助けたつもりで、ずっとそこにあった
短編です
いつものように、白飯を炊飯器からよそって食卓に座る。TVをつけて夕飯を食べ始める。
「~~県の連続殺人の犯人の初公判が、今日、~~県で行われました」
淡々と話す女性キャスターの言葉の後に、よく見る裁判所の映像が流れた後、裁判の様子を描いたイラストが映し出された。イラストの中の犯人の左頬に、大きな傷跡が描かれていた。
その後事件の概要と、犯人の捕まった際の映像と、卒業アルバムと思しき写真が映し出された瞬間に、俺の記憶が呼び覚まされた。
給食があるのに、いつも一人で弁当を喰う、物静かなやつ。中学の頃、いじめの被害に遭っていた奴だ。名前を見て、確信した。アイツだ。
俺が勇気を出していじめに立ち向かった時の記憶が呼び起こされる。俺もそんなに派手なタイプじゃなかったけど、アイツを虐めるために、俺の好きなアニメを貶されて、プチンときたんだ。それで俺と、虐めてたやつとの喧嘩になって、その時に俺がぶん殴られて、アイツと一緒に窓ガラスを割って、窓の外に放り出されたんだ。その時にアイツの左頬には大きな傷が出来た。
それからアイツは引っ越して行ってしまって、俺は一人、同じ学校に取り残されたんだっけ。
そんなおぼろげな記憶。でも確かに覚えている、真っ赤な血に染まった自分の掌、きょとんとした顔をしたアイツ。
「判決の前に、被告は記者を見つけると、こう言い残したと言います」
女性キャスターの重い声の後、声優の声で、アイツの言った言葉が流れてきた。
「顔の傷は、絶望も与えたけど、勇気を与えてくれた。虐めてきたやつらは許さないけど、傷を作る原因になった彼には感謝してもしきれない」
声優の声のはずなのに、妙にリアルに耳元に聞こえたような気がした。俺があの時、アイツを助けなければ、あの頬の傷はつかなかったのかもしれない。
心臓が早鐘を打っていた。俺のせいなのか?俺が出しゃばったから。
感謝ってなんだ?恨まれこそすれ、感謝されるようなことなんだろうか。転校した先でいったい何があったのだろうか。
被害者の名前には、俺の知っている中学の頃の同級生は入っていなかった。
あいつは一体、何を思ってあんな事件を起こしたんだろう。
気が付くとスマホが震えていた。中学の頃の同級生たちからだった。
[ニュース見たか?あいつから手紙が来ていた]
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