さぁ、助けましょう!
「ぬぁ……?」
目を開けると見慣れた部屋の天井が視界に広がった。間違いない、ここは俺の部屋だ。毎日必ず見る天井だ、見間違えるはずがない。
天井が見えるという事と、背中越しに伝わる布団の感触で俺は横になっているんだと理解し、起き上がろうと身体を動かそうとしたのだが、背中や肩が痛み、上手く身体を動かせない。
この感覚はあれだ、休みの日に半日以上寝てしまった時の症状だ。
起き上がることを一時中断し、視線を壁掛け時計に走らせると時刻は九時半を指そうとしていた。電気を点けていなくても部屋の中は十分に明るい。どうやら午前中のようだ。
自分が今どうしているのか状況を確認しているとようやく脳の動きも活発になってきたようで意識が飛ぶ前の出来事なんかも思い出せてきた。確か俺とレンは……。
「あっ、久遠寺君……気が付いたの?」
部屋の前を通りかかった私服姿の委員長の姿を確認。薄い上着とシャツにジーンズといった割とラフそうな格好だ。
委員長はぱぁっと表情を輝かせテンポ良く一歩二歩と部屋の中に入って来ると、枕元に座った。
「あれ、委員長……学校は?」
時間的にも平日だったら学校に行っているような時間帯だ。そんな時間帯に何故委員長が俺の家に居るというのだろう。
俺が問いかけると、様子を窺うように委員長はやや身を乗り出して俺の顔を覗き込んでくる。下から見上げる形の俺は視線を奪われる。視界ちょい下の希望の峰に。
「今日は土曜日、学校は休みよ」
休み? ちょっと待ってくれ。俺の記憶が正しければ昨日は木曜日だったはずだ。いつから日本のウィークデーは金曜日が廃止されたんだ。
「レンちゃん、久遠寺君気が付いたよ!」
リビングへ向け大声を上げる委員長。その声を聞いてか、すぐさまバタバタと足音が部屋に近付いて来る。
「クキッ!」
滑り込むような形で部屋に飛び込んできたレンは委員長の真横に座るとペタペタと俺の身体に触れる。
「どうしたんだよレン。そんなに慌てて。もしかして台所に例の『黒い奴』でも出たか? リビングに即効性のスプレーあるからそれを拭きつければ……」
「この大馬鹿者ッ……心配させるな! お前が一向に目を覚まさないからどれだけ心配したと思ってる!」
レンは俺の頬に小さな手を添えて言う。心なしかその声が震えているような気もする。
「レンちゃん、気持は解るけど久遠寺君は目を覚ましたばかりで、まだ事態をよく理解してないのよ。落ち付こう……ね?」
委員長が優しくレンの肩に手を置いてレンをなだめる。レンもそれもそうだと頷き、頬に当てていた手を引っ込めた。。
さてさて、このまま横になっている訳にもいかないな。
身体を動かそうとする度に間接が痛むが、それを無視し上半身を起こす。上半身を起こすだけでも大変な作業だ。
どうしたんだ、俺の身体は。間接なんかが痛いだけでなく、全然身体に力が入らないぞ。
「久遠寺君、無理しちゃ駄目よ」
「そうだ。丸一日以上、目を覚まさなかったんだ。それだけ身体が弱っているという事だ」
慌てて俺が起き上がろうとするのを止めてくる二人。
「クキ、落ちつけ。まだ目が覚めたばかりで体力も戻ってないのだろう、焦らずゆっくりとしておけ。その間にお前が気を失ってから今までの事、順を追って話す」
「お腹空いてない? すぐにご飯容易できるけど?」
食欲はない。空腹具合からしてもあまり腹は減ってはおらず、この分だと茶碗一杯の白米だって食べきれないだろう。
「腹は減ってないな。とりあえず飲み物だけでも貰おうか」
まだ少しぼんやりとする頭を完全に叩き起こす為には水か何かを飲めばいいだろう。
「すぐに持ってくるわね」
委員長は立ち上がり部屋を出て行く。
「レン、本当に俺は一日以上寝ていたのか?」
一回も目が覚めることなく一日爆睡するなんて滅多にない。夏休みに二日ぶっ続けで起きていた時ぐらいだ。
最近は同居人も居た事だしあまり遅い時間まで起きて何かやっていたということもなく、大体日が変わる前には寝ていたはずで、十分に睡眠も取れていたはずだ。その状態でまず一日以上爆睡するなんてありえない。
「確かめるか?」
レンは俺の携帯を手渡してくる。待ち受け画面を見て本日の天気を確認すると、待ち受け画面も天気予報も本日は土曜日という事になっている。
待ち受け画面だけならともかく、インターネットの天気予報の曜日までは細工出来ない。そうなると本当に今日は土曜日のようだ。
「おまたせ久遠寺君」
委員長が麦茶を手に部屋に戻ってくる。委員長に礼を言って麦茶を飲み込むと身体全体に水分が行き渡る。寝起きの一杯。実は毎朝、冷たい飲み物をゆっくりと飲む事が密かな俺の楽しみだったりする。
冷たい麦茶のおかげで完璧に頭も起きた。一日以上寝ていたというのは信じるしかない。レンの目を見つめて俺は一度頷くとレンもそれに応えるように頷いた。
「さて、今日までの事だが、フーコメリアを探して夜公園に行ったのは覚えているな?」
「あぁ。フーコメリアが知らない金髪の奴と一緒に居たよな。って、フーコメリアは?」
部屋の入り口の方をずっと見つめるが、フーコメリアが部屋に来る様子はない。あれだけ委員長もレンも大騒ぎしていたというのに気が付かないわけがない。出かけているのだろうか?
