39話 おっさん
おっさんにアイテムボックスを明かし金を持っている事も見せて分からせてやった。
「まぁ、お前が金持ってるのは分かった」
「おう」
「でも、あるだけは売れねぇんだよな」
「いや、それは分かってる。取引先に卸す分があるのは分かってる」
「お?そうか」
「余剰分で売っても良い分だけ俺に売ってくれ」
「よし、それじゃ、倉庫に行くか」
おっさんの家の直ぐ側にある倉庫に行くととんでもない量の米が積み上げられていた。
「時間が停まるって事だよな?」
「アイテムボックスか?そうだよ」
「だったら精米も済ませたやつの方が良いな」
「だな」
「ん?いっその事炊いたやつの方が良いのか?」
「そっちの方がありがたくはある」
「炊いてくれるトコ手配してやろうか?」
「マジ?それはマジで助かる」
「金は取るぞ?」
「当たり前だろ」
「そういや、金の話してなかったな」
「小売りの金額で良かったら売ってくれ」
「そりゃ流石にボリ過ぎだろ」
「飛び込みだし、単発だからそれで良いよ」
「いや・・・8掛けだな」
「引かなくていいって・・・」
金には困ってないし、良い物にはちゃんと払いたい。
「いいや、引くね。ただし」
「ん?」
「そのアイテムボックスの中には美味いモンも色々入ってんだろ?」
「まぁ、そりゃ入ってるけど?」
「それを飲み食いさせてくれや」
「分かった」
「お?良いのか?」
「動けなくなるまで食わせてやる」
時期的に収穫の最後の方らしく比較的余裕のある時期ではあるがまとまった量を一気に精米するには時間が掛かるとの事で3日後受け取りに来る事になった。
「今、宿住まいなんだろ?」
「うん」
「宿、移れるか?」
「別に良いけど何で?」
「知り合いの宿に移れるなら、そこで飯を炊いて貰おうかと思ってな」
そうして、宿を引き払い。おっさんの知り合いの宿に移った。
「って事だから、そいつの面倒見てやってくれ」
「よろしくお願いします」
「白米を炊くだけで良いんだね?」
「はい」
「余裕があるのはランチが終わってから夕食の仕込みを始めるまでの間だけだからね」
「はい、全然大丈夫です」
「はぁ~、手間ばっかり増やしてくれるよ。ホントに」
「手間賃は払わせて貰います」
「そりゃ当たり前だよ」
「それから1番良い部屋に泊まらせて下さい」
「そうかい?」
「あ、それから、良かったらこれどうぞ」
と、アイテムボックスから焼き菓子の詰め合わせを取り出して渡した。
「良いのかい?」
「はい、なんでよろしくお願いします」
「もう仕方ないねぇ。特別だよ?」
「はい、ありがとうございます」
「それじゃあ、精米が済んだら持ってきな」
「はい」
宿の外におっさんを見送りに出た。
「おっさん」
「ん?」
「全然、おっさんの効果無かったじゃん」
「まぁ、そんなもんだ」
「本当はおっさんって結構偉いんじゃねぇの?」
「どうだろうなー」
「でも、その割に舐められてそうだな」
「ただの酔っ払いだからな」
「調子良い事ばっか言って記憶無くしてたら、そうもなるか」
「そういうこった」
「ってか、今思った」
「んー?」
「俺に米売って大丈夫なのか?」
「大丈夫だが?」
「息子さんには言わなくて良いのか?」
「俺を誰だと思ってんだ?」
「酔っぱのおっさん」
「正解。息子に言ってダメだったらこの話ナシにしても良いか?」
「まぁ、そん時はしゃーないよな」
「すまん」
「そん時は他に売ってくれそうな人紹介してくれ」
「任せとけっ」
「おっさん」
「ん?」
「先に息子に言えよ?」
「おう?」
「飲む前にだぞ?飲む前に息子に伝えろ」
「任せとけっ!」
「いや、ちょっと待て」
「んー?」
「信用ならんから俺も言いに行く」
「そうか?」
「うん、おっさんに任せた方が手間掛かりそうだ」
「分かってるな。お前、実はやるやつだな」
「かもなー」
「無職のクセにな。ウチで雇ってやろうか?」
「いらねぇよ」
「頑張れよ・・・?」
「就活してねぇよ!」
「これからどうすんだ?ちゃんと考えてんのか?」
「いや、オカンか!」
「オトンだが?」
「そういう問題じゃねぇ!俺が心配してんのは米を売って貰えるかどうか」
「ふむ」
「おっさんは勝手な事して息子に怒られないかを心配しとけ」
「いつもの事だから大丈夫に決まってんだろ」
「堪忍袋ってのは切れる為にあるって事を今日思い知るかもな」
「マジっぽいから止めてくれ・・・」
「いや、おっさんはそろそろ真剣に怒られた方が良いかもしれんな」
そんなしょうもないやり取りをしながら歩いているとおっさんの家に着いた。
「大丈夫だ。骨は拾ってやる」
「フォロー頼むぞ?」
「大丈夫だ。おっさんが死んでも米は売って貰う」
「売らねぇぞ!」
「いや、ここまで来たらおっさん挟まずに息子に直で話した方が良い気もしてきた」
「それはそうかもしれん」
そこは否定しろよ・・・。




