82話 暇を持て余した巻き込まれ召喚された者の遊び
乗合馬車に押し込まれ。俺達冒険者はぎゅうぎゅう詰めにされて出発となった。
しかも、筋骨隆々なおっさんの冒険者に挟まれ囲まれての移動だ。
見た所・・・学生や教師達の乗った馬車は少人数でゆったりと快適そうでサスペンションもたっぷり効かせた貴族仕様。
その分、スピードは出せないが悪路であってもケツにも腰にもダメージを負う事なく目的地に辿り着けそうで羨ましい。
そう。
そんな事を羨ましく思うという事は・・・。
「痛ぇ」
「狭ぇなぁ」
「チッ」
と、狭いし痛いしの二重苦で更には雰囲気まで最悪だ。
エーリッヒにも言われたように俺は我慢を覚えなければならない。
多少の悪意を向けられたとしても受け流せなるようにならなければ。
どのくらいの時間我慢しただろうか?こういう時の時間の流れはビックリする程に遅い。
30分は経っただろうと思っても5分しか経っていなかったり。授業中はいつもそうだった・・・。
こうやって関係の無い事を考えて時間を加速させる以外になかった。
そうして我慢をし続けていたが流石に我慢の限界・・・というタイミングで休憩となった。
「ふぅ・・・」
これなら馬車に乗らずに自分で歩いた方が楽だ・・・。
「なぁ、自分で歩くからよぉ。乗らなくて良いよな?」
「分かりました。お名前は?」
お?アリなのか。
「フィルだ」
「所属パーティー名は?」
「デス・パレードだ」
「では、他のパーティーメンバーを呼んで来て貰えますか?」
「ん?おう。おーい」
もしかして馬車から下りて歩くのもパーティー単位なのか?
「お名前を」
「ヴィヴィアンだ」
「サヴ」
「リック」
「ジョーだ」
「それではデス・パレードの皆さんはここまでという事で」
「ん?」
「おかえり頂いて結構です」
「はぁ?」
どういう事だ?
「合同依頼だからな」
「!?」
「なにビックリしてんだよ」
「いきなり後ろからおっさんが顔を近付けて来たら誰でも驚くだろ」
「言葉にトゲしか感じねぇな」
「刺さってくれたなら良かった」
「アンジェラといい・・・今日は当たり強くねぇか?」
「いや、それよりも。合同依頼だからってのは?」
「あーやって協調性の無いやつは刎ねるんだよ」
「パーティーメンバーは?」
「ただの巻き添え」
「マジか」
「やらかさないか見張ってたけど。今回はちゃんと我慢出来てたな」
「お、おう・・・当たり前だろ・・・」
危なかった。今のやつに続いて俺も同じ事を言おうとしてた。
そして、辺りを見回すともう1パーティーが同じように揉めているので向こうも同じ状況になっているに違いない。
「そろそろ出発だな」
「あ、うん・・・」
そして、案内された馬車に向かうと先ほどまでよりも空いていた。
それだけ人が減ったという事なんだろう。
ってか・・・こんなタイミングで減らして大丈夫なのか?
協調性云々も大事かもしれないけど計画性とか予定調和ってのはどうなってるんだ?
帰らされたやつらを見たからか馬車内の空気はピリついてはいるものの機嫌の悪さを口や態度に出すやつは居なかった。
ここまで来て歩いて帰らされるよりは我慢を選ぶか。
再び、心を無にして馬車に揺られてどのくらい時間が経過したのか分からなくなり始めた。
こういう時は探索スキルの範囲を広げて何があるのかを探ったりして時間を潰す。
この探索スキルは意外に面白くて。
最初、覚えたての時はなんとなくそんな気がする程度の精度だったが熟練度が上がるにつれて明瞭になっていった。
そして、このスキルの優位性は汎用性の高さもあるが操作が感覚的な所が最も優れていると思っている。
基本は自分を中心とした円形に範囲が広がるが。その形状は自在に変更出来る。
形状だけじゃなく濃淡も自由自在で。気になる場所に意識を強く持っていけばかなり克明に探る事が出来る。
但し、精度を上げ過ぎると実力者には察知されてしまう。
なので普段はふわっとぼかした状態で探索している。
面白い使い方として。例えばエーリッヒにこの意識を向けて、ゆっくりと強度を上げていくと最初はなんとなくの違和感を感じている程度だがある程度上がると視線を感じ出して落ち着きがなくなる。
誰も居ないはずなのに気配を感じたり視線を感じたりする事があると思う。
それを霊感と勘違いしてる人も居ると思うが基本的にはコレだと思う。
実は探索スキルに似たものを一般人にも使えたりする。
好きな相手を想って想って想い続けると意識がその相手の方に向かう。探索スキルの様に相手の様子を察する事は出来無いが意識だけが相手に向かうので相手は何かしらの気配を察する。
これが一般人でも出来るなんちゃって探索スキルだ。
練習して精度を上げれば向こうの様子も探れる様になるから練習しても良いかもよ?
「おい」
なんて事を考えていたら。
「お前だろ?」
「え?なにが?」
「変な気配してたんだがお前が何か変な事してたんだろ?」
「な、なんの事かなー・・・」
「隠す気ねぇなら誤魔化すなっ」
と、完全にバレていた。




