60話 虎の威を借る狐
おっさん達に別れを告げ。次に向かうはあのバカの実家。
あのバカを甘やかして野放しにして権力で保護し増長させたバカ親共にも仕返ししないと気が済まない。
そのバカ親貴族の住む街は1つ隣の街。間には小さな村を3つ挟むがその距離は短くて普通に行って2日。早馬を飛ばせば1日と掛からない距離だ。
そこまで急ぐ訳じゃないので2日掛けて向かう。馬に負担も掛けたくないし。
1日目の行程を終え。野営する為に火を起こしテントを張り準備を進めていく。
「さてと・・・」
アイテムボックスからマーシーさんが作ってくれた煮物で白ご飯を食べると本当に手が止まらない。
煮物がちょっと味が濃い目で白ご飯がたまらなく美味しい。
これなら白ご飯じゃなく日本酒でもきっと合うだろう。
ないものねだりをしても始まらないので煮物に合いそうな酒を探してアイテムボックスの中を物色する。
ウイスキーやブランデーなんかは合わないだろう。ワインやリキュールも違う。
エールかラガー。ビールならまだ合うだろうか?
「まぁ、ラガーが合わない事はないか」
キレがあってスッキリしているラガーは煮物との相性も悪くない。
が・・・絶対にコレ!とはならなかった。
2杯目をエールにしてみた所。ビックリする程のベストマッチだった。
たまたまだとは思う。このフルーティーで華やかな香りでスパイシーさもあるエールとマーシーさんの煮物の相性は本当に良かった。
他のエールではここまでの相性にならなかったかもしれない。
マーシーさんの料理とエールに舌鼓を打ち。
その所為で少し深酒をしてしまったが翌朝は思っていた時間に起きる事が出来た。
「おはよう。調子はどうだ?」
「ブルル」
「そうか。俺は微妙だな」
重い頭と身体を引き摺りながら馬の世話をして朝の身支度を済ませた。
「御者を雇えてたらなぁ」
馬を進ませ、御者台に座りながら愚痴を呟く。
「そしたら、俺は後ろで寝てられたのになぁ」
たらればを言っても仕方ないのは理解している。
これから俺が何をしに行くのか?それは、貴族に喧嘩を売りに行く。
そんな所に御者なんて連れては行けない。
となると・・・もし御者を雇っていたとしても、この道程も結局は1人で御者台に座っていて。二日酔いが残り、少しの振動が鈍く痛む頭と重い身体に継続ダメを与える事も変わらなかったという事だ。
しばらくすると酒も抜けて2日目も予定通りに進み。陽が傾き始めた頃、憎きバカ親が住む街に辿り着いた。
宿を取り、馬を預け、飲み屋に行き情報収集をする。
悪名が響き渡っているのかと思ったが実際はそうでもなく。
市民からすれば貴族の区別はほぼついていないようだった。
要するに・・・ごくごく一般的な貴族。
領地を持たず、王都に居を構えられる程の権力も財力も持たず・・・言ってしまえば名ばかりの貴族だ。
名ばかりとは言え、名はある訳だから。その名を使って商売をしたりして成功している貴族も居る。
ただ、地方貴族の統治する街に住まわせて貰い、俸禄を食むだけで先細りの貴族。
まぁ、何代か前の先祖が功績を残した結果だから責められる筋合いはないのかもしれないが・・・。
そのクセ、平民に大しては威張り散らかして権力を振りかざす典型的な嫌な貴族。
うん。国の為にも潰してしまった方が良いな。
何故、こんな事を考えているか。
それは・・・飽きてきたから。
人の怒りというのはそこまで持続しない。
今回は特に待ちの時間が長かったのもあって厄介な事に怒りがある程度治まってしまっていた。
とは言え、コイツらを放置しているとおっさん達にまで迷惑が掛かる可能性がある。
その為にもトコトンまでやらなければならない。最早、そんな使命感だけで行動していた。
家の場所を聞き出し、偵察を兼ねて見に行ってまた後悔した。
デレクの住んでいた借家よりも質素だった。
そんな権力を笠に着て息子の犯罪を握り潰せるような貴族と聞いて豪邸に住んでいるのを想像したが・・・普通の民家。
貴族街ではあるが端っこで富裕層の平民なんかよりも質素な生活を送ってそうだった。
盗める物があるのだろうか?
まぁ、物はあっても俺が欲しい物は無さそうだ。
さて、どこまで仕返しをしても良いものだろうか?
殺したり火を着けたりというのは流石にやり過ぎだと思う。
正直、人の命を奪う事に忌避感は既に無くなっているが殺人鬼という訳でもないので好き好んで殺したりはしない。必要であれば躊躇しないという意味だ。
なので妥当なラインとしては嫌がらせ。
嫌がらせと思えるラインであればトコトンまでやっても構わない。
そして、まだ日本に居た頃にバラエティ番組で観た海外のおもしろニュースからネタを頂いてバカ親達に嫌がらせをしようと思う。




