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【ガチャ】が運命る異世界生活  作者: マネキ・猫二郎
第一章『スタートライン』
2/5

第二話『前進』

 今日引ける『食事ガチャ』はあと二回。

 

 一回目に提供されたのは、大ハズレの『激苦ドリンク』だった。常温ドロドロの液体で、喉の渇きが満たされる訳でもないそれは、罰ゲームでしかなかった。



 「これを回したら食べ物が出るんだね!」



 期待の目でガチャ機を見つめるシエル。

 当たりハズレがあることや、時計回りにハンドルを回すことなど、ガチャについては大まかに教えてある。



 「引いてみます?」

 「引いてみよう!」



 彼女はレバーに手を伸ばす。ガチャを引くのが初めてな彼女からは、ワクワク感が見て取れる。


 微笑ましい光景だが、しかし不安もあった。大ハズレを引いた場合だ。彼女にとって苦い思い出にならないよう願うばかり。自分が引く時よりも緊張する。



 「回ったよ!」



 興奮の表情で、俺を真っ直ぐ見ながら言う。

 回転が少なく、まだカプセルが落ちていない。



 「もうちょっと」



 声色を柔らかくして言うと、彼女は再びガチャに見向き、さらにハンドルを回す。そしてついに、ゴロンと音をたて、カプセルが落下した。

 

 またもや彼女は俺の方へ、輝きの眼差しを向ける。俺が頷くと、彼女は少し不器用にカプセルを取り出した。色は黒だ。



 「当たりかな?」

 「開けてみて」



 シエルは「ふんっ!」と声を漏らしながら、力づくでカプセルを開ける。カポッと開くと、中には安っぽい紙が入っており、そこに書かれていたのは──……



 「『唐揚げ定食』!」



 シエルが読み上げると、目の前に唐揚げ定食が現れた。唐揚げ・白米・味噌汁の三点セット。



 「当たりだ!」



 思わず声を挙げると、シエルも嬉しそうに「当たりだよ!」と喜ぶ。


 

 「「イェーイ!」」


 

 ハイタッチを交わし、笑い声が溢れる。

 幸せに包まれる小屋であった。

 


 〇

 


 「よし、俺も引こう」

 「頑張れー!」



 一日三回の『食事ガチャ』。

 今日はひとまずラストチャレンジだ。


 一回目は『大ハズレ』だったが、二回目は『当たり』。『ハズレ』でもマトモな料理が一品提供されるから、『大ハズレ』さえ引かなければ問題ない。


 シエルは俺が食事を手に入れるまで、唐揚げ定食に手をつけずに待ってくれている。ホカホカのご飯が冷める前に引くべく、早々に覚悟を決めた。


 指を軽くほぐしてから、ハンドルを回す。

 カプセルが落ちる。色は青。

 結果は──……『ナン』



 「なん?」



 読み上げると、目の前にナンが提供される。もちろんトッピングはない。プレーンのナンだ。

 意外な品に驚きつつも、ひとまずは安心する。



 「それ当たり?」

 「うん、当たり」

 「良かったねシンヤ!」

 「ありがとうシエル」


 

 実際は『ハズレ』に位置するが、普通の食事なだけでも十分『当たり』だ。



 「それじゃあいただきまーす」



 ナンを作った人に感謝をして、頬張る。

 やはりトッピングがないのは寂しいが、香ばしくて美味しい。

 と、シエルがこちらを見つめていることに気づく。


 

 「『イタダキマス』ってなぁに?」

 「……!」



 会話が出来ていたから特に気にしていなかったが、俺と彼女とでは、文化に違いがあるらしい。



 「食材や料理を作った人に感謝を表す言葉だよ」



 説明すると、シエルは理解したのかポンと手を叩いてから、「イタダキマス!」と不慣れながらも感謝をし、カトラリーを手に取った。


 白米と味噌汁はスプーンで、唐揚げはフォークで食べている。というのも、定食と共に出てきたからだ。箸は現れなかったので、おそらく彼女の生まれ故郷の食文化に合わせて──……



 「これなに?」



 シエルの故郷について思案していると、彼女が味噌汁を指さして、その名前を尋ねる。


 

 「それは味噌汁」

 「ミソシル好き!」

 「そりゃ良かった。俺の故郷、『日本』の料理なんだ」

 「聞いた事ない国だ〜!」



 改めて異世界に来たことを実感させられる。



 「ところでシエルはどこで生まれたんだ?」

 「『ウィミングス王国』だよ」



 聞いたことがない。やはり彼女は異世界の住人ということで間違いなさそうだ。問題はその先、シエル視点ではどういう風にしてここに辿り着いたか、だ。

 

 まさか俺みたいに強制的に転移させられたんじゃ。その場合、まずは彼女を故郷に送り届けるのが優先となるが……。

 

 人恋しさから考え無しに彼女を召喚したことを悔いた。



 「ミソシルいる?」

 「……?」



 突然の提案。



 「貰ってもいいのか?」

 「故郷の味だよ」

 「──!」



 そこにどんな意図があるのかは分からなかった。気づかず不安を表情に出してしまっていた俺を、慰めようとしたのか。それともやはり、何の意図もないのか。


 なんにせよ俺は、もう二度と戻れないかもしれない故郷の味を欲しがっていた。



 「じゃあ、いただきます」

 「イタダキマスだね!」



 味噌汁を飲む。飲む。飲む。全部飲み干して、深く息をつく。目頭が熱くなり、泣きそうな喉元が痛む。けれど泣いちゃいけない。泣いたら楽しい雰囲気がダメになる。



 「どうしたのシンヤ」

 「いや、なんでもない。ありがとう」



 俺はシエルを見つめ、微笑みながらグッドポーズをした。すると彼女も微笑んでグッドポーズをした。


 彼女も楽しそうだし、今日のところは、難しい話はやめにしよう。



 「ちなみに唐揚げはどうだ?」

 「美味(びみ)!」

 


 〇



 「さて、腹ごしらえもしたし、歩きますか!」

 「冒険だー!」



 小屋から出て、辺りを見渡す。

 来た時と打って変わらず何にもない草原で、町も人もモンスターも見当たらない。



 「ここどーこだ!」

 「わかんない!」

 「俺もわかんない!」

 「致命的だねシンヤ!」

 「確かに致命的だ。が、しかし、心配することはないぞシエル」

 「もしかしてガチャの出番?」

 「いいや……まあでも、ある意味これもガチャだな」



 俺はその辺に落ちていた木の棒を拾って、地面に突き立てる。手を離すと、ストンと前に倒れた。



 「この棒の倒れた先が、俺たちのゆくべき道だよシエル」

 「なるほど!」

 「これを度々繰り返せば、神様が正しい方へ導いてくれるのさ」

 「さっすが神様!」

 「そうと分かったら前進だ! 行くぞシエル!」

 「合点!」



 楽しい旅の一歩だあぁ──……と、危ない危ない。忘れるところであった。



 「えーと」



 ステータス画面から『もちもの』を開き、『小屋(木製)』と表示されている部分をタップする。すると、【収納しますか?】という質問が投げかけられたので『はい』を選択した。


 瞬間、小屋は消えた。さっきまで小屋があった草むらには、キーホルダーの形でミニチュア化した『小屋(木造)』が落ちてあった。それをパジャマのポケットに突っ込んで……。



 「これで完璧だ! 行くぞシエル!」

 「出発進行だー!」



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