やってきました異世界です。
ひとつ思ったのは、外になんて出なけりゃ良かったということだ。
今、俺は道に迷っている。妖精のせいだ。妖怪じゃないよ?妖精のせいだよ?いいね?なんでもかんでも妖怪のせいにするなよ。
街中のはずが周りには生い茂る木々。これを妖精のせいでないならば何と言う。妖怪のせいか。
とにかく、俺は方向音痴なんかではないのだ。
なんだか心細くなってきた。こんな森、早く脱出したい。
「……ん?」
光が見える。やっと出られたか……。
と、森から出た、が。
「え……?」
ここはどこだろう。いや、迷っているからそう思うのも当たり前かもしれないけど、もったいぶらないで言えば建造物とか見たことない。俺は一応日本人なので日本に何があるのか人並みに知っている。
なんか全く知らない世界に来た感じ。
どうしよう。と、とりあえずGPSで現在位置を確認する。
……電波が通っていない。
もしかして山の中だろうか。まさかこんな辺鄙なところに人が住んでいるとは。
とりあえず中に入ろうか考え、やっぱり様子を見ようと結論づけた俺は、少し遠くから観察することにした。
しかし、なんでこんなところに来たのだろうか。ふらりと幻想入りだろうか。もしそうだったら嬉しいけど、まさかそんなことがあるわけない。よし。フラグは建てた。
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辺りが暗くなる頃だと体感時間では思っていたのだが、一切そんなことはなく、むしろ明るくなったのでは、とも感じる。
「そこに居るのは誰ですか?」
「ひゃいッ!?」
ば、バレた!?
別に怪しいものでもないけどなんかヤバイ気がする。多分気のせい。
「あー、えー、怪しい者ではないんです。ただちょっとここがどこか分かんなくてですね、道に迷ったと言いますか、なんといいますか……」
しどろもどろになりつつ見苦しい言い訳をする。
しかし、理解はしてくれたようで、
「そうなんですか……。まあなんとなくそんな気はしてました」
その人は、なんか、日本人ではなさそうだった。髪の色は黒だが目の色赤いし。
「つーかそんな気ってどんな気?」
聞き逃しそうになったが、相当すごいこと言っているような気がした。
「ここに来る人、たまにほかの世界から来るんですよ。あなたもそうなんですよね?」
「ごめんちょっと話が見えない」
全く分からん。俺の足りない脳みそでも理解できるように説明してください。
話をしっかり聞いてみると、どうやらここが日本ではなく、地球でもない事がわかった。いやまあ予想はできてたけど、本当にそうだと言われるとなんか変な感じがする。
俺が通っていた森みたいなところは迷いの森というRPGにありそうな名前だった。そりゃあ迷うよなあ。この迷いの森、色々な世界と繋がっているらしいのだが、一方通行でこちらにしか来れないんだと。要するに、
「帰れないのか……」
「そうです。で、でもここに来た人たちは皆ここで楽しく生活してますから」
「じゃあ君はほかの世界から来た人なの?」
「いえ、私はこの世界の人です。この世界、8割がこの世界の人で、残り2割が異世界人です。」
今俺はこの人、この女の子の家にいる。女の子の家にとか初めてだからちょっと緊張している。
「そ、そんなに異世界から……。なんかもう多文化どころじゃないな」
多文明レベルだ。
ってかなんで言葉が通じているのだろうか。仕様かな?
「他にも困ったことがあったらなんでも聞いてください。知ってることなら教えます」
「俺はどこで暮らせばいいの?」
衣食住は非常に重要だ。これがなければ人は死ぬわけだからね。
「この家でいいですよ。2階に使ってない部屋があるのでそれを使ってください」
そう言えば、訊いてなかったことがあった。
「君の名前は?」
「私は、リナです。あなたは?」
「俺は上田だ。よろしくね、リナちゃん」
「はい」
リナは微笑みながら頷いた。
これからよろしくです。