「金髪の男とあの場を離れたきり、ここには戻って来てはいない」
レンはそれだけ告げると押し黙った。
「フーコメリアはレン達の世界に戻ったのか?」
「いや、それはない。こちらの世界と私達の世界を行来する時には『門』を通る必要がある。私がこちらに来た時門は閉じておいた。もし私達の世界に戻るというのなら、門を開き、こちらとあちらの世界を繋ぐ必要があるが、門が開かれた様子はない」
また聞いたことのない単語だが、門って言うのはレン達の世界と俺達の世界を行き来するためのゲートで、秘密道具の『どこでもドア』みたいなもんと思っておこう。
「レンちゃんが気が付いていないだけとか?」
俺が門の形をピンク色の扉と勝手にイメージし始めたとき、委員長はレンにそう言ったが、レンは静かに首を振った。
「どんなに離れていようとも『門』が開く気配は感じ取れる。クキが気を失ってからはそんな気配など全くないのでまだこちらの世界に留まっていると見て良い」
今初めて門について話を聞かされた俺と委員長よりも門の知識を持っているレンがそう言うのだから俺達はそれを信じるしかない。
「とりあえずフーコメリアの事はまた後で話す。今は気を失ってからだ」
「そうだな、そうしてくれ」
フーコメリアの事はゆっくりと話さなければならないだろう。今はそれよりも俺の中の空白の一日ちょっとを埋める必要がある。
「わたしもレンちゃんから連絡を受けた時はびっくりしたわよ。わたしの携帯に久遠寺君から通話が入ってフーコメリアさん見つかったのかなって思って電話に出たら、レンちゃんが至急公園に来てくれだもの。行ったら行ったで久遠寺君が顔色悪くして倒れているし」
「って事は二人が公園から家まで俺を運んだのか?」
「そりゃそうよ。公園の敷地にはところどころ陥没している所もあったし、救急車なんて呼べないわよ。倒れている人を運ぶのがあんなにも大変だとは思わなかったわ」
委員長はそう言いながらも、ゴミ捨てを頼まれた時のように、大変さを思わせないような笑顔を浮かべる。公園から家まで歩くとなればそう時間は掛らないが気を失っている人間を運ぶのは相当大変だっただろうな。俺に気を使わせないように振舞う委員長には頭が下がる。
「すぐに気が付くかなって思ったら、なかなか久遠寺君は目を覚まさないし。そのまま久遠寺君が目を覚まさないまま金曜日に突入」
「やべ、無断で学校休んでしまったか?」
学校の方も親父がたまにしか帰ってこない事は知っていて、親父に学校から注意がいかないように面倒でも遅刻や欠席はしないようにしていたのだが、弱ったな。携帯の着信を見る限り親父からの着信は来てないから担任から連絡は行ってないと思うが、月曜日に学校で絶対担任から小言を言われると思う。
「学校の方は安心して。わたしの方で久遠寺君は風邪を引いて休みだって言っておいたから。岸枝君やら他のクラスメイトのみんなは「小テストが嫌だから仮病だ」なんて騒いでいたけどね」
野郎ども……俺は小テストを受ければいい得点をたたき出せていたというのに。まぁ、日頃の生活態度からそんな風に思われてもしょうがないか。
しかし、よく委員長からの報告で先生も信じたな。俺が岸枝が休みだなんて伝えても、サボりを真っ先に疑われるというのに。これが優等生との違いか。
「わたしも驚いたけどね。駄目もとで先生に久遠寺君が休みの旨を伝えたらすんなりと欠席扱いになったのはね」
考えていた事が表情に出ていたのだろうか、委員長は俺の欠席をどう伝えたかまで教えてくれる。
委員長と家が隣だというのも説得力が大きかったのかもしれない。学校側は俺と委員長の家が隣同士なんて俺が委員長が隣人だったという事を知るよりも早く情報を持っていただろうし。
「学校の方の心配はなくなったな。次はフーコメリアの件なんだが、一体どうしたんだよ、あいつは」
脳裏に金髪の男と一緒に公園から去って行くフーコメリアの後ろ姿が浮かぶ。
「フーコメリアの方だが、あいつがこちらの世界に来た理由は人間族との協力が嫌で来たわけではないようだ。初めからクキの中にある魔力が目的で来たと見ていいな」
レンが悔しそうに部屋の畳に拳を打ち付けた。
フーコメリアの行動を見るに、俺達はフーコメリアに騙されていた事になるのだが、どうも腑に落ちない。最初から利用するつもりだったら、なんであんな顔するんだよ、フーコメリア。
「ごめんなさい」と俺に呟いた時のフーコメリアの表情は、本当に、心底辛そうな表情を浮かべていた。その表情だけははっきりと角膜に焼き付いて離れない。
「本当にすまん、クキ……私が付いておきながらこの体たらく、お前を巻き込まぬようにしたかったのだが、結局巻き込み、お前を危険な状態にまでしてしまった事、本当に申し訳なく思う」
レンは力なく俺の両肩に手を置いて頭を垂れる。
「危険な状態って?」
「魔力とは身体の中にある生命力のようなものの一つだ。魔法は自らの魔力を削り発動する。魔法を多用すれば身体への負荷が大きくなる。それも当然だ。身体の中にある力を外に出しているのだからな。じきに使った分の魔力は回復するが、それでも使ってはならん量はある。恐らく、フーコメリアはクキの魔力をかなり持っていったのだろう」
フーコメリアの手に握られていた、ソフトボール様なものは俺の魔力だったのか。
「その証拠にお前は一日以上気を失ったままだったろう? 今は辛うじて意識を保てるぐらいに魔力が回復したという事だが、安心はできん。どんな方法でフーコメリアがお前から魔力を奪ったかは知らんが、今、意識を保っていられるのは一時的なものかもしれない。それにもしかしたら魔力がこれ以上回復しないという事も考えられる」
身体が弱っているのは、俺の魔力ってやつをかなり奪われたせいか?
平然と振る舞ってはいるが、身体は滅茶苦茶だるい。もう少し眠りたい気分だ。だが何となく、このまま寝てはいけないと俺の本能が語りかけているような気もして、必死にだるく、眠い気分を堪えている。
「謝って許される問題ではないのは解っているが謝らせてくれ、クキ。私がもう少しフーコメリアの動向に気を張っていればこんな事は防げたはずなのだが……私はやはりレオ・クレックスのようにはなれない……」
自分の不甲斐無さを悔み、レンは強く唇を噛みしめている。両肩に添えられた手からも、指先が強く肩に食い込んできている。
あまりの痛さに顔をしかめたが、レンはそれに気が付く余裕がないようだ。
その顔をやめてくれ、レン。お前にそんな表情は似合わないよ。お前は知らないことを知って驚き、クリスマスプレゼントを貰った子供みたいに目を輝かせてなきゃ。苦手な野菜を涙浮かべて食べて、「どうだ、やったぞ」と野菜を食べただけなのに、誰も出来ないことをやってのけたような、達成感に満ち溢れた顔してないと。
言葉数が少ない委員長を見ると、委員長もレンと同じように顔をしかめている。
委員長の見えた未来ってこれの事なのか? 結果が解っていたはずなのに変えられなかった自身の無力を確かめるように委員長の拳は強く握られている。気にする必要はないよ、委員長。
委員長はよくやったよ。自分に出来る事を精一杯やっていたじゃないか。俺が危ない目に遭うって未来が見えたってだけで、他人事のはずなのに、ずっと俺の傍に居て未来を変えようと頑張ったじゃないか。
目の前に居る二人の表情は暗く、辛そうで見ていられない。そして脳裏に浮かぶはフーコメリアの辛そうな表情。
みんな、そんな表情を浮かべないでくれ。
まだ、なにも終わってないじゃないか!
