竜級令嬢の昇格試験の裏で
翌日、リリーとシルヴァは冒険者ランクの昇格試験に挑んでいたGからFへの昇格試験は最低限の自衛能力を試すのだ。前日の特訓の甲斐もあって二人に失格する要素は無い。という事でこの辺りはざっくり割愛してしまおう!大事なのは二人が試験を受けている間に起きていた事なのだから。
ギルドマスターのゴードンはミシアとサナの報告、さらには最近樹海で活動していた冒険者たちにヒアリングを行いすぐに異常の兆しありと判断して腕のいい冒険者を調査に行かせていた。ゴードンの勘はコレは不味い前兆だと警鐘を鳴らしており年に似合わずそわそわしながら執務室で送り出した冒険者パーティー、大地の声が帰還するのを待っていた。大地の声というパーティー名は同じ名前の魔法からとっている。パーティーリーダーのジリスは剣士でありながらこの魔法が得意であるため代名詞として付けられたのだ。大地の声というのは大地を伝わる振動等から周辺の索敵をしたり環境を調べたりする強力な索敵魔法である。索敵魔法が使える彼らこそ調査の任務にうってつけなのだ。彼らには欲をかいて情報を集めずに樹海の異変の証拠を掴めたらすぐに報告に戻るように言ってある。そんなことを考えていると突如執務室の扉が勢いよく開く。
「ギルマス!これはヤバい!確定でスタンピードだ、樹海のかなり浅いエリアにゴブリンの超大型コロニーが複数出来てる!確認できただけで万は越えてるよ。」
「おいっ!すぐに都市防衛法に基づき迎撃態勢を整えるぞ。確か領主サマは今王都だな?すぐに王都に早馬を出せ!領主サマがご不在な今俺が全権を握る事になる。すぐに騎士団の詰め所にも使いを送れ!」
「は、はいっ!」
自体が呑み込めず一瞬フリーズしていた受付嬢は意識を取り戻すとすぐに執務室から退出した。
「ジリス、悪いが一日休んだらスタンピードの詳細な原因を突き止めに行って貰えないか?可能なら解消、無理なら報告だけでいい。パーティーの安全を最優先にな、危ないと思ったらすぐに退いてくれ」
「分かりましたよっとギルマス!そっちこそ俺らの帰って来る場所しっかり守ってくださいね。」
執務室でこんなやりとりが行われた数時間後、市民に拡声魔法での伝達が行われた。
「ビランツ市の皆さま。えー俺は冒険者ギルドのマスターゴードンだ。率直に言うとスタンピードが起こる。周辺の村落の避難が済み次第事態が収束するまでの間城門は閉鎖させていただく。市民の皆様におかれましては食料の備蓄は十分あるので食料の奪い合いなどしないように落ち着いた生活をお願い致す。ふぅ緊張したぁこれでいいのか?「ギルマスまだ魔法切れてないですよ」なっっ!ゲフン、失礼した。領主様が不在で心細いと思うが市一丸となってこの苦難に立ち向かおう。それと市内の冒険者は明日ギルドに全員集合すること」
無事合格を貰いお祝いに市内のスイーツ店で果物を食べていたリリーとシルヴァもこの放送を聞いていた。
「スタンピードって何だろう?」
「さぁ?分からないのです!」
「お嬢ちゃん達ねぇスタンピードってのはおびただしい数の魔物の軍勢が街を攻めてくることだよ危ないから暫く家から出ちゃいけないよ。にしてもこれじゃあ次の仕入れは出来なさそうだね」
店員のおばさんが教えてくれた。ビランツ市では樹海からの魔物の襲来に備えて法整備がされている。それが都市防衛法だ。事態に際し領主、次いでギルドマスターが全ての決定権を持ち冒険者と騎士団共同で命令系統を構築して迎撃にあたるのだ。
(これは早く戻って休んだ方がいいかもね)
「明日から大変そうだね!」
「お姉さまはシルヴァが守るのです!」
二人は宿に戻るとミシアとサナにも早く休むよう言われ日が暮れたばかりだが大人しく床に就いたのだった。




