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どういうわけか、この度バレー部エース(美少女)の専属コーチになりまして。  作者: 暦海


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賑やかな教室で

「――ねえねえ、見た? 昨日のバレー」

「ああ、すごかったよな。途中までめっちゃ追い込まれてたのに、終盤に一気に逆転してさ!」



 京都府の公立校、明陽めいよう高校――その三階に在する二年五組の教室にて。

 朝のホームルーム前にて、真ん中の辺りで談笑する数人の男女生徒。うん、朝から楽しそうで何よりです。

 さて、その話題は……まあ、改めて確認するまでもないよね。昨夜行われていた、バレーの女子日本代表の試合のことだろう。僕もスポーツニュースでチラと見たけど、今の会話にもあったように劇的な逆転勝利だったようで。

 ……うん、以前の僕なら見てただろうし、みんなと喜びを分かち合えて……いや、それはどうだろう。基本コミュ障の僕が――それも、いわゆるトップグループに属する陽キャラの皆さんの輪に入れたとも思えないし。



「――あっ、蒼那あおな! ねえねえ、すごかったよね昨日の試合!」

「……ええ、そうですね斎藤さいとうさん。私などが烏滸おこがましいとは思いますが、バレー部として見習わなくてはと身が引き締まる思いで見ていました」

「ううん、烏滸がましくなんてないよ! 蒼那ならいつかあのすごい人達みたいになれるよ! そしていつかはオリンピックだね!」

「そうだよ東藤とうどう! お前なら日本のエースにだってなれるよ!」

「……それは、あまりにも評価が過ぎるというものですが……ですが、ありがとうごさいます斎藤さいとうさん、山崎やまざきくん」


 その後、悠然と教室に入ってきた女子生徒へ話しかけるトップグループの生徒達。本日も、きっとさっきまで朝練で汗を……うん、本当にお疲れさまです。



 さて、彼女は東藤蒼那さん――トップグループとはまた違う立ち位置だけど、当クラスにおいてひときわ目立つ鮮やかな黒髪の見目麗しき女子生徒で。いや、クラスのみならず学年……いや、きっと校内においても知ってる人は少なくないかなと。そして、それほどに有名な理由はその端麗な容姿にもあると思うけど――彼女の所属するバレー部での多大なる功績も決して関係がないはずはなくて。


 というのも、創設60年ほどのここ明陽高校におけるバレー部の歴代記録は府内で16位――それも、創設当初くらいの昔の記録で、それ以降はずっと1、2回戦での敗退が続いているとのこと。なので、申し訳ないけどお世辞にも強豪とは言えないかなと。


 ――だけど、去年の夏、当校の歴史を揺るがす革命が起きた。なんと、府内4位――そして、その革命の立役者となったのが、当時一年生で既にエースだった東藤蒼那さんその人で。……うん、ほんとすごいなぁ。

 




 ――それから、しばし経過して。



「――今、少しだけお時間いいですか? 弥夢ひろむくん」



 その日の放課後のこと。

 昇降口へ向かい廊下を歩いていると、ふと後方から凛とした声が背中に届く。まあ、誰かなんて確認する必要もないんだけど……うん、ちょうど良かったかも。そういうわけで――

 


「……その、すみません蒼那さん」

「……それは、何の謝罪ですか?」

「……その、今朝のことです。少し、話しづらそうにしてましたけど……僕がいたから、気を遣ってくれたのでしょう?」

「……別に、そんなことは……」


 そう、身体ごと振り返り謝意を告げる。……いや、随分と今更ではあるのだけども……でも、他の生徒のいないところで、となるとなかなかタイミングがなくて……いや、まあ生徒ひとのいるところじゃ駄目なわけでもないんだけど。……ともあれ、用件は恐らく――



「……それより、考えてくれましたか? もう何度も聞いていて、しつこいと自認してはいますが」

「あっ、いえそんなことは! ……ですが、申し訳ありません蒼那さん。僕は、やっぱり……その、バイトもありますので……」

「……まあ、そうですよね。もちろん、私も無理にとは言えません。ですが……それでも、私は本気ですから」


 その後、そう言って悠然と背を向け去っていく蒼那さん。……まあ、そのことですよね。こうして呼び止めてまだ僕に話すことなんて他にないだろうし。


 ……いや、これにしたって僕に話すことでもないと思うけど。正直、意思がどうこう以前に僕にその役目が務まるとも思えないし。


 


 




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