「おっと、ほんとに身体が弱ってるな。まるで自分の身体じゃないみたいだ」
「久遠寺君!」
「クキ、無理をするな!」
よろめきながら立ち上がる俺を両サイドから委員長とレンが支える。
「フーコメリアはまだこっちに居るんだろ? だったら、まだなにも終わっちゃいない。なぁ、そうだろう?」
一歩足を踏み出すと、大きく身体が傾く。傾いた身体を素早く委員長が支えてくれる。
「何を言っているの、久遠寺君! 今の自分の状態、解ってる!?」
解っているさ、自分の身体だし。立っているのもやっとの状態だって解っている。でも、じっとしちゃいれないんだ。
「大丈夫だって、委員長。ちょっと長い時間寝ていたから身体だるいだけ。それ以外は絶好調」
レンは俺の顔をじっと見つめ静かに頷いた。
「止めても聞かないのだろうな。私も探すつもりだったから一緒に探そう」
「レンちゃん!」
委員長の顔を見てレンは首を振る。
「クキの顔見ても解るだろ、この大馬鹿者の決意は固い。私達がいくら止めたところで効果はないだろう。勝手に動かれるよりも、目の届く範囲に居た方が助かる」
「それはそうだけど……」
「そうと決まれば話は早い。今すぐフーコメリアを探しに行くぞ」
レンは軽く俺の頭を叩く。
「馬鹿者。お前はずっと何も口にしていない。今は大丈夫かもしれんが、あと数分後にどうなるかは判らん。食事だけはしろ」
腹が減っては戦は出来んとも言うしな。腹は減ってないが、なにか腹に入れておいた方がいいようだ。
「もう、解ったわよ。確かに今の久遠寺君になにを言っても聞かないよね。おかゆ作ってるからそれを食べて。味は久遠寺君には敵わないけどさ」
委員長はそう告げるとキッチンの方へと向かった。
少しするとコンロの着火音が聞こえてきた。作っておいたおかゆを温めているのだろう。
「とにかくリビングの方へ行こうか。部屋に居てもしょうがない」
レンを促してリビングへと向かう。
委員長が料理を温めている間、何気なくテレビの電源を付けると見知った場所の映像が飛び込んできた。
「公園だよな、これ」
テレビ画面には荒れた公園の映像が映されており、見出しには『一晩にして荒らされた公園』と出ている。
「昨日からやっているぞ」
「あらら、すっごい大事に……警察まで出ているって、何気に俺達やばくないか?」
テロップで警察は犯人を探していると出ていて、背中に冷たい汗が流れる。
「大丈夫。『人除け』などにより公園での出来事は誰一人として詳細を知らん。爆発音を聞いたとか、不思議な光を見たという人物はまだ出ておらん。それに、誰も私達がこのような事が出来るなど思いもしまい」
ひん曲がった鉄棒や敷地内に空いた穴は確かに人の手で出来る事とは到底思えない。
テレビでも犯人達が何らかの意図で重機を使った犯行と伝えている。
「学校じゃテレビ局の人にインタビューされたって人も居たわ」
委員長が湯気の立ち上る器を持って戻ってきた。
「関係者としては気が気じゃないな」
「ホントそう。学校でもその話題が出るたびに嫌な汗が出たわよ」
委員長から器を受け取ると口の中におかゆをかっ込む。
「熱ッ!」
「当り前よ! 気持は解るけど、ゆっくり食べなきゃ」
ゆっくり食べている暇はないが、口の中を火傷することを考えれば慌てて食べるわけにはいかない。
「……」
委員長がじっと俺がおかゆを食べるのを見つめている気がする。あ、そうか。
「うん、美味いよ委員長。なんだ、委員長も料理できるじゃないか。今度から委員長に料理作るの頼もうかな?」
お世辞じゃなく、確かにおかゆは上手い。俺が作ったおかゆと違って、ほんのりと下味が付いていて食べていて飽きない。
「ありがと。でも、やっぱり久遠寺君の料理には敵わないって」
照れたような笑みを浮かべる委員長。
「で、これからの事だが、フーコメリアを探さないことには始まらない。奴が何処にいるのか解らない以上街を駆け回って探すしかないだろうな」
「その心配はないと思うけどね」
『なっ!?』
すっとソファーにもたれかかるようにフーコメリアがそこに立っていた。
「フーコメリア貴様ッ!」
レンが咄嗟に飛び出し、フーコメリアへ掴み掛かろうとしたのだが、レンの手は空を切るだけだった。
「立体映像よ、私に掴み掛かろうとしても無駄、それに話の受け答えも出来ないわ。ただ、一方的にこちらが話すだけ」
俺達の行動をあらかじめ読んでいたのか、立体映像のフーコメリアはそう付け加える。
「これより一時間後、とある儀式を行うわ。場所は……」
ザザっとノイズが入ったようにフーコメリアの姿が歪む。途切れ途切れの声で場所を告げるとフーコメリアの姿が消えた。
「い、今のは一体なに?」
委員等が目を丸くして当りを見回す。少し顔色も悪い。それもそうだ、急に現れて目の前で消えれば誰だって驚く。心霊現象を目にしちまえば。
「くそッ!」
そう吐き捨てたレンは辺りを見回し始め、バタバタとリビング内を手当たりしだい荒らし始める。
「おい、何をしているんだ、レン!」
「あったぞ……」
リビングを荒らすレンを止めようと肩に手を伸ばしたとき、レンがピンポン玉ぐらいの大きさの球を手に乗せて振り返った。
「何だこれ?」
レンの手にあるピンポン玉のようなガラス玉を見て俺と委員長は首を傾げる。
「これは対となる同じ球に短時間だけ姿だけを映す事が出来るのだ」
「なんでこんなものが?」
委員長は信じれないと言った様子でレンの手にあるガラス玉を覗き込む。確かにレンの手の中にあるガラス球はただのガラス球のようで、短時間だけ離れた場所に映像を映すとかそんな事が出来るような代物には見えない。
「なにを考えているんだ、フーコメリアッ!」
レンはガラス玉をフローリングの地面に叩きつけた。床に傷が付いたかという事よりも、床にぶつかったガラス玉が粉々に割れ、破片が風で舞う砂のように姿を消した方に気を取られた。
「お前の誘いに乗ってやる、フーコメリア!」
レンはそう言うとレン達に貸している部屋の中に姿を消した。
「一体どうなってんの?」
状況をよく理解できてない俺と委員長は二人首を傾げるだけだった。
レンが部屋に消えてから数分後、おかゆを完食した俺の前に大きな袋を持ったレンが姿を現した。袋からは金属の一部と思われる部分が飛び出ていることから、おそらく中身は鎧だろう。
「奴が何を考えているのかわからない。わざわざこちらに居場所を教えに来るなど……」
「フーコメリアさんは公園の近くで何かをやろうとしているのよね?」
委員長がレンに問いかけると、レンは袋から鎧を取り出して一つ一つ状態を確認し始めながら応えた。
「でも、公園近辺って今警察以外立ち入り禁止になっていて、その付近で怪しげな事をしていたら目立つと思うんだけれど」
至極当然の事を言っている委員長だけど、俺はそうとは思えなかった。人除け……あれ一つでなんとかなってしまう、そう思えてならないんだ。
「魔法でどうにかするつもりなんだろう」
レンも俺と同じ事を考えているようだ。一人イマイチ魔法がどういうものか解っていない様子の委員長が唸る。
一時間後に何かを行うってフーコメリアは言っていたな。まだ時間はあるが、何か出来る事はないだろうか?
