何とも不思議な組み合わせ?
「……うわぁ、めっちゃ久しぶり! 弥夢さんは?」
「……はい、僕もそれなりにご無沙汰ですね。中学の時に友達と行ったきりで」
「……友達、ねぇ。それって、男の人?」
「……? はい、そうですけど……」
「……うん、だったらいいけど……」
「……?」
数日後、休日の昼下がりにて。
大きなスクリーンが設置されたお部屋にて、楽しそうに声を上げる可憐な少女。だけど、途中から怪しむような目で僕を……えっと、どうしたんだろ?
ともあれ、今いるのは商店街のカラオケ――恐縮ながら僕がコーチを務めているお相手たる中学二年生の美少女、三神望夢さんと二人で来ているわけでして。……うん、未だにびっくりです。
『――えっ、明日休みになったの!? じゃあ、どっか遊びに行こ!』
昨日の夜のこと。
コーチのお仕事を終えた後、しばし交わしていた会話の中でそう口にする三神さん。この翌日――つまり今日は彼女にとって数少ない部活がお休みの日に当たるんだけど――僕の勤務先たる『湖月』にて予定外の設備点検が行われることになり、なんと僕も急遽バイトがお休みになってしまって。
そういうわけで、二人ともお休みということに。そして、だったら折角の機会だし一緒に遊びに行こうというお話になって。
もちろん、いつも練習でお疲れだろうし思いっ切り羽を伸ばしてほしい。なので、彼女が遊びに行くこと自体は大いに賛成なのだけども……でも、一緒に行くその相手が果たして僕がいいのかというお話でして。学校の友達とかの方がいいんじゃ……なんて、そんな懸念を口にしてみると――
『……へぇ、そうなんだ。そんなに私と遊びに行くのが嫌なんだ、弥夢さんは。だったら、無理にとは言わないけど』
……とまあ、こんな具体にありありと不服を湛え仰る三神さん。……いや、僕が嫌なわけでは全然なくて……うん、貴女がよろしいのであれば是非とも。
そういうわけで、何とも不思議な組み合わせにてカラオケに来ているのだけども――
「……ところで、三神さん。今更ではありますが、ほんとによろしいのでしょうか?」
「ん、何が?」
「ほら、この辺りって相明の近くですよね? だとすれば、学校のお知り合い――例えば、バレー部のお仲間やご友人に出会して可能性も皆無とは言えないかと……」
そう、懸念を口にする。一緒に遊びに来たはいいものの、この辺りは彼女の通う相明中学のほど近く――なので、同じ学校の生徒が来ても何ら不思議ではなく。……となると、ばったり顔を合わせてしまう可能性も皆無とは――
(……うん、それならむしろ……)
「……ん?」
「ううん、何にも。まあ、別にバレたからって何かしらの支障があるわけでもないし。恋愛禁止、なんて規則もないからどう思われても何の問題もないし。……それとも、弥夢さんが嫌なの? 誰かに見られるのが」
「あっ、いえ! その、三神さんがお気になさらないのであれば……」
懸念を抱き尋ねてみるも、まるで気にした様子もない三神さん。いや、どころか逆に懸念を抱かれてしまったようで……うん、ごめんなさい。
……ところで、それはそれとして。
「……あの、三神さん。その、もしかして僕、なにかお気に障ることをしてしまいました?」
「……いや、なんで? 何にもしてないよね? ……まあ、そうやって気持ちを察してくれるのはもちろん嬉しいけど……でも、機嫌が悪かったら自分のせい、っていうのは悪い癖っていうか、ある意味思い上がりだと思うよ?」
「……まあ、そう言われれば……」
そう、おずおずと尋ねてみる。すると、少し呆れたように答える三神さん。……まあ、そう言われてしまえば返す言葉もないんだけども。
「……まあ、機嫌が悪い、とまでは言いすぎたかもしれないけど……でも、ちょっと不満かな。ほら、今日は休日だからこの時間でもお客さんは多いはず。そして、私達は二人……だったら、こんな広い部屋っておかしくない? お店側にもメリットないと思うし」
「……えっと……なるほど……?」
すると、言葉の通りちょっと……いや、なかなかにご不満な様子でそう口にする三神さん。一方、そんな彼女に少し戸惑ってしまう僕。……えっと、そんなにおかしいかな? 確かに、本来ならこういうお部屋は大人数のお客さん用に空けておきたいところだろうけど、僕らのように少人数のお客さんが来た時に偶然こういうお部屋しか空いていない、という状況も普通にあると思うのでさほど不思議では……まあ、推測を敢えて口にするほど空気を読めないこともないけど。
……あと、そもそものところ彼女が不満に思う理由もないと思うんだけど……ひょっとして、狭い方がお好きなのかな?




