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【ガチャ】が運命る異世界生活  作者: マネキ・猫二郎
第一章『スタートライン』
1/5

第一話『初めてのガチャ』

 俺の名前は『七原(ななはら) 慎也(しんや)』。

 ありふれた十七歳の高校生だ。


 ある日、睡眠から目を覚ますと、眼前に女神がいた。「魔王を討伐してほしい」そう言うと彼女は、有無を言わせず、俺に『ガチャ』スキルを授けて異世界へ転移させた。


 以上、俺が異世界転移した事の顛末である。



 〇



 転移直後、自身のステータス欄を見れることに気づき、早速いろんな部分を見た。



 ▲▽▲▽

 

 ──概要──

 名前:七原 慎也

 年齢:17歳

  Lv:1

 能力:ガチャ


 ──装備──

 武器:なし

  盾:なし

 衣装:パジャマ


 ──ステータス──

 攻撃力:14

 防御力:15

 持久力:16

 素早さ:15

  魔攻:0

  魔防:0


 △▼△▼



 外れ値を除いて、平均15のステータス。

 比較対象がいないため憶測になるが、のほほんと暮らす現代高校生の普遍的な値がこのくらいだろう。ゲームなんかでも、最初のステータスはこんなもんだ。



 「重要なのはこっち」



 『能力:ガチャ』をタップすると詳細が現れる。

 ガチャの種類の一覧だ。



 ▲▽▲▽

 

 【ガチャ一覧】

 ・一回限り『マイホームガチャ』

 ・一日三回『食事ガチャ』

 ・一日一回『アイテムガチャ』

 ・一回限り『旅の仲間ガチャ』

 

 △▼△▼



 「『マイホーム』に『食事』か。やけに生活に寄り添った内容だな」


 

 まずは『マイホームガチャ』のラインナップにざっと目を通すことにした。概要には『※ミニチュア化して持ち運び可』と書いてある。



 「親切なこった」



 半ば強制的に俺を異世界転移させた女神に、皮肉を込めて言う。しかし実際、住居を簡単に持ち運びできるのは、冒険において確実に役立つ。



 「早速引いてみるか」



 辺りを見渡すと、そこに広がるのは『始まりの地』と呼ぶに相応しい、爽やかで広大な野原だ。気持ちのいいそよ風が吹く。



 「景色も良いし、仮拠点にはうってつけだな」



 右上に表示されている『ラインナップ』を押し、中身とその排出率を確認した。中身にも区分があり、『当たり』『大当たり』『ハズレ』『大ハズレ』の四つである。



 「すげぇ……屋敷も当たるのか」



 これは千分の一の大当たり。

 逆に大ハズレはというと。



 「『馬小屋の一室セット』?」



 添付されている画像には、丁度馬小屋の一室を埋めるのにピッタリな量の藁が映し出されていた。つまり大ハズレの場合、手に入るのは大量の藁である。


 しかし確率は百分の一。屋敷の十倍も当たりやすい計算だが、それでも滅多に当たるまい。

 早速俺は『マイホームガチャ』の『引く』をタップした。


 【※このガチャは一回限りです。本当に引きますか?】


 警告文のすぐ下に『はい』と『いいえ』の選択肢が現れる。唾を一度飲み込んでから『はい』に触れると、目の前にお馴染みのガチャガチャ機が突如として現れた。

 

 さらに唾を飲み込み、いざハンドルを時計回りに回す。ガラガラと、中でカプセルが掻き混ぜられ、ぶつかり合うワクワク感が奏でられる。一回転したところで、ついにカプセルが落ちる音。


 取り出し口からカプセルを取り出す。青色だ。



 「当たり、なのか?」



 当たりといえば金色や銀色、もしくは黒色のカプセルを思い浮かべるが、青色はどうなのだろう。なんとなく『小吉』くらいのものを思い浮かべている。

 

 とはいえ中身に関して、大きな期待はしていない。ガチャを引いたら家が出る。それ自体が面白い出来事だから、それで十分だ。


 『馬小屋の一室セット』でなければ。



 結果は──……「『小屋(木製)』」



 カプセルに入っている安っぽい紙に書かれた文字を読んだ。

 途端、目の前に小屋が現れる。


 読者諸君は卑しく『馬小屋の一室セット』が排出されることを望んだだろうが、現実がそう都合よく面白い方向に転ぶとは限らない。幸にも不幸にも振り切らないところが、俺を俺たらしめている。



 「わっ」



 手に持っていた用済みのカプセルがパッと消失する。


 ガチャから建物が現れたこと、カプセルが瞬時に消えたこと。驚いたものの、良くも悪くもない微妙な結果に、「まあそんなもんか」と呟くほかなかった。


 その呟きと共に、腹は鳴った。



 〇



 「一日三回『食事ガチャ』。朝昼晩の三食分で三回か」



 空いた腹が嬉々として()()()()()()をめくる。いや、ここは折角なので()()()()()と呼ぼう。

 