「……そわそわするなクキ、うっとおしい」
レンにそう言われ、空になった器を持って俺はしぶしぶキッチンへ向かった。
「あ、食べ終わった?」
鍋を前に何かを作っていた委員長が俺の手にある器を見て言った。
「おいしかったよ。で、何を作っているんだ?」
「カレーよ、カレー。まだ久遠寺君本調子じゃないでしょう? 晩御飯ぐらい用意しておかないとね」
委員長はそう言って小皿に作りたての一口分とって味見をして頷く。どうやら改心の出来の様だ。俺も味見をしようと手を伸ばすと、その手を軽く叩かれた。
「夜までのお楽しみよ」
「準備は出来たようだな、行くぞ、クキ」
キッチンから戻ると、俺の答えも聞かぬままレンは大股で玄関へ向け歩いてゆく。俺はまだ部屋着で出かける準備も出来ていない。
「ちょっと待て、俺はまだ何も準備出来ちゃいないっての!」
慌てて部屋着を脱ぎ棄てる。
「ちょっと久遠寺君、急に脱がないでよ!」
委員長が顔を手で覆い文句を言ってくるが聞いている暇はない。パンツ一枚で自分の部屋に飛び込むと素早くズボンとシャツを着て上着を手に持って外に飛び出した。
「なにをやっている、クキ!」
玄関先ではレンと委員長が俺を待っていてくれた。
「オーカ、どうしても付いて来るのか?」
レンが委員長に聞く。靴を履いている時に二人の話声が聞こえてきていたが、この事を話していたのか。
「当然よ、足手まといかもしれないけど、わたしにも出来る事があるはずよ」
委員長はレンの言葉に耳を貸す気はないようだ。
そんな委員長を見てレンは小さく笑う。
「クキといい、オーカといい、大馬鹿者ばかりだな」
レンは俺を見て小さく頷く。
「よし、急ごうか」
二人にそう言うと、俺達は公園へと向け駆け出した。
「ちょっと、嫌な予感がするんだけど……」
公園までもう少しと言うところで委員長が足を止める。
この感じは、『人除け』の感じだ。俺の中にも嫌な感覚は広がっているが、二回目ともなると最初のような戸惑いはない。
本当にこの先にフーコメリアは居るのかという疑問が頭にあったのだが、今は逆にこの先にフーコメリアが居るんだという確信へと変わっている。
「オーカ、これは『人除け』と言って、特定の場所から人を遠ざける魔法だ。今は辛いかもしれんが、じきに慣れる」
レンは委員長にそう言うと荷物を降ろし、袋の中から鎧を取り出し鎧を装着している。
「レン、こんなとこで目立つ格好になって良いのかよ?」
「構わん。この周辺には既に人の気配はない」
そう言われて辺りを見渡すと確かに人の気配はない。
遠くに公園の入り口が見えるが、公園の前にはキープアウトと書かれたロープが張っているだけで、警察官も報道陣の車やカメラもない。
「これが魔法なの?」
驚いた様子で委員長は辺りを見回す。
確かに家を出る前まではまだ公園の周辺には人が一杯居ただろうに、今では人の影はない。短時間でこんなにも人に影響を与えるものなのか、魔法は。
「恐らく、公園にフーコメリア達が居るだろう。クキにオーカはなにがあるか解らん。私から離れるなよ?」
すらりと鞘から剣を武器放つレン。太陽の光を浴びて白銀の刃が輝く。
「わ、解ったわ……」
気押された様子で委員長は頷く。
「さあ、行くぞ」
レンはそのまま足早に公園へと向け歩き始めるが、委員長の足は動かない。
「委員長、大丈夫か?」
「う、うん……行かなきゃいけないのは解ってるけど、足が動かないの」
俺も脚を動かし公園に向かうのには前回以上に勇気が必要だ。前以上に強力な『人除け』でもされているのだろうか。
「ほら、手」
委員長に手を差し出す。
動けない委員長を気遣ってと言う事もあるが、俺自身もこの先を一人で進むのは難しい。
「あ、ありがとう……」
委員長が戸惑いながらも俺の手を握る。
強く握ったら壊れてしまいそうな華奢な手が俺に進む勇気を与えてくれる。俺と委員長はゆっくりと公園へ向け足を動かし始めた。
レンよりも遅れて公園内に足を踏み入れると既にレンは金髪の男とフーコメリアと対峙していた。
「やはりクッキーも来たのね。桜花さんが居るのはちょっと予想外だけど。まぁいいわ。これで役者は揃ったわね」
フーコメリアは俺と委員長の姿を見て唇を緩めた。
「私はお前達の戯れに付き合う気はない。なにを企んでいるかは知らんが、今すぐにクキから奪った魔力をクキに魔力を返し、私達の居るべき世界に戻るぞ、フーコメリア。それに人間族の男も」
レンが剣をフーコメリア達に向け言い放つ。レンの言葉を聞いて金髪の男が肩を震わせて笑う。
「なにを言うかと思えばそんな事か。もう少しで僕は魔族も、精霊族にも、ほかの種族、いや、僕だけしか持つ事が出来ない大きな力を得る事が出来るんだ。この力さえあれば世界は思うがまま、それを諦めろだって? 馬鹿馬鹿しい!」
金髪の男はマントを翻し、両腕を広げると、地面から黒い塊のようなものがせりあがってきた。黒い塊の大きさは近くにある滑り台と同じぐらい。三メートルぐらいか。
「合成獣? いや、それにしては禍々しい気を纏っている……」
地面からせり上がって来た塊を見てレンが身構える。
「なにあれ……」
委員長も黒い塊を見て疑問を投げかけてくるが、俺にも解るはずがない。
「あとは魔力さえあれば……魔力をよこせ、フーコメリア!」
金髪の男がフーコメリアに叫ぶのと同時に、フーコメリアは唇を僅かに緩めた。
「ようやく餌に引っ掛かってくれたわね、レービン」
フーコメリアは黒い塊へ向け手を伸ばすと一気に四発の火の玉を出した。
「なにを……」
信じられないといった様子でフーコメリアの行動を見ている金髪の男。その背後では黒い塊に次々に火の玉がぶつかり、焦げ臭いにおいと共に黒い塊から獣の咆哮のようなものが聞こえてくる。
「ちょっと、あれ生き物だったの?」
「みたいだな……」
「一体どういう事なんだ?」
「やめろ、フーコメリア!」
俺や委員長はもちろん、レンに金髪の男すらフーコメリアの取った行動に驚いている。
フーコメリアはそれぞれが口にする疑問に答える事はなく、機械のように火の玉を出し続ける。
黒い塊は全身から黒い煙を立ち昇らせながら、小さく呻くとそのまま動かなくなる。
「ふう……流石に図体が大きいだけあって、頑丈だったわね。これだけ撃ち込まないと倒せないなんて予想以上だったわ」
息を荒げながらフーコメリアは仕事完了とばかりに髪をかき上げる。
「貴様……自分が何をしたか解っているのか、貴様は……」
金髪の男は背後で動かなくなった黒い塊に駆け寄り、瀕死の動物を撫でる様な手つきで塊に触れる。
フーコメリアは金髪の男には目もくれず、静かに俺達の元へと歩み寄って来る。
「……」
剣を構えていたレンが静かに剣を下ろす。
「……一体どういう事か説明してもらおうか」
剣は降ろしてはいるものの、返答次第では容赦はしない。そういった様子でフーコメリアに問いかける。
「私の目的のためにレンやクッキーを騙したことは申し訳なく思うわ」
「……」
レンは黙ったままフーコメリアの顔を見つめ続ける。
