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31話 自覚

2頭引きの馬車は結構な速度が出る。

そして、荷馬車と違って荷物も積んでなければ、乗合馬車の様に人も乗せていない。


森の中を抜ける街道を走らせていると道を塞ぐ様に倒木があり、速度が出すぎていたのもあって馬車が止まったのは本当にギリギリの所だった。


「面倒くせぇ・・・」


倒木が。では無い。

こんな物、アイテムボックスに入れてしまえばそれで済むのだから。


何が厄介かと言うと。この木は故意に倒された木であると言う事。

そして、両サイドの茂みの中には気配が多数あるという事。


本来、この程度の厄介事なら気にも留めない。

でも・・・茂みの中に居る気配が盗賊では無いという事が厄介だ。

探知スキルに引っかかる気配がどう考えても小さい。どう考えても茂みの中から今にも飛び出して来そうなのは子供。

厄介が過ぎる・・・。


「ウィンドカッター」


あえて魔法を使って倒木を派手にふっ飛ばしてやった。

これで子供達は襲って来ないだろう。

そうして、予想通りリーダーっぽいやつがストップを掛けたようだった。


そこからしばらく進むと小川があり。そこに結構な人数が集まっていた。

そろそろ陽も傾き始めていたのでそこを今日の野営地とする事にした。


馬車を停め。ここで野営する許可を得る為に話しかける。


「すいません」

「ん?」

「ここで野営しても大丈夫ですか?」

「構わんよ。誰の土地でもない」

「それじゃあ、馬も居るんで少し離れますが何かあれば言って下さい」


近づいて分かったが年寄りばかりだった。

子供の次は年寄り。ちょっと嫌な予感がする。


そんな確証も無い嫌な予感を振り払うべく馬の世話をする。

馬装を外して水浴びをさせて、水を飲ませ、飼い葉を食わせ、マッサージをしてやる。


2頭も居ると世話だけで結構な重労働だ。

御者を雇う事も前向きに考えないといけないかもしれない。


馬の世話が終わったら今度は自分自身の世話だ。

火を起こし、湯を沸かしてお茶を淹れる。


「ふぅ~~~~」


一息付いたら今度は飯の準備だ。

こんな事ならあの居酒屋で大量に買い込んでおくべきだったが今更どうにもならない。


鍋に干し肉と野菜を適当に入れて即席スープの出来上がり。

夕食はこのスープとパンだ。


気分的にはまず冷奴。掛けすぎなくらいに醤油を掛けた冷奴をつまみながらビールを飲んで。

後は枝豆をつまみながらのビール。


そんな日本の夏を思い起こさせるメニューが理想だ。


まぁ、ここは日本では無いし夏でも無い・・・。


日本の夏なメニューを挙げたが御者台というのは意外という程では無いが風に晒されていて体温を奪われる。

なので本当は冷奴や枝豆なんかよりも温かくて塩っぱいだけのスープの方がありがたかったりする。


体温も戻り、腹も満たされて焚き火をぼーっと眺めていると良い感じに眠気もやってきた。

このまま眠ってしまいたいがテントをまだ張っていない。

最初は馬車で寝る事も考えたが足を伸ばして寝れる広さは無いので却下。


という訳で、既に陽は落ちて暗くなっているので焚き火の明かりを頼りにテントを張る。

組み立て済みの物をそのまま出しても良いのだが人の目があるので1から組み立てざるを得なかった。


馬の飲み水と飼い葉を補充してからテントに入る。


眠たいので意識したくないが探索スキルが仕事をして、日中の嫌な予感がどんどん近付いてくるのが分かる。

そう。

わざと倒木させて足止めをして馬車が止まった隙に荷物をパクったりするのがメインだったとは思う。

それが、今回は荷馬車ではなく普通の馬車で。しかも、俺が魔法で木をふっ飛ばしたもんだから盗む事も出来ず襲う事も出来なかった。ちびっこギャング達がこちらに近付いてきている。


ちびっこ達が到着した頃には俺は半分寝ていて半分起きている様な夢現(ゆめうつつ)な状態だった。


ちびっこのリーダーが年寄りの元に行ったかと思ったら今度は年寄りが1人テントに近付いてくる。


「何か用か?」


牽制としてこちらから声を掛けた。


「お主、貴族の従者か何かじゃろ?」

「んー、で?」

「子供らが腹を空かせとってのう。少しで構わんのじゃが・・・」

「んー・・・爺さんらがガキ共に盗ませてんのか?」

「わ、儂らは何もしとらんよっ」

「俺は厄介事に関わりたくない。そっちも藪蛇になる気しかしないから関わらない方が良いと思うんだけどなぁ」

「いや、子供に少し飯を食わせてやりたいだけなんじゃ」

「分かった、分かった。俺は知らないぞ?爺さんの責任だからな?」

「??良いのか?」



それから大きな鍋を持ってこさせ。そこにさっき食ったのと同じ様に干し肉と野菜を適当に放り込んで簡単なスープを作りガキ共だけじゃなくジジババにも振る舞ってやった。

そして、これは完全に厄介事に片足を踏み入れる自覚を持っての行動だった。


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