしら?」

それに続いてデサリーヌ伯爵も

 「知り合いの方かね?」と聞く。

 「私の名前はライラよ!間違えないで!」

俺は慌てて、「ごめんなさい。体だけでなく、頭も少しやられてしまったようです。エノモトというのは僕の郷土に伝わる悪魔のような老婆おにばばの名前です。」

 と答えた。

 それに榎本改めライラは「やられたのではなく、元からおかしいんじゃないの?」と返した。

 何も知らないデサリーヌ伯爵は

 「ハッハッハッ!!面白い民話がある郷土だな!是非とも行きたいものだ!それにしても君の名前はなんというのだ?」

 俺が答えようとするとライラが

 「アホ山バカ太郎よ」

 と先に答えた。どうしよう、すぐに名前を考えないと、先にアホ山バカ太郎で通ってしまう。そんな中俺が思いついたのは、英語でオタクを表す言葉だった。そしてたまたまアラビアのロレンスが頭に浮かんだので

 「違います。僕の名前はナードです。ナード・ロレンスです。」

 「ほぉ!ナードくんか!良い響きの名じゃなぁ?」

 デサリーヌ伯爵は俺の名前を評価してくれたが、ライラは「プッ」と笑った。

 

 

 寝る直前ライラは俺のところに来て

 「明日、蛮族からスマートフォンを取り返すようにお父様に取り入って見るから。」と言った。

 俺はそれを聞いてから数秒後、長い一日を振り返るようにして、眠りについた。


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