「レンはあれが何なのか解る?」
「なんなのかは解らんが、あれの放つ禍々しい気は感じた」
「委員長はどうだ?」
「わたしには全然。ただ気味が悪いとだけ」
俺が委員長に問いかけると委員長は首を振る。そりゃそうだ。俺達に解るわけがない。
「クッキー達には落ち着いて説明をするから今は少し静かにして貰えると嬉しいわね」
委員長と俺が口を挟むとややこしくなるらしい。フーコメリアに言われて俺と委員長は亀のように首をすくめて押し黙った。
「あれはあなたの祖父、レオ・クレックスが討ち滅ぼした魔王の魔力の残滓よ」
「なん……だと!?」
レンは瞳をかっと見開くと動かなくなった黒い塊を見つめる。
「ようやく一つ、この手で壊す事が出来たわ」
「……じゃあお前は初めからあれを葬ることを目的にしていたのか」
「ええ。その通りよ。私がこちらの世界に来たのは彼が手にしたアレを壊すことを目的にしているの。勿論魔族そのものの決定よ」
「では何故クキ達を巻き込む必要があった!」
レンがフーコメリアに詰め寄るとフーコメリアは申し訳なさそうに俺に一度視線を向け、すぐに逸らした。
「あれは最後に魔力を内に取り込むことで完成されるの。あれの命ともなる魔力は大きければ大きいほど、あれの力は強くなる。魔力の大きさで白羽の矢が立ったのが私。一度は彼に騙される形で誘いに乗ろうかと思ったけど、失敗すれば取り返しがつかない」
「それでお前と同等の魔力を持つという条件を満たしたのがクキで、クキの存在を利用し、奴に接近し、あれの破壊を狙っていたのか」
「ええ、そうよ。クッキーの魔力だってこれが終われば返すつもりだったわ」
レンは剣をフーコメリアの首元に付き突ける。
「お前に言いたい文句は数多くあるが、この場は剣を収めよう……」
フーコメリアの首元に剣を突き付けるレンを止めようとする前に、レンが自ら剣を鞘にしまう。
「なんだかよく解らんが、一件落着って事か?」
最初から最後まで置いてけぼり感が強いのだが、無事にフーコメリアの騒動は解決したのだろう。
「さーて、みんな帰ろうぜ、家に帰ってからはフーコメリアの説教会と説明会でもするかね」
流石にこのままハイ終了じゃ流石にワケわかんなすぎる。
「クッキー……」
フーコメリアは目を丸くし、少しして俺に微笑みかける。
微笑みを浮かべたのと同時にフーコメリアの身体がぐらつく。
「どうした、フーコ……」
名前を呼び掛けた途端、フーコメリアの片足に巻き付いている物が目に飛び込んでくる。
フーコメリアの片足には肉の塊のようなものがしっかりと巻き付いており、不気味に蠢いている。
まるで触手のようなものが伸びている先は動かなくなった黒い塊。
「このッ!」
レンは素早く剣を抜き放ち、フーコメリアの足に巻き付いている触手に剣を振り下ろすのだが、それよりも早くフーコメリアの身体が引っ張られてゆく。
「フーコメリアッ!」
「詰めが甘かったわね……」
咄嗟にフーコメリアに手を伸ばす。手には確かな感触。
掴んだ筈のフーコメリアの身体は一気に黒い塊の方まで引っ張られていった。
「なんで!?」
未だに感触の残る手を見ると、手には光輝く球が握られている。
「魔力さえあればこの程度の損害など、どうにでもなる! 最後の最後で詰めが甘かったな!」
先ほどの落ち込みようが嘘のように、金髪の男が高笑いをしている。
その背後ではフーコメリアが黒い塊に飲み込まれてゆく。
「フーコメリアッ!」
レンが黒い塊まで一気に距離を詰めるとフーコメリアに手を伸ばすが、レンの手がフーコメリアに届く前にフーコメリアは完全に黒い塊に飲み込まれる。
「このッ!」
剣でフーコメリアが飲み込まれた辺りを切り裂くのだが、フーコメリアの姿はない。
「もう無駄だ、これでようやく古の魔王と同等の力を持つ魔獣が完成したのだ!」
「ふざけるなッ!」
レンが叫ぶのと同時に、黒い塊から伸びた触手がレンの身体をなぎ払う。
「くッ!」
空中をレンの小さな身体が舞う。蹴り飛ばされた石ころのように地面を数度転がって俺の前でようやく止まった。
「レン、大丈夫か!?」
慌ててレンを抱き起こすと、レンの身に付けていた鎧の状態を見て言葉を失う。
たった一撃でレンの鎧は車がぶつかったガードレールのように陥没している。
「だ、大丈夫だ……油断した」
レンはそう言うが、苦しそうに呻く姿からしてまず大丈夫じゃない。
「クキとオーカは早くこの場から離れろ! お前達を守りながら戦うのは無理だ!」
俺の腕から立ち上がると、レンは再び黒い塊へと向けて駆け出す。
時が経つにつれ黒い塊は活発に動き出す。黒い色のスライムが蠢いているような光景だ。
レンを近づけまいとスライムからは無数の触手が伸び、レンの進行を阻む。
触手を避けながらレンは触手を一本、また一本と切り落としてゆく。
再びフーコメリアが飲み込まれた部分への道を切り開くと、レンはまた飛びついた。
「ぜぇぇいッ!」
渾身の力を込めてレンが剣を振り下ろす。一撃を受けてスライムが大きな咆哮を上げる。
柔らかい体で剣の一撃など効かないようなイメージとは裏腹に、レンの振るう一撃は確実にダメージを与えている。
「い、いけそうじゃない、これ……」
その場を離れる事を忘れて俺と委員長はその光景を見守る。
スライムが大きく身体を揺すりレンを振り落とそうとするが、レンはスライムの身体に剣を付き立てて凌ぐ。
「振り落とせ!」
金髪の男の指示を受けスライムは自身の身体に触手を打ち付ける。
「しまっ……」
触手の先がレンの足に絡みつき、レンを空中に放り投げる。
空中に投げ出され無防備な状態になったレンを別の触手が狙う。
「レンちゃん! 身体を少し右に捻って!」
委員長がレンに指示を出すと、咄嗟にレンはその指示に従った。
「ぐっ!」
咄嗟に身体を捻ったレンに触手が掠める。身体を捻らなければそのままレンは触手に真正面から叩かれていた。
「委員長?」
「ちょ、ちょっとした応用よ……まさか成功するとは思わなかったけど……」
委員長も驚いた表情で言った。咄嗟に未来を見て、見えた未来の形とちょっと違う状況を作って未来を変えたようだ。
「くそ……」
空中から地面に落ちたレンは立ち上がる。離れていてもレンの小さい肩が大きく上下しているのが解る。
更にレンを触手が襲う。レンは横に飛んで触手を避ける。
もう体力が残っていないのか、レンは触手を避けるので精一杯だ。
「あっ、レンちゃんの剣!」
不意に委員長が声を上げる。
よくレンの剣を見ると、中ほどからぽっきりと折れている。
「いつの間に……」
「きっと地面に落ちた時よ! ほら、あそこ!」
委員長がレンが先ほど地面に落ちた場所を指差す。そこには剣の切っ先が転がっている。
このままじゃヤバい。なんとか、なんとかしないと。
足りない頭をフル回転させて考えを巡らすが、いい方法なんて浮かぶはずがない。
なんだよ、俺……いざって時には何の役にも立ちやしない。ただ突っ立ってみているだけ。自分の不甲斐無さが今は本当に腹が立つ。
