32話 スナッチ・スニッチ
ほとんどのガキ共は腹を満たすと直ぐに眠りについた。
ジジババはひっきりなしに俺に感謝を述べている。
煩わしいがここまで首を突っ込んだ以上は話を聞かない訳にはいかない。
「ちょっと良いか?」
「儂か?」
「うん、爺さんとお前」
「俺?」
「そう、お前ちびっこギャングのリーダーだろ?」
「ちびっこギャング・・・」
少し離れた所に2人を呼び出して事情聴取だ。
「大体、想像はついてるけど。お前らの素性は?」
年寄り連中は同じ村の出身だそうで。凶作で村が食い物に困り若いのを生かす為に村を出たそうだ。
子供達は色々で。捨てられた子も居れば、親が死んで流れ着いた子も居れば、食う為に村を逃げ出した子も居るらしい。
そして、子供達は1度はあの街に行ったそうだ。カギノ伯爵様の統治する街に。まぁ、この辺りもカギノ伯爵領ではあるが。
街でストリートチルドレンをやっていたが派閥やテリトリーの問題で街に居場所が無くなりここに流れ着いたそうだ。
「で、木を倒して荷台から盗むってアイディアは爺さんだろ?」
「な、何の事かさっぱり・・・」
「いや、良いって。最初は爺さんらがやってたんだろ?」
凶作がどうので追い出された。食い物が無くて追い出されるなんてのは冬って相場が決まってる。
冬に追い出されて食い物がなければ春までにはここのジジババは全滅してるはずだ。
それが今は春を越えて夏も越えて秋になろうとしている頃合い。
そう考えると食いつなぐ術があったという訳だ。
「そんな事は・・・」
「で、行商から盗んでたけどバレだして生きるのを諦めかけたタイミングでガキ共がこの集落に来た。違うか?」
「そ、その通りじゃ・・・」
「で、今まで自分達でやってた事をガキ共にやらせるようになった」
実際はもっと悪意だったりドロドロとしたものがあるんだろうと思うが認めやすい程度には綺麗な話にしている。
「しょうがないよな。年寄りならまだしもこんなガキ共を餓死させる訳にはいかないもんな」
「そ、そうなんじゃ・・・せめてこの子らは・・・」
「分かった、分かった。明日も食わせてやるから」
「良いのかっ?」
「とりあえず眠いから寝させてくれ」
こうなったら俺も腹を括るしかない。
翌朝、テントを畳み馬の世話をしてから全員に飯を振る舞った。
そして、比較的日持ちのする干し肉等の保存食を渡してからジジババ&ガキ共の集落を後にした。
ジジババには昨夜に引き続き感謝されまくった。
そして、ガキ共も喜んでいた。一部のガキはその上で俺からスリを働こうとしていたから恐ろしい。
ここはカギノ伯爵領。
あの街自体は繁栄している。そして、物流の中心地として発展を遂げている。
その分、半端な距離の村は外貨が一切入って来ないのかもしれない。
行商や旅人の休憩地にならず素通りされてしまうと。税を納め、買い物でも金を払い。農作物は税として納め、村人の腹に収まる。
すなわち、収入が無い。
そうなると食うはずだった農作物を売るしかない。そして、口減らしが必要になったのだろうと思う。
発展をあの街に収束させた結果。そんな事が弊害として起こっているのだろう。
街道を進み、次の村に辿り着いた。
そこで俺は手紙を書く事にした。デレク宛だ。
内容は、あの集落の場所と倒木ポイントを記し。年寄り達と子供達のしている事も記した。
そして、その事をセバスチャンさんに伝えてくれ。と、締めくくった。
即座に部隊が組まれ捕物劇が繰り広げられるだろう。
爺さん達にもガキ共にも何の恩も無いが伯爵様にはある。
そして、追放されてたとはいえ実の息子を殺してしまった罪悪感もある。
爺さん達にも子供達にも同情の余地はある。
でも、犯罪は犯罪だし。裁きは受けるべきだ。
しかも、あの街は物流をメインとした街だ。
そして、行商をターゲットに盗みを働いていた訳だから。規模は小さいにしてもあの街の根幹を揺るがしかねない事をやっていた訳だ。
行商といえば、旅の途中で世話になったマルコも既に懐かしい。
今も元気にしているだろうか?今も未亡人とよろしくやっているだろうか?
いや、未亡人には彼氏が出来たんだっけか・・・。
護衛も付けずに危険と隣り合わせで旅をしていて。護衛代を払うと赤字になってしまうほどの薄利でやっていた。
そんなマルコの様な行商も多いはずだ。
そんなやつからも盗みを働いた訳だから相応の報いは受けなくてはならない。
そんな思いもあってチクるのに胸は痛まなかった。
まぁ、ガキ共は捕まった方が良い生活が出来る可能性が高い。孤児院に入るなり仕事を充てがって貰える可能性がある。
まぁ・・・ジジババは知らん。




