叫ぶって意外と冷静な行動なのかもしれない。
俺とリナは祭りがあるとかいう街に来ていた。というか城下町だった。
ただ、俺が1ヶ月前に来た時のことなど忘れているので、どこがどう変わっているのかは良く分からない。
「かなり賑やかだな……」
「まあ国じゅうの人が集まっていますから」
俺もいい時期に来たものだ。これが主人公補正とやらか。嘘です。言いたかっただけです、すみません。
俺が心の中で誰かに謝っていると、
「お兄ちゃん!」
リナが突然声をあげた。
呼ばれたその人はリナの方を向き、こちらへ走ってきた。
……うわ、イケメンだ。イケメンがいる。
「久しぶり、リナ」
これまたイケメンボイスが口から出る。
「あ、お兄ちゃん、紹介します。こちらは上田さんです。異世界の人で、今は一緒に住んでます」
「ど、どうも……」
警戒しつつ挨拶を。もしかしたら、突然うちの妹を!とか言って襲いかかって来るやもしれん。だってリナがあんなだもん。仕方ないね。
「うちの妹がお世話になってます」
「あ、むしろこちらがお世話になってますよ。なんか勝手にお宅に住まわせてもらって……」
ちょっと日本語おかしいけどいいや。……ん?いや日本語じゃなくね?この言語の問題、ずっと無視してきたけどかなり大事なことだったりしない?
「お兄ちゃん最近大丈夫?どこかおかしい点はないですよね?変な女の人に付きまとわれたりとかしてないですよね?」
「大丈夫だよ。リナは心配症だな」
なんだこいつら。
「ちょっと俺一人で回ってくる」
そうリナに言って俺はその場を後にした。耐えられなかった。あの空気に。
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一人でこう歩いていると、高校の文化祭を思い出す。一人で色々歩いた。結局トイレの個室が一番安心するところだと分かった。いや本当に素敵なところよ?他に好きなところは試着室とか。あれくらいの広さが一番落ち着くよね。アウェーの中のホームと言ったところ。
とりあえずリナからお金は貰ったし(仕事とか手伝ったお駄賃みたいなもの。金額は結構多かったけど)、なんか買って食うか。腹へったし。
「お、久しぶりに見た」
1ヶ月ぶりの納豆だ。この世界に来たその日の朝は納豆ご飯だった。ほんとどうでもいいことだ。
というか納豆って日本のじゃないの?うわ、すげーな日本。異世界でも通じるクオリティ。腐ってるけど。
結局納豆ご飯を食べた。あの店の人は日本人だったらしい。十年以上前に来たらしい。なんか嬉しかったな。
どこかでだらだらと時間でも潰すか、と思い、適当にぶらついていた。
するとだ。
なんか良く分からないけどどうしてか左側に伸びる路地裏を見た。そしてそこには。
死体があった。
「 ッ」
びっくりした。こんな言葉がふざけていると思えるほど衝撃的だった。
それは元は女の子だったようで、死体となって真っ赤に染まった彼女は何かが欠けていて、その何かは分からないけどとにかく、
「うぷっ っ」
吐いた。
納豆ご飯が出てきた。それがどこかおかしいように思われた。
と、そこに、
「なんだよ、これ……」
彼女の知り合いらしき男がやってきた。男だけではない。他にも数人、全員女性だが、やってきた。
彼らは俺を見て、そして、男が
「よくもレインを……、殺す、殺す……ッ、殺してやるッ!」
俺を犯人としてしまったようだ。……。
どこか冷静な自分を感じながらそう思った。