 メニュー表には様々な料理が載っている。

 

 ──まずは『当たり』の料理から。

 基本的には定食で、お米・お味噌汁・焼き魚、のようにセットで提供される。和食、洋食、中華まで、豊富なラインナップかつ、お腹もしっかりと満たされる内容だ。

 

 ──次に『ハズレ』の料理。

 基本的に一品のみである。お米のみ、お味噌汁のみ、という風に一品だけ提供される。『ハズレ』という位置だが、美味しいこととありがたいことに変わりはない。気持ち的には全然当たりである。


 ──問題は『大ハズレ』だが、先に『大当たり』を見ておこう。

 なんと、『一ヶ月分の食費』が出てくるそうだ。食べたいものを買って、確実に食べられる。という意味での『大当たり』なのだろう。支払い時に、その額の分だけ手の平から湧いて出るらしい。


 ──さて、最後に問題の『大ハズレ』。

 ざっと例を挙げると、『昆虫食』『激苦ドリンク』『下剤』などが排出される。便秘には役立つかもしれない。が、食事をしたくて注文したのに『下剤』が出されようものなら、誰だって気分が落ちる。他の品も同じような理由で、納得の『大ハズレ』である。


 一息吐いて、ハンドルに手を伸ばす。



 「お願いします!」



 ガラガラと回し、カプセルが落ちる。



 色は……「黄色か!」



 カプセルの色が当たりハズレに関連があるかは不明だが、黄色は何だか良いものが入っている気がする。



 結果は──……「『激苦ドリンク』」



 読者諸君、お待たせした。大ハズレである。

 ガラス製のコップに、何やら不思議な粘力をもった緑色の液体が注がれている。


 大きく溜息を吐き、その液体の処置について小屋の中で考えることにした。捨てるか、腹を決めて飲むか。


 捨てるのは……勿体ない気がしてしまう。

 しかし飲むのも……気が引ける。



 「──……っ!」



 味覚が働く前に、グイッと飲み干した。飲み干したコップは一瞬にして消失した。開封済みのカプセルも同様に消える。


 ついに味覚が苦味をキャッチして脳へ伝える。



 「お、おぇ」



 寸のところで吐き出しはしなかったものの、嗚咽が漏れる。


 その場に誰かいれば笑いの種にもなっただろうが、一人罰ゲームほど侘しいものは中々あるまい。苦味のせいで涙腺がゆるむ。家族みんなで母の料理が食べたくなった。さらに目が潤んだ。



 〇



 話し相手が欲しい。


 先程、『食事ガチャ』にセンチメンタルな気分にさせられた事を原因に、段々と孤独感が強まっている。近くに街は見当たらない。人気もないので、一人で歩くには心細い。


 そこで、だ。


 一回限り『旅の仲間召喚ガチャ』というものがある。ラインナップには『?』が大きく一つ書かれているだけ。中身は秘密、ということだ。

 

 この内容次第で、俺の異世界生活は天国にも地獄にもなりうる。何にせよ、引かないことには前にも後ろにも進まない。


 唾を飲み込み、深呼吸をしながら大きく伸びをする。



 「頼むっ」

 


 軽く震える手をハンドルに掛け、回す。回す。回す。ゴトンとカプセルが落ち、それを取り出す。

 色は青、よりも少し爽やかな水色。


 力と念を込めて、カプセルを開いた……!


 ──そこに現れたのは、フレンチガーリーを身に纏う、同い年くらいの少女だ。


 高い鼻、色白の肌、澄んだ青空のような目。明るいブラウンの前髪は眉毛の上でふんわりと揃えられ、後ろ髪には柔らかいウェーブがかけられている。

 襟と袖にフリルのついた白いブラウスを着ており、スカートは水色の綿菓子のようにふわふわとしている。


 全体的に『快晴』を想起させる女の子。



 「こ、こんにちは」

 動揺も相まって、たどたどしい挨拶になる。



 「こんにちは!」

 彼女は元気に挨拶を返してくれた。

 「私『シエル』! 君は?」



 彼女は、グイッとこちらに顔を近づけて言う。

 距離感の近さに驚きつつも、負けじと声を張った。



 「『シンヤ』、『ナナハラ・シンヤ』です!」

 「良い名前だね!」



 せっかく友好的に接してくれているのだ。

 楽しい雰囲気を壊さない為にも、元気に対応しよう。



 「……っ」



 しかし話題がない。



 「……?」



 目をぱちくりさせながら彼女、シエルはこちらを見つめている。と思えば、シエルは再び表情を明るくし、


 

 「お腹空いたね!」

 そう言って微笑んだ。

 


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