41話 DayDay.
おっさんとは違い息子の方は飲んでも理性は保ったままだった。
そして、美味い酒も程々に契約書を持ってきた。
「契約内容に問題が無ければサインをお願いします」
ザッと見た感じ問題無い。
それどころか、新米は小売りと同じ額で良いと言ったのに少し引かれているし、古米の方は大幅に割り引かれていると思う。
「安くないですか?」
「相場くらいですよ」
「無理言ってるんで割高なくらいで良いんですけど?」
「その条件で十分です」
そう言われるとこちらとしてはどうしようもない。
「んー、追加でお願いがあるんですけど」
「はい。何でしょう?」
「奥さんの料理がかなり美味しかったんで分けて貰えませんか?」
「私のですか?」
「はい。出来れば量が欲しいんで鍋とか買ってきますからそれに山盛り欲しいです」
「仕事も家事もありますから・・・」
「空いた時間で余裕があればで構わないです。どうですかね?あ、ちゃんとお金は払います」
「無理の無い範囲でなら作って差し上げれば良いんじゃないかな?」
「普通の家庭料理しか作れませんよ?」
「それが良いんですよっ!」
凝った料理とか高級食材とふんだんに使った料理なんかはレストランで食べれば良い。
家庭料理ってのは家庭を持ってないやつには縁遠すぎて・・・。
「こんなので良ければ」
「ありがとうございますっ!」
食事を御馳走になり、契約も済ませた。
おっさんの言っていた通り、精米には3日程掛かるそうで。おっさんが適当に言ってるだけかと少し疑っていたので心の中で少しだけ謝った。
宿に戻ってからは明日に向けて早くベッドに入った。
翌日は朝から街を色々と回って完全に業務用なサイズの寸胴を買い占めたり鍋も大量に購入した。
そして、差し入れ用に色々と買ったりしてからおっさんの家に向かった。
「ごめんくださーい」
「はーい」
と、奥さんがパタパタと走ってきた。
「早速で申し訳ないんですが・・・」
と、大量の鍋や寸胴を取り出すとかなり驚かれた。
「こんなに作るんですか?」
「作って貰えるなら?足りないよりは良いと思って大量に買って来ました」
そして、アイテムボックスの存在は昨日の時点で見せていたが性能は説明していなかったので、この機会に簡単に説明した。
「凄いですね・・・」
「なんで、量はどれだけあっても困らないです。温かい物はずっと温かいままなんで」
「腐ったりもしないんですよね?」
「はい」
「じゃあ・・・気合入れていっぱい作りますねっ」
「無理の無い程度で大丈夫ですよ」
それから、差し入れとして買ってきたお菓子や飲み物を置いてきた。
ちゃんと聞いた訳ではないが、あの規模の田んぼをおっさんと息子夫婦だけでやっているとは思えない。
従業員が居るか、少なくとも田植えや収穫の時期だけでも臨時のバイトを雇っているはずだ。
その人数は分からないがそこそこの人数が居たとしても行き渡るくらいには買っておいたので大丈夫だろうと思う。
宿までの帰り道の途中。
それなりに混み合った道を歩いていると狙い澄まして出会い頭の衝突・・・からのスリ。を目論んだガキンチョに出会した。
金目の物は全部アイテムボックスに入っているのでスられる心配は無い。
でも、小汚いガキンチョにぶつかられて良い気はしないので普通に躱す。
すると、バランスを崩してつんのめって転けていた。
そこからは何事も問題は無く、宿に帰った。
ベッドに横になり考える。
物語の主人公だったらあのスリのガキンチョをとっ捕まえて飯でも食わせてやって懐かれて教育でもして御者にでもしてるのかもな。
それで、小汚いガキ(♂)だと思っていたが風呂に入れたら美少女に大変身。みたいな?
貧相だった体付きもちゃんと食べさせてやったらバルンバルンに大成長。みたいな?
まぁ、それはこれが物語だったらの話だ。その上で俺がまさかの主人公だったとしたら。と、条件付けが中々に厳しい。
一緒に召喚された高校生組だったらそんな事もしていたのかもしれないな。
5人中4人は死んで、残りの1人も修道院に行った。
そして、国自体が崩壊したからその修道院も解体されている可能性が高い。
そうなるとあの娘は今頃生きてはいないだろうな。生きていたとしたら死ぬよりも辛い目に遭っている可能性が高い。
まぁ、俺には関係の無い話だ。
家庭料理を口にして日本を思い出し、感傷的になっているのかもしれない。
宿で食事を済ませてから、気分転換にと夜の街へと繰り出す事にした。
深夜、宿に帰って来た時には完全に気分転換も済んで色んな意味でスッキリしていた。