唇を強く噛みしめていると、手に熱い感覚が広がる。
驚いて手を見ると、フーコメリアに渡された俺の魔力の塊が光っている。
「なんだ?」
強くその球を握ってみると球はじわじわと俺の手の中に入って来る。
「く、久遠寺君、それ!」
委員長も異変に気が付いて、手に吸い込まれるようにして消えてゆく球を指差す。
「だ、大丈夫、何ともない!」
慌てる委員長を落ちつけようと手を振っているうちに、球はすべて俺の手の中に消えた。
「あ、あれ?」
「だ、大丈夫なの?」
委員長が駆け寄って来ると俺の手を覗き込んだ。
「なんか、身体が軽い?」
ずっと身体に残っていただるさが奇麗になくなった。
「レンちゃん!」
手に吸い込まれている球を気にしているうちに、レンは追い詰められている。
レンの動きはたどたどしく、避け続けていた触手が身体を掠めるようになっていて、気が付けば俺はレンに向かって駆け出した。
「くッ……」
触手を避けたレンの体勢が崩れる。その隙を見逃さないと触手がレンに迫る。
「あぶねえッ!」
ギリギリの所でレンの身体を掴むと、滑り台の裏に転がり込んだ。
「クキ……まだこの場に残っているのか、早く離れんか!」
眉を吊り上げてレンが怒鳴る。
「馬鹿、こんな状況で逃げられるかよ!」
レンは俺の言葉を聞くと表情を緩めた。
「それもそうか……お人好しだからなぁクキは……」
そう言ってレンは頭を下げた。
「すまん、結局私はお前をこんな危険に巻き込んでしまった。全ては私の力不足だ。やはり私は祖父のようにはなれんようだ。祖父ならばあのような化け物など簡単に倒せただろうに……」
傷付いてボロボロの状態のレンは肩を落とす。
「レンはずっと自分とじいさんを比べて自分の方が劣っていると思ってるみたいだけど、それは違う。レンは立派な女の子だ。じいさんにも負けてない。そのない胸張れよ」
俺はレンの頭を撫でながらはっきりと言った。レンは目を丸くして俺の顔を見つめている。
「そうか……そう思ってもらえるならば光栄だ。安心しろ、クキ。例え刺し違えてもあの化け物は私が倒す」
レンは折れた剣を強く握るとふらつきながらも立ち上がる。
「剣、折れてるじゃないか……他に武器はないのか?」
あの大きなスライムを折れた剣で倒すのは難しい。レンが他に武器を持っていない事を知りつつも、そんな事を聞いてしまう。
「残念ながら武器はこれだけだ。精霊剣を出そうにも肝心の精霊が姿を保てなくてはな」
精霊剣?
それを聞いて俺の頭にある案が思い浮かぶ。
「レン! 精霊剣って精霊の魔力を借りて剣を出すんだよな?」
「あぁ、そうだが……?」
急に精霊剣の事を聞き始める俺にレンは首を傾げる。
「魔力さえあれば、精霊剣は出せるんだろ?」
「そうだが……おい、まさか!」
俺の頭に浮かんだ案を理解したレンがぽかんと口を開ける。
「俺の中にも結構な魔力があるんだろ、それを使えば……」
そう、俺が精霊の代わりになれば、レンは新しい武器を手に出来る。しかも、精霊剣は今レンが持っている折れた剣よりも役に立つはずだ。
精霊剣があればスライムを倒せるかもしれない。
「馬鹿、お前の状態解っているか? 立っているのがやっとの状態なのに、それで精霊剣など出してみろ、確実に死ぬぞ!」
「いや、それがさっきフーコメリアから渡された、光る球が俺の中に吸い込まれてな、それから俺の体調は絶好調なんだ。だからいけると思う」
「思うって、予測でそんな事……」
「俺は大馬鹿者だからさ、考えて動くよりも、動いて考えるんだよ。だから、これもやってみてから考える!」
「クキ……」
レンは俺の目を見つめる。俺はレンから視線を逸らさず、心の中で俺の意思は固いと唱える。
俺の心の声が届いたのかレンは短いため息をひとつ。
「解った。どうなっても知らんぞ?」
レンはそう言って俺の胸に右手を添える。
「レン・クレックスの名の元に、クオンジクキの魔力を剣とせん。我の右手に宿るはクキの真っ直ぐな意志……」
目を瞑り、レンは静かに右手を握る。
「我が手に掴め、精霊剣ッ!」
レンは一気に右手を振り上げる。
レンの右手が身体から離れるのと同時に、一度味わった身体から力が抜けて行く感覚が甦る。
今回は力が抜けていくだけで意識までは遠くならない。
脱力した身体でレンを見ると、レンの右手には立派な、光輝く剣が握られていた。
「本当にできるとは……精霊以外で精霊剣を出したことはないのだが……」
レンはその場で空を斬る。
「これは……いつもの精霊剣よりも凄い……これがクキの魔力か」
「だ、大成功……」
レンに向けてブイサインを作るとレンは頷いた。
「少し借りるぞ、クキ」
精霊剣を手にレンは再び巨大なスライムへと向かって行った。
フラフラしながら立ち上がった時、委員長が俺の元に駆け寄ってきた。
「久遠寺君、大丈夫?」
委員長の肩を借りて何とか立ったままの姿勢で戦うレンの背中を見守った。
先ほどまでの動きの鈍さが嘘のように、レンの動きは機敏だ。
「精霊剣だと? 一体どうして?」
金髪の男はレンの持つ精霊剣を見て驚きを隠せないようだ。
「精霊剣を持った私を止められるものなら止めてみろ!」
木の葉を振り払うようにレンは触手を切り落としながら本体へ近付く。
「はッ!」
レンの一閃はスライムの身体に大きな傷を作ると、ぱっくりと切り開かれた部分からフーコメリアの顔が除く。
気を失っているのか陽の光が差し込んでも目を開けようとはしない。
「こんな所で……それ以上精霊族を近づけるな!」
金髪の男がそう叫ぶと今までとは比べ物にならない数の触手が本体から伸びる。
「数が増えた所で!」
レンは後ろに跳ぶと触手を片っ端から切り刻み始める。
「うぅ……ん」
フーコメリアは僅かに眉を寄せると、薄らと目を開けた。フーコメリアが意識を取り戻した為か、スライムの動きが若干鈍くなったように思える。
薄らと目を開けたフーコメリアと視線が交わる。ぱっくりと開かれた切り口が徐々に塞がってきている。
「……」
フーコメリアの口が微かに動く。それを見た俺は足もとに転がっていた物を手に駆け出していた。
「ちょっと、久遠寺君!?」
委員長が俺を止めるのよりも早く、一歩、また一歩とスライムへと近付く。やっぱりでけぇ。
「クキ!?」
触手を相手しているレンの傍をすり抜け更にスライムに近付く。
あと少し。
俺の視界の隅に何かが動くのが解った。頭を下げると、頭すれすれを太い触手が通り過ぎて行く。
あぶねぇ。よくレンはこんなもの避け続けていたな。
頭の中に触手を華麗に避け続けていたレンの姿が浮かび、同じものと向き合ってみてレンの実力を身をもって理解する。
「久遠寺君、右前注意!」
委員長の声を聞いて俺は走路を左側寄りに変えると、俺がさっきまで走っていた位置を触手が襲う。
「次、左上!」
体勢を出来るだけ低くしながら走ると、頭の上を触手が通り抜ける。
「下、跳んで!」
そのままの加速でジャンプするとようやくスライムに取り付く事が出来た。
委員長、グッジョブ!
