5話 良心
地方にある冒険者ギルド1つと俺をハメようとしたギルド職員にその実家の貴族。それからウザかった冒険者達を片っ端からボコった。
そして、逃亡した先で再び名前を変えて今度こそひっそりと暮らそうと心に誓った。
宿暮らしも楽ではあるが騒音問題や治安の悪さがあるので一軒家を買うか借りるかしたいが身元不明の怪しいやつには中々売ってもくれないし貸してもくれない。
なので身分証代わりとして今度は商業ギルドで登録をした。
店舗を構えるならそこそこのランクを必要とするが露店であれば最低ランクでも問題無い。
出店料を払い露店を出す。
アイテムボックスに死蔵されている激レアなアイテムや装備なんかは当然出す訳にはいかないので低級の自作ポーションを販売する。
材料は近場の森でいくらでも生えているので元手はタダ。
金には困っていないので収入源をはっきりさせる為だけの商売だ。
しばらく露店でポーション売りをやった結果。それなりに信用を得る事が出来て一軒家を借りる事が出来た。
これで泊まっている部屋を荒らされずに済む・・・。
羽振りの良さの所為か常にスリや泥棒に狙われている。宿屋だと防犯的にもザル過ぎて部屋に入られ放題だった。
まぁ、金目の物は全てアイテムボックスにあるから何かを盗られる事は無かったが荒らされる度に宿を追い出されるのが面倒で仕方なかった。
借家になってからはあちこちにトラップを仕掛けてあるので侵入者はそのまま騎士団に突き出してちょっとした小遣い稼ぎになっていたりもする。
家を借りる事が出来たので露店をやる必要も無くなったには無くなったが。意外と性に合っていたのか露店での販売が楽しい。
客とのちょっとしたやり取りが楽しい。値切られたりするのも新鮮で楽しかった。
「なぁ、おっさん」
「ん?」
「ポーション売ってんならよぉ」
「うん?」
「薬草要るだろ?」
「あー、まぁ、材料だからな」
「これいくらで買う?」
「お前が採って来たのか?」
「おう」
正直、露店をやる必要も無くなったし。やるにしても自分で採れる物にわざわざ金を出す必要も無い気がしないでもないが・・・。
「ガキ。お前、親は?」
「買うのか買わねーのかどっちだよ!」
「あー、買ってやるよ」
ストリートチルドレンってやつだ。
こんな世界だ。冒険者なんてサクっと死んじまうし悪い事なんてしてなくても運が悪いってだけで奴隷堕ちしたりもする。
だからこんな子供も珍しい訳じゃないが・・・。
普通ならこんなガキだと買い叩かれて端金にもならないが相場通りで買い取ってやった。
「それとな」
「おう!」
「採る時は根っこからキレイに採ってこい。その方が高く買い取ってやれるぞ」
「マジか!」
「マジマジ。お前の子分とかにも言っとけ」
物陰からこっちを伺うガキンチョが何匹か見え隠れしていた。
「お、おう・・・」
「薬草ならいくつでも買い取ってやる」
「マジかっ」
「だからって無理すんなよ?」
「わーってるって」
「ほれ」
買取代金を受け取ると跳ねる様に駆けていった。
このガキンチョ共の所為で露店を辞める訳にはいかなくなってしまい・・・。
毎日の様に大量に持ち込まれる薬草を消費すべく販売価格を落とした。
それでも低級ポーションだけでは売り切れないので中級や上級の販売も開始した。
これが良くなかった・・・。
薬草を相場以上で買い取り。ポーションは相場以下で販売する。しかも大量に。
そんな露店があれば人気になるのは必至だ。
そうなると競合相手となる錬金術師や錬金ギルドが敵に回る事となってしまった。
最初は見た目の厳つい冒険者崩れが俺の露店の前で妨害をやり始めた。
ここのポーションは混ぜものだから効かないだの毒が入ってるだの大声で喧伝しくさりやがりました。
ムカついたので路地裏に連れていってボコってから誰に頼まれたのかを聞き出して。両手両足を縛って森に放置してきた。
その後も手を替え品を替え嫌がらせは続いたので商業ギルドに泣きつく事にした。
この世界に来て学んだ。こういう場合は誰かを頼った方が穏便に事が運ぶと。
でも、商業ギルドは何もしてくれなかった。
最近登録したばかりの最低ランクのギルド員と錬金ギルドを天秤に掛けた結果・・・錬金ギルドを敵に回すべきではない。こんな木っ端ギルド員は切り捨てて何の問題も無いと。
穏便に済ませようと思ったのに・・・。
腹いせに商業ギルドと錬金ギルド両方に忍び込み。商業ギルドからは金庫の金と倉庫にあった物全てを頂き。錬金ギルドからは倉庫にあった錬金の素材を全て頂いてきた。
そんな訳で俺の一流商人への道は閉ざされ。またしても逃亡せざるを得なくなってしまった。
1日1話って書いたのを早速破ります(´・ω・`)