表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真赭の一族 天使への復讐  作者: 時任雪緒
2 運命の出会い
6/8

2-2

「実はあたし凄くテンパってたんですぅ」

「……そうか。道理で小説の話なんぞが出てくるわけだ」

「本当ですよねぇ、あたしも何言ってんだろって思いましたもんアハハ」

 魅霞は笑っているが、ダニエルの方はと言うと、コイツは本当に大丈夫なのか、と訝しそうにしている。 それに気付いた魅霞がやはり笑って言う。

「だぁいじょぉぶですよぉ。バレないようにしますってぇ」

 魅霞は自信満々だ。一応根拠はある。「諦観者の箱庭」は犯罪者及び予備軍の溜まり場なのだが、その為か変わり者が多い。多少の奇行は無視してくれるのがこの町の特徴だ。

 ついでだが縄張り意識も強い。強盗なんかに襲われて「助けて!」と叫んだら被害が増大するだけだが、「コイツΛラムダ区のスパイだ!」と叫べば助けてもらえる。ちなみに 魅霞が老婆と暮らしていたアパートはΔデルタ地区で、ダニエルの棲みかはΕイプシロン地区だ。

 なにより魅霞が最も驚いたのは、ダニエルの棲みかだ。何度も足を運んだ、箱庭の住人達が全幅の信頼を寄せる医者の家だった。ちなみに闇医者だ。

 どういう事か尋ねてみると、食料の調達の為らしい。

「あそっか!病院なら輸血用の血液が手に入りますもんね!」

 手を叩いてそう言うと、ダニエルは溜息を吐いた。

「いや、輸血用の血液を飲んでも何もならない。必要ではあるけど、人が水を飲む事と変わりはない」

 栄養源にはならない、と言うことのようだ。

 となると、疑問が浮かぶ。老婆も彼自身も吸血鬼だと言ったのに、血を飲まないとは矛盾している。首を捻っているとダニエルが言った。

「魅霞は本当に僕の仲間になりたいのか」

「はい」

 そう言ったし、その理由も説明した。 尚もダニエルは確認を重ねた。

「覚悟が必要だ」

「わかってます」

「定住はできないし、僕の仲間になったところで殺人の罪は消えない。それどころか増える一方だ。君にそれが背負えるのか?」

「……はい」

 少し答えに詰まったが、頷いた。

 魅霞の返答を聞き、ダニエルはやはり溜め息を吐いた。

「そうか、ならば教えてあげよう。我々『副産物』の血を引くなら、必要なことだ」

 ダニエルが語る、「副産物」と揶揄された所以。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