サバイバー
子供はみな飴玉をもらう。
私が渡されたのは飴じゃ無くてビー玉だと気付いていたけど口に入れた。
飴玉はやがて溶けて身体に染み渡る。
無くなった頃には新しく貰えて、みな美味しそうに頬張る。
ビー玉を貰った私もいつまでも頬張る。美味しそうな顔はしない。
時が立ち、私にもきちんと新しい飴玉を与えられる。
でも「まだ口に入ってるから」と、飴玉を口にはしない。いつまでもビー玉をコロコロし続ける。
1つ、2つと飴玉を貰っては溶けるまで手に持っていた。
その頃には飴玉をくれた人から遠く離れた。
いつしかこのビー玉が気道を塞いでくれるのを待っていたのかもしれない。
ある日、飴玉をもらった。沢山沢山。こぼれ落ちるのも気にしないで、沢山沢山。いつものように「まだ口に入ってるから」と呟いても、止まることなく、沢山沢山。
動けなくなるほど山のように貰って、どうしたら良いのか分からずにいたら
「君はとっても甘い匂いがするね」と言われた。
「私がじゃないでしょ」
思わず笑うと、ビー玉が飛び出てしまった。
手にはビー玉。口は空っぽ。周りには沢山の。
口寂しいなら飴玉を入れれば良いのに、私はずっと戸惑っている。
気持ちが悪いならビー玉を手放せば良いのに、私はずっと戸惑っている。
ずっとビー玉を入れておくことで口を噤んでいたのだと分かった。
今もほら、うっかり声をあげて泣きそうだ。
サバイバーは医学用語です