36話 靴フェチ
以前、カルロから貰った連絡先というのは名刺で。商会の名前、カルロの名前、街の名前が書かれている物だった。
見ないように受け取り、見ないようにアイテムボックスに突っ込んだので名前を昨日まで知らなかった訳だ・・・。
そして、今回は地図まで受け取らされた。
オススメのルートも記されていてかなり便利だ。
冒険者ギルドや商業ギルド等、色んな所で安価で地図は手に入るがここまでは描き込まれていない。
詳細な地図は軍事利用にも繋がる為あまり出回らない。
そして、この地図には盗賊の出没ポイントや落石注意のポイント等の危険な場所も記されていれば村の名産に基本的な相場も記されている。
こんな貴重な地図俺に渡して良かったのか?
カギノ伯爵から今ではもう手に入らない激レアな酒を貰ったが。あれに近い感情になっている。
その価値に見合ったモノを返せる気がしない。
それに今回は勝ち逃げされたようなもので、返す相手が既に居ない。
これで尚の事、商会に顔を出しに行かなければいけない気持ちになってくる。
気を取り直して。
重い身体を引き摺り、鈍い頭を叩き起こす為のコーヒーを淹れながら馬の世話をする。
二日酔いと言う程ではないが酒が残っていてダルい。
コーヒーを飲んで頭は覚醒したが身体は重いままだ。
朝食は・・・作るのも面倒だし重たい物は食べられない。
水分補給を兼ねてリンゴを食べていると異様な程に視線を感じる。
「まだ飼い葉残ってんだろうが・・・」
鼻を鳴らしながらも視線は俺の持っているリンゴから外れない。
「ほれ」
半分程食べたリンゴを飼い葉桶の中に入れてやるとシャクシャクと小気味の良い音を立てながら食べている。
そして、一瞬で食べ終わると無言でこちらを見つめてくる。
「おかわり寄越せってか?」
ブルルルルと鼻を鳴らしてから大きく2回頷いた。
「これで終わりだぞ?んで、片付けたら出発するからな」
それには返事しないのかよ・・・。
こいつが人語を解する疑念を払拭出来無いまま出発となった。
いや、分かってる。
馬が人の言葉を理解する訳が無い。
人間だって犬や猫の言葉は分からないにしても機嫌の良し悪しや何かを伝えようとしてきている事自体は分る。
それと一緒で俺の言葉に対してリアクションを起こしているだけだ。
そんな事は勿論分かっている。
でも、もしかしたら?と1度でも考えてしまうと馬との会話ごっこはやりにくくなってしまう。
信じてないなら問題無いと思うかもしれないが。
だって異世界なんだから馬がスキルを持っていたとしても不思議じゃない。
この馬が異世界言語理解とかそんな感じのスキルを持っていたとしたらどうする?
そんな思考の沼に陥り、暇を持て余しながらも独り言を呟く事もなく。
でも、考え事をしていたおかげで気付いた時には結構な距離を移動していた。
「今日はこの街で泊まるか」
久しぶりに村ではなく街の規模だ。
カルロに貰った地図によると、ここは米の産地の様だ。
カギノ伯爵様の街では買い溜め出来無かったのでここで色々と買い溜めをしよう。
宿を取り、馬を預け、一息付いたら情報収集に向かおうと思っていたが意外と疲れが溜まっていたのか気付いた時には眠っていた。
年の所為だろうか?最近は疲れやすくなっている気がする。
わくわくドキドキ魔王討伐ツアーの時はもっと劣悪な環境だったがそこまで疲れは無かった様に思う。
まぁ、最初の方は必死だったし、死に掛ける事も多かったし、疲れ過ぎて気絶する様に眠っていたし、常に筋肉痛で全身どこかしらがずっと痛かった。
その時は別として高校生達が死んでから1人で戦うようになって、その頃くらいから戦闘パターンも確立出来たし命を奪う事にも抵抗が無くなったし安全に省エネで勝てるようになった。
まぁ、ぶっちゃけると降って湧いたチート能力に溺れて調子こいて派手に格好良く倒そうとして別の魔物を呼び寄せたり。自分の力に酔って単騎で敵に突っ込んでピンチになって敵の群れを引き連れたままこっちに逃げて来たり。
そんなバカ共が居なくなって戦いやすくなっただけとも言う。
話が脱線したが・・・軽く見た感じ、伯爵様の街・・・地図によるとフーバスタンクという名前らしい。
フーバスタンクよりも全然規模は小さいがここもそれなりに賑わっている。
ここで爆買いして経済を回す事で恩返しと罪滅ぼしをしたいとも考えている。
本音を言えば・・・旅の途中で野営をして料理をするのも醍醐味だとは思うが流石に飽きてきた。
1番のネックはバリエーションの無さだが・・・1人で作って1人で食べてというのが味気なさ過ぎて萎えてきたというのが大きい。
この規模の街であればしばらく滞在して求人を出す事も考えても良いのかもしれない。




