44話 レシピ
料理を受け取りに家に戻ると・・・。
「おけーりー」
「親父、仕事は?」
「腹が減っては戦は出来ぬって言うだろ?」
「戦なんてしてないだろ。仕事して来いよ仕事を」
「格言だよ?知らない?」
「そんぐらい知ってるわああああああああ」
「うわ、何?びっくりした」
予想通りと言うか、裏切らないと言うか・・・作業もそこそこに家に戻って昼食を食っていた。
そして、愚痴を吐いてスッキリしたばっかりの息子を一瞬でキレさせてた。
「奥さん料理は?」
「あ、こっちです」
と、親子喧嘩は放っておいて料理の受け取りを。
「味見はされますか?」
「いや、信用してるんで大丈夫です」
というか、出来たって聞いて寸胴1個分出来たんだと思ってたら・・・寸胴5個いっぱいに煮物やスープが入っていた。
「こんなに早く大量に大変じゃなかったですか?」
「慣れてますから」
キッチンに入らせて貰ってその言葉が嘘じゃないと分かった。
普通の家だったら竈なんて1つで事足りる。
コンロみたいな物だから竈1つで三口コンロと同等といった感じだ。
それが3つもある。
調理場も圧倒的に広くて給食の調理場を思わせる雰囲気があった。
「農作業をお手伝いして頂く方々にお食事をして貰ったりするので」
「あー、なるほど・・・」
下手したら一気に20人分とかを作らないといけないのか。
給食程じゃないにしろ、一般家庭のレベルではないな。
「材料費プラス調理代はちゃんと払いますんで。請求して下さいね」
「は、はい」
「調理代は特に高く請求して下さいね」
「そんな・・・」
「あ、それから。食材の買い出しとかも大変ですよね?要る物があれば食材でも調味料でも器具でも何でも言って下さいね」
渋られたが何とか聞き出してメモった。
調理器具よりも盛り付ける大皿が欲しいとの事で明日は皿を大量に買いに行く事が決定した。
食材に関しては農協絡みで安く買える上に配達して貰えるから問題ないそうだ。
差し入れに関しても遠慮されまくったが強いて言うなら?と何度も聞いた結果、果物はこれまた農協絡みで食べる機会が多いからお菓子の方が嬉しいそうだ。
なので、明日は多種多様なお菓子も大量に買う事が決定した。
そうと決まれば帰り道から爆買いツアーは始まっている。
ちなみに帰る間際、息子さんに挨拶しようと思ったらおっさんを正座させて説教していたからそっとしておいた。
おっさんはもっと叱られろ。
宿までの帰り道で砂糖や果物を買った。
これは出来合いの差し入れだけだと誠意が伝わらない可能性があるのを考慮して自作のお菓子を差し入れする為に必要な物だ。
以前、行商人のマルコと一緒に旅をしていた時。立ち寄った村で買った牛乳がまだアイテムボックスに入っている。
それを生クリームと脱脂乳に分離させる。
卵黄と大量の砂糖を混ぜて。牛乳と生クリームを熱しながら卵黄と砂糖を混ぜた物を少しづつ混ぜていく。
完全に混ざったら後は冷やしながらゆっくり撹拌して固まるのを待つ。
それでアイスクリームの完成。
ちょっと粗めだけど異世界クオリティで考えればかなり良い出来だと思う。
第2弾は果汁を加えたバージョン。
こちらはよりシャーベットっぽくなった。
異世界でアイスを見かけた事が無い気がするから手紙でカギノ伯爵にレシピを送っても良いかもしれない。
ちなみに、卵も牛乳も菌とかウイルスが怖いので殺菌効果のあるクリーンの魔法を掛けてある。
身体の汚れも服の汚れも1発で落としてくれる神魔法だが使っている人を見た事が無いのでもしかしたら習得するのが難しいのかもしれない。
いや、そうか。
俺と同じ転移者である先代のカギノ伯爵がアイスのレシピを残してないという事はそこの問題かもしれないな。
牛乳も生クリームも卵も生だから食中毒の原因になりうる。
マヨネーズをその理由で広めなかったみたいだからアイスも同じな可能性が高いな。
まぁ、ダメ元で送るだけ送ってみるか・・・。
そして、忘れかけていたが。
宿の女将さんに受け取ったばかりの米を渡した。
炊くのはランチタイムが終わってから夕食の仕込みが始まるまでの間。
そんな中途半端な時間に宿に居ないといけないとなると動き辛いと気付いたが今更どうにもならなかった。
電子レンジがあれば良いんだけどそんな文明の利器は流石に再現不可能だし。
代わりになる何かがあればとも思うが・・・。
そして、翌日は朝から動く予定だったので夕食を済ませた後は早めにベッドに入った。
差し入れ用に自作のアイスクリームも2種類用意した。
大皿をメインに皿を大量に買う。
デレク経由で伯爵様宛にアイスのレシピを送る。
ベッドの中で明日の予定を反芻していると閃いた。
蒸籠があれば温め直せるんじゃ?
あれば買おう。無ければ作るしか無い。
明日も大忙しだ。