「フーコメリア……呼んだろ、俺を」
顔を近づけてフーコメリアに話し掛ける。微かに動いた口は確かに俺の名前を呼んだ。『クッキー』って。
「クッキー……」
フーコメリアは意識が朦朧とするのか、焦点の定まらない目で俺を見ている。
「フーコメリア、お前はどうしてほしい?」
「……」
フーコメリアの目が大きく見開かれる。
「大丈夫、何とかなる。いや、俺が何とかするから、そんな顔するなよな」
閉じかけている切り口に折れたレンの剣を付き立てると全体重を掛けて切り開く。
「貴様、何を!」
触手が背後から唸りを上げて近付いてくる。あともう少し……。
「させん!」
ヒュンっと風切り音が聞こえると迫っていた触手の気配が消える。
もう少し……。
「捕まえた!」
フーコメリアの右手を掴むと力の限りフーコメリアの身体を引っ張り出す。
頭の中で馬の出産シーンが思い浮かぶなんて、俺はこんな状態でも余計な考えは捨てられないんだな。
「フーコメリア、大丈夫か?」
「ええ……大丈夫よ」
「いったん離れるぞ、クキ、フーコメリア!」
フーコメリアを連れ委員長が居る場所まで駆ける。
「久遠寺君、なにやってるのよ!」
フーコメリアを連れて戻った俺に委員長は鬼のような形相で詰め寄る。
「いや、その……」
「お叱りは後、今はあれを何とかしましょう?」
委員長の剣幕に呑まれ、しどろもどろになる俺をフーコメリアが庇う。
助かった。サンキュ、フーコメリア。
「って……ちょいちょいちょーい! きわどいでしょ、ヤバいでしょ!」
改めてフーコメリアに視線を向けると、フーコメリアの服は所々が破れているというか、溶けているというか、とにかく健全な男児には非常に直視し難い恰好だ。
「久遠寺君、視線逸らす努力とかまったく感じられない!」
委員長が俺の頭に手を添えると合図もなしに頭を右に無理矢理向ける。
「首、首ッ!」
絶対に筋痛めた。しょうがないじゃないか。この光景から目を逸らせる男は存在しないさ。
委員長に色々と言い訳をしたかったのだが、そんな事を言っている場合じゃない。
フーコメリアに上着を手渡すと、スライムへと視線を向ける。
「終わりよ、レービン。あなたの計画は」
フーコメリアがスライムへと手をかざす。
触手を使って身を守ろうとするスライムだが、レンがその触手を切り落とす。
フーコメリアが放った火球はスライムを飲み込み、大きな火柱を上げる。
「そんな、僕の、僕の……」
放心状態でその場に膝をつく金髪の男。
そして俺は今まで疑問だった事を口にする。
「……レービンって誰?」
「うーん、なにか夢でも見ていた気分よね」
「なにを急に?」
帰宅途中、委員長がぽつりと漏らした言葉に首を傾げ、聞き返す。
「ほら、フーコメリアさんやレンちゃんの事よ」
二人の名前を聞いてようやく委員長が言っている意味が解った。
「確かに……」
そう答えると、日曜日の出来事を思い出した。
スライムを倒してから、公園に見るからに怪しいゲートが出現し、そこからフーコメリアと同じ格好をした人達が続々と現れた。
現れた人達はフーコメリアと軽く言葉を交わすと、スライムの残骸回収やら放心状態の金髪の男……レービンを捕らえたりと手際よく作業を始めた。
俺にも言葉を掛けられたのだが、これまでの疲れがどっと出て、なにを言われたから薄らとしか覚えていない。確か感謝の言葉みたいなのを言われたような気がする。
そして、公園の後処理を魔族の人たちに任せ、俺達は家に戻った。
家に帰り付いてからフーコメリアから改めて説明を受けたのだが、もうそんな事はどうでもよかった。
フーコメリアがこの世界に来た理由は、追われているんじゃなくって、スライムみたいなのを破壊するためだとか。
俺の魔力を奪った理由はレービンにスライムみたいなのを出させるためだったとか。
俺としては過ぎたこと、終わったこと。それについて文句を言う気も起きなかった。
そしてスライムを倒した翌日、フーコメリア達はこれ以上こちらの世界に居る理由がなくなり、自分達の世界へと帰って行った。
フーコメリアはやはり俺達を騙していたという後ろめたさがあってか、何度も俺と委員長に謝っていた。
レンは口では「こんなけったいな世界から自分の世界にようやく帰れると」強がっていたが、目に鼻水を溜めていた。涙ではなく鼻水。本人がそう言ったのだからそういう事にしておこう。
十日間ちょっと一緒に生活をしていた奴らが居なくなるのは寂しいものがあるとは思うが、俺と委員長はその寂しさに浸れるような状況ではなかった。
スライムと戦った事が原因で、公園は更に荒れ果ててしまっていた。
二度も荒らされた公園は報道局の格好のターゲットとなり数日に渡って世間を騒がせた。
もっとも、フーコメリアが予め掛けておいた『人除け』の魔法と、音を外に漏らさないようにする魔法に、ゲートから現れた魔族の人たちの後処理によって、報道を見た人が悪戯のつもりでさらに公園を荒らしたという事になっていたが。
ニュースで公園の事が報道されるたび、俺達が関係者である事がばれるなんてないのだが、俺と委員長は早くこの事を世間が忘れてくれないものかと願ったものだ。
俺達の願いが通じたのか、芸能人の起こしたスキャンダルやスポーツ選手の快挙達成、国会議員の不適切発言など次々に世間が注目しそうな出来事が次々と起こり、いつの間にか事件は真相不明のまま風化し、テレビで公園のニュースが報道される事がなくなった。
「ようやくテレビから公園のニュースが消えて正直ホッとしているわ」
心底安心したように息を吐く委員長。その気持は俺も同じだ。
荒らされた公園も先日から業者が入り元の公園に戻すよう作業が始まったらしい。
これでようやくフーコメリア達の一件が片付いた事になるだろう。
「公園の事が終わったのはいいけどさ、今になってちょっと飯の時とかすっげえ寂しい事に気が付いた」
「あ、やっぱり? 最近の久遠寺君はちょっと暗かったからそうじゃないかなーって思ってた」
委員長にも指摘される。昼休みには岸枝にも心配されていたし、そんなに解り易く俺は落ち込んでいたのだろうか。
「でも、今考えてみると、ずっとわたし達はフーコメリアさんの手の平で踊っていた事になるのよねぇ」
「そうなるな。ま、一番の被害者はレンじゃないか?」
「そうね、一番の被害者はレンちゃん……いや、公園じゃない?」
「その話をまたぶり返しますか。頑張って考えないようにしているのに」
委員長は俺の答えを聞いて笑う。
確かに全てフーコメリアの手の平で踊っていた事になる。しかし、もう少し俺達が疑い深く今回の事を考えていたのなら、フーコメリアの考えは聞き出せていたのかもしれない。
