─はじまりの、しろ。
ぼくが手に入れたのは虹色のパスポート。
パスポートの裏に書いてあった説明の通り、少年は公園の銀杏の木の下に立っていた。
ひらひらと舞い落ちる銀杏の葉がいつの間にか、パスポートを眺める少年の手のひらに優しく落ち着く。
黄色い世界に真っ黒な服の少年がぽつんと立っている。
「……わっ」
少年の手のひらの銀杏の葉は、強く吹いた風によって、空へと舞い上がる。それを追って赤色の空を見つめた。空にはいくつもの黄色い葉が舞っていた。
少年の手を放れた葉を追うように他の葉も空へ飛び立っていく。
そんな黄色い世界の中、突然現れたのは1台のバスだった。
──・・*虹色パスポート*・・──
バスの中央の扉が開かれ、少年を招き入れた。
少年は惹かれるように、白いバスに足を踏み入れた。車内は温かみのあるベージュ色。やんわりと少年を包み込んでいた。
バスの扉が閉められ、少年はキョロキョロと車内を見回した。
バスには少年しか乗っていなかった。バスの運転手がいるはずなのだが、磨り硝子か何かで仕切られているのか、車内からはぼんやりとしか見えない。
とりあえず、少年は乗車口の目の前にある1人用の席にちょこんと座った。
──この度はご乗車ありがとうございます。このバスはお客様が望まれる場所へ向かうバスでございます。どんなところでも連れて行ってみせましょう。
(どこへでも……。いきたいところはたくさんある)
少年は頭の中にその情景を思い浮かべた。
そこで少年には1つの疑問が生まれた。
「ねぇ、本当にどこでもなの?」
──……え? そうですね、本当ですよ。でも、どうしても出来ない事もありますのでご注意くださいね。
──それでは、発車いたします。
吊革がゆらゆらと揺れる。
意図せず、背中が座席を押している。
窓の外を見ると、ただ、白かった。
白いと言うよりは光っていて眩しい。その光が白く見えている。
しかし、その光は刺すような眩しさではなかった。
そんな光の中をバスは走っているようだった。
ぼんやりとしていると、うとうととしてきてしまい、少年はかくんかくんと揺れ始める。
しばらくして、少年は夢の世界へと飛び込んだ。
バスは走る。