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よろしい、ならば闘争(逃走)だ。

ちょっと長いです。まさか2000文字超えるとは思わなかった……。

 殴られた。左頬から吹っ飛んで路地裏から出てきて通行人の方々に驚かれる。

「いっ……!」

 殴られた箇所はもちろんのこと、地面を転がったからか全身が痛い。俺はほとんど泣いていた。男の全力の一撃などくらったことがないんだから仕方ない。

「バクガ!落ち着きなさい!」

「放せ!」

 俺を殴った男と近くにいた女の一人が何やら言い争っている。

 少し経ち、俺もどうにか立ち上がれる程度には回復した。俺は彼らの方を見て、逃げた。男がこちらを睨んでいて、おそらく数分ももたないうちに拘束から抜け出し、文字通り俺を殺すであろうと思われたからだ。だって怖かったんだもん。

「あっ、バクガ!」

 どうやらバクガと呼ばれた男がこちらに向かっているのだろう。大体どうして冤罪でここまでやられねばならんのか。もう少しお仲間の話を聞く努力をしていただきたいものだ。数分どころか数秒だったわ。寧ろ悪い方向に転がった。が、捕まったら最後だ、俺なんて数秒で消えるだろう。なら、逃げるしかない。人間ピンチになればなんとかなるだろう。死んだらまあそれまでだから諦めるしかないけど。

 そんなわけで、どんなわけだよ、本当に死を懸けた鬼ごっこ、開幕なのであります。


───────────────────────


 逃げ始めたのが昼。そして今は夕方。なんてこった、何時間も逃げ続けていたのか。向こうも良く諦めないな。まあなんか大切な人だったみたいだし仕方ないのかもな。それにしても俺、なんでこんな目に遭ってんだろう。……俺だからか。そうか。

 いかんいかんこのままでは何も始まらない。こんなことを終わらせるには何かを始めないとな。もう何言ってるのわからなくなってきた。

「いた!」

 ファッ!?見つかった!?

 ヤバイヤバイもうヤバイってこれ!

 座り込んでいたので早くは動けなかったがそれでもなお俺は四つん這いでも逃げ出そうとするその姿はおそらく滑稽に見えたであろう。後ろから追ってくるのはあのバクガとかいうやつではなくその近くにいた女らしい。が、捕まったらまずいことになりそうだ。

「もう嫌だおうち帰るううううううううううううううううううううううううううううううああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 叫びながら走る。大概叫んでれば気合が入る。ていうか叫ぶ台詞がこれとは。この世界に俺の家なんてないだろ。リナの家に居候させてもらってる身だからね。

 なんてふざけているけれど、実際はそうもいかない。こうでもしていないとやってられない。

「ま、待って……!別にあなたをどうしようとかそういうんじゃないから!」

 ……なんだと?しかしそんな簡単に信じてはならないだろう。俺は知ってるよ。他人の言うことは信用出来ないって。なんたって自分の言っていることも信用ができないもの。

「ああもう、アラムス!」

 女がいきなり叫んだと思うと、

「うあッ!?」

 なんか生えた!か、壁!?

 追い詰められた。そう簡単に捕まってたまるか、そんな思いは一瞬で消えてなくなった。ありがとう俺に優しくしてくれた人たち。

 俺はもう駄目みたいです。

「あの、だから、あなたがレインを、あの女の子を殺してないことはわかってるから。だからその疑いを晴らすために私についてきて欲しいの」

「何もしない?」

「ええ。何もしない」

「何かしたら?」

「何でもする」

 ん?今何でもするって言った?じゃあ何もしないで。あ、でも疑いは晴らして。

「メナサ!なんでその男と……!?」

 男が来た。こっから本番ですかね。

「バクガ落ち着いて!ちょっと深呼吸、はい、吸ってー、吐いてー」

「で、どうなってんだよ。説明してくれ」

「まあ簡潔に言うならこの人はレインを殺してないのよ」

「マジで?」

「マジだよ、殺しにかかりやがって……」

 なんてはた迷惑な野郎だ。

「……なんていうか、済まなかった。ところで、」

「何?助かったから早くこんなところからおさらばしたいんだけど」

「もしかして、日本人?」

「あ、うん、まあそうだよ」

 なんだこいつ突然そんなこと聞いてきやがって。

「そうか。俺は元日本人だったんだよ。そして今は転生してここにいるんだが……異世界から来た人間は何か能力を、簡単に言えばチートをもらえるらしいんだけど、お前ももらってるのか?」

「ねーよ。俺にはなんもねえよ。つーか何すごく馴れ馴れしく話してんだ。俺はお前が嫌いだからな。主人公補正なんかに屈するかよ糞野郎」

 殺されかかったんだぞ?殺しかけた人間に馴れ馴れしく話しかけるとか頭沸いてんだろ。あーいかんなあ、思考が悪いやつみたいになってきた。けど被害者だもん。だからいいんだよ。

「そうかい。それは残念だ。俺は別に構わんのだがな」

 ホモなんですか?どうでもいいからいいや。

「あ、上田さーん!」

「ん?あ、リナか。じゃ、俺は帰るわ。こんな早くあっさり終わるとは。あー殴られたとこが痛えわ」

 なんかもう左頬歪んでんじゃね?むしろイケメンになったかな?ほんと、異世界とかひどい場所だな元の世界の方が平和だ。

「あれ?どうしたんですか、左頬腫れてますよ?」

「冤罪で殴られてめちゃくちゃ痛いだけ。だけ、なんてレベルじゃあないけど」

「なら家に帰って処置しないとですね」

「つーかお兄さんどうだったよ」

「変わらずとってもかっこよかったですよ。もっと聞きたいですか?」

「いやいい。流石にイケメンの話なんて聞いてるこっちが悲しくなるから」

 ……なんていうかリナはこのことを大したこととして見てないなあ。見られても困るけど。そこが多分いいとこなんだろうな。

「べ─────でもない────けど」

 隣でリナが何かつぶやいてるけど独り言は干渉されたくないだろうしそっとしておく。やっぱりこの距離感が一番安心するな。

 あーもう人混みはいつでもどこでも嫌だったな。それが今日の感想だよ。死体?殺されかけた?もうどうでもいいや。早よ帰って寝よう。

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