シューマイ
俺は夕食を食べに中華料理屋に入った。
そこでライスとエビチリとシューマイと小籠包を頼んだ。
そして運ばれてきたライスとエビチリに俺は息を飲んだ。
ライスが日本人が使うサイズの茶碗に盛ってあり、エビチリは1人で食べきれるくらいのサイズの皿に入っていたのだ。そして箸も長くない。
元の世界の中華料理屋では、ライスは超小盛りの茶碗で運ばれてきて、エビチリは三人分くらいの皿に盛られていた。そして箸が無駄に長い。宴会客以外は中華料理屋に入るなと言わんばかりだ。
俺は少しのエビチリから垂れるソースでご飯を大盛り食べたい派なのだ。そんな独身者の夢という花は幾多のチャイニーズレストランに摘まれてきた。いつも小盛りのライスはエビチリが途中くらいでなくなり、水を片手にエビチリをつつくという惨めな姿を宴会客達の前に晒してきた。
そうした諸問題がこの世界では解決していた。
「うわぁ・・いい世界だなぁ・・・ここ。」
俺はニコニコしながらエビチリとシューマイを箸で突いた。
エビチリの味は申し分ない。そしてシューマイもうまかった。うまかったのだが、欲をいえばもう少し乾いていた方が良かったかもしれない。
シューマイといえばジューシーだろう、という声が聞こえてきそうだが、俺は崎陽軒の様な少しパサパサしたシューマイが好きなのだ。グリーンピース乗ってるし。
そう思った瞬間、チャイナドレスを着た店員がスタスタとやってきた。
「お客さん、シューマイパサパサさせたいアルか、お安い御用アル。」
店員はおもむろにドライヤーを取り出し、シューマイを乾かし始めた。シューマイはみるみるうちに乾いていき、ただの皮がついた肉団子になった。
「乾いたアル。」
俺は身震いをした。なんて気がきく店なんだ。俺の些細な表情からシューマイをパサパサさせたいというニーズを読み取り、機転を利かせてドライヤーで乾かしてくれたのだ。
「うわぁ・・いい世界だなぁ・・・ここ。」
俺は更にニコニコしながらパサパサのシューマイを食べた。うん、まずい、いい意味で。
しばらくシューマイを食べていると、何故だか目が痒くなってきた。ん?花粉症かな。もう五月なのにまだ飛んでいるのか。
目をゴシゴシとこする。その俺の一連の動作を店員は見逃さなかった。
「お客さん、花粉症アルか?」
「あ、ええ、そうなんです。毎年この時期は・・・。」
「その小籠包の汁の中には花粉症の薬が入っているアル。目に挿してみるアル。」
!!なんと、こういった客がいることを見越して、小籠包の中に花粉症の薬を入れておくとは・・・この店はおもてなしの匠か。
俺はすぐさま小籠包の汁を自分の眼球に注入した。
「ウギャア!!熱い!!熱い!!」
「お客さん!!頑張るアル!!この薬は熱さで治すタイプの薬アル!!」
俺は店の床の上で七転八倒した。
そして俺は気絶した。
「・・・・気づいたアルか。」
見渡すと俺は厨房の横の狭いスペースに横になっていた。
「・・・・ん・・・俺はいったい・・」
「花粉症の薬の副作用で眠くなったアルね。しばらく寝ていたアル。まだ目痒いアルか?」
「目・・・あっ、痒くない。まだ焼ける様に痛いけど痒くない!!」
「よかったアルね!!」
「よかった!!よかった!!」
俺は店員とハグを交わした。
そしてお会計を済ませようとレジの所にいったが、しばらくして店員がひどくバツの悪そうな顔をして戻ってきた。
「・・・お客さん、お客さんに謝らなければいけないことがあるアル。」
「え?何?」
「・・・あの小籠包、花粉症の薬と間違えてボラギノール入れてたアル。痔には効くけど花粉症には効かないある。」
「・・・・。」
「・・・・・。」
「・・・いいんですよ、現に目は痒くなくなったんだ。ボラギノールか花粉症の薬かなんて大した問題じゃない!!」
僕は爽やかに満面のスマイルを浮かべた。
小さいことは気にしない。なぜならここは「いい世界」なのだから。