俺達はフーコメリアの手の平から抜け出せる状況ではあったが抜け出そうとしなかった。ただ、それだけだ。
そう考えるとやはり一番の被害者は公園だろうな。被害『者』と言っていいのかは微妙なところだが。
レンやフーコメリアの事について話しながら帰っていると、いつの間にか家の前まで来ている事に気が付いた。
「もう帰り着いたのか……早いな」
「そうね、あっという間だったわね」
誰かと一緒に話しながら帰っていたら、そう遠くない学校から家までの道が更に遠くないように思える。歩いている距離は一緒なんだけどな。
「だーな。さってと、今日は晩飯なににしようかな?」
唐突に今日の晩飯の事を考え始める。
フーコメリア達が居た時はどんな料理を今日は作ろうかと授業中とかに考えていたのだが、その必要がなくなった今、家に帰り着いて考える事が多い。
「食事の席が一人で寂しいってならお呼ばれしてあげるけど?」
「俺は別に構わんが……委員長が晩飯に来るのも久々だな」
学校で話したり時々一緒に帰ったりはするが、騒動が解決し俺から危険がなくなった事で委員長もフーコメリア達が居た時のように俺の家に来る事は少なくなっていた。
「ちょっと気合入れて作んないとな」
肩を回して気合い十分と委員長にアピールし、ポケットの中から家の鍵を取り出す。
「気合い入っているわね、これは期待してもいいかな?」
勿論と委員長に元気よく答え、部屋の扉に手を掛ける。
「あっ……」
委員長が声を上げた気がするが、呼び止められなかったし、俺とは関係のない事を思い出したんだろう。提出日の近い課題とか。委員長は真面目だね。
玄関に入っていつもとはどこか違う違和感を覚える。
違和感の元はリビング。誰も居るはずのないリビングに人の気配がする。
突発的に親父が帰って来たのだろうか? だとすれば、ちょっと多めに料理作らなきゃな。材料は足りるか?
そんな事を考えながらリビングへ向かうと、俺は自分の目を疑った。
「お帰り、クッキー」
ソファーに座り、雑誌を読んでいた人物が顔を上げる。
「ふっ、フーコメリア……なんで!?」
リビングに居た人物はフーコメリア。あの長い耳、他の誰かと見間違えるはずもない。
「あれ? 言ってなかったっけ?」
どうしてそんなに驚くのかと言いたげな表情を浮かべ、フーコメリアが口を開くと、玄関のチャイムが鳴り、扉が開かれる。
出迎えを待たずに扉を開けるなんて、チャイムを押した意味ねぇじゃん。
「一体どういう事だ、フーコメリア! ここに居るんだろう!」
玄関先から聞き覚えのある声。
けたたましい足音と共に背の小さい人物がリビングに顔を出す。
「レンまで……どーなってんだ?」
フーコメリアとレンの姿をじっと見る。
俺の視線に気が付いたレンが大慌てで玄関に戻っていった。あの野郎、土足で上がっていやがったな……。
「フーコメリア、どうしたんだ、帰ったんじゃ……」
「ええ。一連の騒動が終わったと報告に戻ったわ。でも、二度と戻って来ないなんて言ったかしら?」
別れ際に交わした言葉を思い出す。二度と戻って来ないとは口にしてないが、戻って来ると口にした記憶はない。
「いや、雰囲気的にあれが今生の別れみたいな感じだったしさ……」
「そうだったかしら?」
大した事はないという様子でフーコメリアが言うと、玄関で靴を脱ぎ終えたレンがバタバタとリビングに戻って来る。
「魔族の長から連絡があった。フーコメリアはこちらの世界に向かったと……お前、次は何を企んでいるのだ!」
「企むだなんて人聞きの悪い。私はこの世界でやるべき事があるから戻って来たのよ」
『やるべき事?』
俺とレンはハミングしフーコメリアに問う。
「この世界の技術はすばらしい。この世界の技術と魔法を合わせることが出来れば、生活は大きく発展するわ。私は魔族の決定でこちらの世界で研究を行うことになったのよ。それにまだ、クッキーに一つも恩返し出来てないもの。だからレン、今回は私の我儘。なーんにも心配はないから、私達の世界に帰って良いわよ」
レンを挑発するようにフーコメリアが言うと、レンは顔を真っ赤にする。
「おまっ……くうぅっ、そんな事の為にまた私を巻き込んだのかぁ!」
「はぁ……またって。レンもこちらの世界のこと気に入ってたようだしね、口実を作ってあげたほうなのに……」
上機嫌な様子でフーコメリアはレンを追い払うように手を振ると、満面の笑みを浮かべて俺に腕を絡めてくる。
「こら、離れんか! お前は魔術の研究に来たのだろうが、それではクキに会いたいが為に来たとしか思えないぞ!」
「それもあるわね」
「えぇい、お前がそのつもりなら私もこちらの世界でやるべきことをする!」
「その身なりで?」
フーコメリアはレンを指差して言う。
よくよく見ると、リビングの片隅には移住する気満々といった様子の荷物が大量にある。対するレンはどこをどう見ても身体一つ。
「ぬぁぁぁっ! フーコメリア、謀ったなぁぁぁ!」
「謀ってないわよ……」
呆れた様子で溜息をつくフーコメリア。
その時、ベランダ側の扉が勢いよく開かれた。
「久遠寺君! 今、何故かフーコメリアさん達が居るって未来が見え……もう既に居る!?」
ベランダからは委員長が乱入。
最近は静かだった202号室がまた騒がしくなる。
自分自身の頬が緩んでいる事に気が付いた俺は慌てて表情を引き締める。
「理由なんてどうでもいいさ。二人がまたこっちの世界で暮らすって言うんなら俺は手を貸すよ」
俺の台詞を聞いて三人の表情が緩む。変な事言ったか、俺?
「そう言うとは思っていたがな……」
レンはやれやれとばかりに首を振る。
「流石クッキーね」
フーコメリアは微笑みを浮かべて一人頷く。
「あぁ……もう、久遠寺君……」
呆れ気味に額に手を当てて呟く委員長。
「言いたい事があるならはっきり言ってくれよ」
「クッキーは『東小松市一のお人好し』ね」
「クキは『東小松市一のお人好し』だな」
「久遠寺君は『東小松市一のお人好し』なんだから」
フーコメリア、レン、委員長は満面の笑みを浮かべてそう言った。
なんだよ、三人して……まぁ、否定はできないけどな。
東小松市一のお人よし! これにて終了です。
フーコメリアをメインで書いたはずのこの物語、気が付けばレンが全てを持っていくというトホホな展開に。
まぁ、書いてて楽しいキャラであったし、しょうがないかなとも思いつつ。
この四人の物語はひとまずこれで終了です。機会あればまた続きとして何か書くかも知れません。
最後に、読了ありがとうございます。
昔に比べ時間が取れないことも多くなりましたが、亀の如き歩みでがんばっていきます。