99話 罪の味
「あの焼きそばっていうのはパスタとは違うんですか?」
夕食後、片付けを手伝っている時にマーシーさんからそう質問をされた。
「ほぼ一緒ですね。かん水っていうアルカリ性の水を塗った麺なんですよ」
「アルカリセイ?」
「なんだろ・・・酸性、酸っぱいの逆?」
「酸っぱいの逆・・・甘い・・・は違う、苦い?」
「俺はこの重曹を使ってます」
「えっ」
「これ結構便利なんですよ」
「え?でも、それって掃除に使う粉じゃ・・・?」
「あー、掃除にも使えますしふくらし粉としても使えますし色々使えますよ」
掃除に使うのと食用は別かもしれないからそこは注意しないといけないかもしれないがベーキングパウダーの代替品としても使えるしかん水の代替品としても使えるし掃除にも使えて便利すぎる。
そして、重曹と言えばこれ。
竈に火を入れ、小さめのフライパンに砂糖水を入れて火にかける。
ぐつぐつと煮立ち全体が沸騰して細かい気泡が出始めたら火から下ろして重曹を一摘み入れる。
そして、混ぜる。木製のスプーンでひたすら混ぜる。重曹が全体に行き渡り色が変わると混ぜるのを止める。
すると、みるみる膨らんでいく。
「わぁ~」
「まだ熱いんで食べれないですけど、冷えるとサクサク食感で美味しいんですよ」
「へぇ~」
冷ましたカルメ焼きを半分に割りマーシーさんと2人で食べる。
サクサクホロホロ食感で少し香ばしくて甘い。
砂糖水を重曹で膨らせただけだから味は砂糖。情緒もへったくれも無い言い方をするとそうなってしまうが素朴な味わいと小気味の良い食感。そして、懐かしさもあってこれは良いお菓子だ。
「美味しいですね」
「はい。まぁ、砂糖を大量に使うんで単価高いですけどね」
「あぁ・・・アイスクリームと一緒に食べたら美味しいかと思ったんですけど・・・」
「サクサク食感と濃厚アイスの対比が良さそうかも・・・ってか・・・」
だったらコーンで良いかも?
確か、コーンって名前のクセにトウモロコシじゃなかったはずだ。
多分、小麦粉を水で練って焼いただけとかだと思う。入ってても後は卵くらいかな?
というか、トウモロコシで同じ物を作っても良いかも。
円錐形のトウモロコシの焼き菓子。とんがったコーン。
きっと美味しいはずだ。根拠は無いけどきっと美味しい。指にハメて食べたら倍美味しい。そんな気がする。
そして、とんがったコーンにアイスを乗せても美味しそうだ。
もしかして・・・ポテトチップスでアイスを食べても美味しいんじゃないか!?
某ファストフードチェーンのワクドナルド。
アメリカ人はワックポテトをワックシェイクに付けて食べると聞いてマネしてみた事がある。
あれは、そう。美味しいとか不味い以前に罪の味がした。
決して不味くはない。かと言って美味しいかと聞かれると答えるのが難しい。不味くはないと答えてしまう。
でも、付けないと物足りない気もする。付けても別段美味しい訳でもない。
何も付けずに食べた時の感想は美味しい。
BBQソースとかに付けた時の感想も美味しい。
だったら、付けなければ良いし。何かを付けたいならソースを付ければ良い。
でも、何故かシェイクにもディップしてしまう。
「どうしました・・・?」
「あ、すいません。考え事を・・・」
「これの名前は何て言うんですか?」
「これはカルメ焼きですね」
「ふんふん。ミトさんの故郷の食べ物なんですよね?」
「ですねぇ」
焼きそばは難しいな。焼きそば自体は日本な気がするけど中華麺はその名の通り中国だろうし。
アイスクリームも日本ではないと思う。
まぁ、地球を故郷とするなら全部故郷の味だ。
異世界に来た事によってワールドワイドな存在になってしまったな。
「ミトさんの故郷って食へのこだわりが凄かったんですね」
「ですねぇ。住んでる時はそれが当たり前だったんで気付かなかったんですけど」
「まるでおとぎ話のニホンみたいな所ですね」
まさにその日本ですけどね。
「ちょっと思い付いた料理?があるんで。今度、味見して下さい」
「はい、是非!」
ポテトチップスなら今でもいけるけどやっぱりワックっぽいフライドポテトで試してみたい。
「どんなのですか?」
「えっと、アイスと一緒に・・・」
んー、もうポテトチップスで良いか。
「このアイスと一緒にポテトチップスを食べてみて下さい」
「え?」
「アイスクリームと、え?」
「騙されたと思って」
「は、はいっ」
マーシーさんが食べたのを見てから俺も同じようにポテトチップスでアイスをすくって口に運んだ。
そうそう、これこれ。アイスの甘みとポテトの塩っぱさの融合。
ポテトチップスのパリパリ感も良い感じにマッチしている。
ただ、やっぱり揚げたてワックポテトの温かいやつを冷たいシェイクに突っ込むのが良いよな。
そこはどうしても劣ってしまう。
そんな事を考えるのに必死になっていて気付くのが遅れたが。
目の前でマーシーさんがあまりの美味しさにフリーズしてプルプルと震えていた。




