3ニン目 そのニ
なるほどな。
日記を全て読み終わった頃には既に時計の針は2時の方向を指していた。
とりあえず、書いてあったことを整理すると
・これを書いた人はみんな亡くなってる。
・みんなバクスに復讐するよう促している。
ほぼほぼ、全員この旨の内容だった。
だが、面白いことに1人だけ1日を生き残った人がいるらしいのだ。
その人の記録によると
・日付は時計の針がもう一度12時の方向を差したら変更される。
・バクスは1日経っても消えない。それどころかもう1人バケモノが増える。
そいつの名前は色欲の悪魔 ネヌキ
そいつを一度見てしまったら魅入られて一瞬で骨抜きにされる。
とのことだ。
つまり、ネヌキとは目を合わせることも許されないのか。
しかし、ネヌキの前にバクスをなんとかしなければな…
バクスは、次の日になっても受け継ぐ。
つまり明日になったらバケモノが2体に増える。
こんなタチの悪い事はない。
僕は必死にバクスの対策方法を考える。
ん?待てよ…
あいつの名前は暴食の獣。
つまり食べ物を見たら何も考えず喰らいつくのではないか?
僕は手に持ってるチョコレートを使って罠を作ることを考えた。
…
僕は家を出た。
すっかり外は明るくなっており、もう朝だった。
時計を見ると3時の方向を針が指している。
僕はチョコレートの欠片を家の前に落とした。
そして、それを等間隔で落としていき、家の中に誘導するように置いた。
そして、タンスの中に隠れ待機をする。
「ガルル…」
あの嫌な声が聞こえてきた。
こんなにもの時間、何も食べていなかったのだから、さぞかし腹を空かしてだろう。
つまり思考力はより低下してる。
これはチャンスだ。
家の外で何かを咀嚼するような音が聞こえる。
怖い、怖い、緊張する。
俺の足がブルブルと震える。
俺はそれを必死で抑える。
音が近付いてきた。
「ガル…ガル…」
嫌な音がドンドン近付いてくる。
「ガルルル」
そう唸ったかと思うと走る音が近づいてくる。
やばい、なんでだ!
まだ、チョコレートが……あ、そうか!
肉の匂いを嗅ぎつけて僕の方に向かいに来たのか!
僕はそう判断し、タンスの入り口に向け包丁を突き出した。
その瞬間、
バキッ!
タンスの入り口が醜悪な狼の噛みつきによって壊された。
だが、狼はその代償に一つの顔を失った。
包丁を突き出してたのが活きて、タンスを噛み付いて壊した狼の顔のど真ん中を貫いたのだ。
僕はすぐさま、その包丁を手放し硬直してるバクスの後ろに回りこむ。
やはり、そうすぐには動けないか。
想定外のせいで、仕掛けた罠が使えない…
くそ、ならば
僕は機転を利かして、家から出て家にライターを付け離れた。
この町の家は見た感じ全て木造建築だ。
もちろんこの家も例外ではないだろう。
家が燃え盛る。
「ガルルゥ…ガルルゥ…」
悲痛な獣の叫び声が聞こえる。
どうだ、思い知ったか。
これがお前が殺した人たちの憎悪の力だ!
そして、僕は苦しむ姿を見るために燃えてる家に近付いた。
たがそれが間違いだった。
「ガルルウ!」
バクスは家から重体の体であるにも関わらず飛び出てきて、覗いた俺のスネに噛み付いてきたのだ。
ぐ、痛い、痛い、痛い
暴食の獣 バクスは真ん中の顔には包丁が刺さり左は完全に焦げ、右の顔も引火をしていてもう瀕死であろう状態だった。
それでも右のバクスは俺のスネを離さなかった。
ミシミシッ
嫌な音がする。
くそ、痛い、痛い
僕は思わず目から涙を流した。
「くそっ!こいつ離れろよ!!」
僕は涙目になりながら、何度も何度もバクスの右の顔を蹴った。
だが、決してバクスは離れなかった。