佳奈:Day6
目が覚める。
外は薄明るい。
どうやらだいぶ早く起きてしまったようだ。
手紙は?
私はカバンを見た。
見覚えのない形の紙が引っかかっている。
開くと。
「こんにちは、俺はアントニオといいます。なぜかは知らんがあなたの多重人格です。」
気持ち悪いほど私の字。
どうやらアントニオ・ロメオというのは本当だったらしい。
どうしよう。
意思疎通も大事だが、そもそもなんで移ったかを本人が知らないとは。
まったく。
手紙の文面を考えること1時間。
主に今後の方針、これだけは守ってほしいこと――友人関係を破壊しないとか。
あと、土曜日に入れ替わりの法則(仮)について検証する旨などを盛り込んだ。
学校につくまでカット。
A組に入る。
菊池が変な目で見てくる。
私は一番に美玖ちゃんに訊いた。
「昨日の私、ボロ出さなかった?」
「あっ佳奈ちゃん...ちょっと出してた...かも」
「あらあら」
「すごい嫌な奴だったね。嫌悪感しか沸いてこない。で、手紙のほうはどうなの?」
私は例の手紙の内容を見せた。
「内容うっすいわね...これじゃあ”ロメオ”かどうかわからないじゃない」
「たしかに。」
「やっほー、佳奈」
静香ちゃん。
美玖「静香ちゃん、拗ねてない?」
静香「全然大丈夫!今日は本当の佳奈ちゃんみたいだね」
私「もしかして、かなりボロ出しちゃった?」
美玖「だね。あたしたちともかなり論争になっちゃったかも」
静香「あれは、さすがに受け入れられる体質じゃないわね」
アントニオという人間はそこまでやばいらしい。
私「暴力は?」
美玖「菊池に殴られてたけど、静香が止めてくれた」
私「やり返さなかったの?」
静香「ずっと気持ち悪い笑みを張り付けてたわね」
美玖「なんか口調も変わってたし。情緒不安定なのかな」
まあとりあえず、授業を受け、昼。
私はトイレに行った。
全く怪しいことではなく、普通に用を足しに行ったのだが。
声をかけられた。
「おっ佳奈ちゃん。久しぶりー。元気にしてた?」
伊藤だ。
そのとたん。
後ろから山口に髪の毛をつかまれた。
ちょっと待って。これ...やばいかも。
大声を上げようとしたら口をふさがれた。
やばい。
「この間はずいぶんとなめ腐った態度だったなあ」
耳元でささやかれる。
怖い。怖い。
河合がスマホを持ってきて、撮影を始める。
スマホは校則違反なのに。
こいつのせいでみんな持ってきている。
伊藤を見上げる。
そのとたん。
「バチン!」
頬が熱くなる。
涙がにじむ。
「また態度が戻ったのかい?こっちのほうが望ましいんだけどね」
押さえつけられたままうつ伏せで地面に押し倒される。
そして。
「ドッ」
頭を踏みつけられる。
鼻血が出る。
「ドッ」
鼻が痛い。
「ホラホラ、トイレの床とキスできてうれしいでしょ?」
これは…本当にやばい…
意識がもうろうとする。
「おら、立てよ!」
引きずられ立たされる。
その瞬間、顔の前で火花が散った。
伊藤のパンチが炸裂したのだ。
まって、これって気絶コース?
あ…やばいかも…
…私は失神した。