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30話 カツ丼

取調室で俺の担当になった2人は腰の角度が90度のまま一向に頭を上げない。


「いや、頭を上げて下さい」

「「・・・・・・」」

「別に俺に対して悪意を持って尋問でもしようとした訳じゃないですよね?」

「「・・・・・・」」

「端から俺を犯人にしようとしたりしてないですよね?」

「「・・・・・・」」

「無言って事は肯定と捉えても構わないんですよ?」

「ち、違いますっ」


これは・・・俺をどうにかしようとしてたか?


「どうしたら良いですか?」

「「・・・・・・」」

「流石に帰るのは不味いですよね?」

「「・・・・・・」」

「取り調べをするか、俺を帰らせるか、話の出来る上の人を呼んで来るか。どれかでお願いします」

「えっと、あの・・・」

「はい」


コンコン───。


すると、ノックの音が響きセバスチャンさんが入って来た。


「失礼致します」

「え?セバスチャンさん?」

「はい、ミト様が勾留されていると聞きまして」

「助かりました。埒が明かなくて・・・」

「少々、不味い事になりました」

「えっ・・・」

「お2人は外して頂けますかな?」

「「は、はいっ」」


と、警備隊の2人を部屋から追い出した。


「怪我をさせたゴロツキ3名に関しては問題ございません」

「はい」

「亡くなられた方が・・・」

「はい・・・」

「カギノ様の御子息でして・・・」

「はい?」

「いえ、あの、何と申しましょうか・・・」


聞くとあいつは伯爵様の実の息子だが子供の頃から問題児で大人になってもバカなままだった為、伯爵家から追放されて縁も切られているそうだ。


伯爵様は晩婚で子供が出来たのも遅かったそうだ。

年を取ってからの子供が可愛くて仕方なくわがまま放題に育てた結果だそうで・・・。


跡継ぎに関しては、そのバカ息子があちこちに子供を拵えてたそうで。

全員腹違いの5人兄弟は伯爵様が引き取って跡継ぎにすべく英才教育を厳しめに施しているそうだ。


「ミト様が被害者なのは理解しております」

「はい・・・」

「そして、デレクからも聞きましたので事故なのも理解しております」

「はい・・・」


殺すつもりではなかった。足を狙ったがあいつが転けて当たりどころが悪かった。としか・・・。


「カギノ様がミト様に害を為すとは思えませんが・・・このまま街から出られる事をお勧め致します」

「謝罪とかは・・・」

「いえ、急用が入ったとお伝えしておきます」

「息子さんの事は・・・」

「全く関係の無い所での事故として処理致します」

「分かりました」

「ご理解感謝致します」


セバスチャンさんのおかげで結局は取り調べもなく解放された。

そして、宿に向かい自前の物を回収し宿を引き払う手続きも済ませた。


宿を出ると。


「セバスチャンさん・・・と、デレク」

「馬車を用意致しましたのでお使い下さい」

「ちゃんと証言したので大丈夫ですよ」


セバスチャンさんが用意してくれた馬車。

乗合馬車とか行商の荷馬車に乗れるよう話を付けておいてくれたのかと思ったら普通に馬車が用意されていた。


「え?」

「差し上げますのでご自由にお使い下さい」

「良いんですか・・・?」

「はい。カギノ様は今も憎からず思っておられるようですが・・・私としましては・・・」

「え・・・」


やっと厄介なやつが居なくなってくれたって感じ?

え、いや、それのお礼って思うと受け取りたくなくなってくるんだけど・・・。


「あぁ、いえ、最後の最後まで迷惑を・・・おっと。ミト様との良縁を絶たれた訳ですから・・・」

「あー、もう大丈夫ですっ」


きっとこの愚痴は止まらない。

今日は飲んでないけど止まらないはずだ。


「また折を見てお越し頂けますか?」

「そうですね。しばらく空けないとでしょうけど」

「またのお越しをお待ちしております」

「はい、お世話になりました。デレクも色々ありがとね」

「はいっ」


ちなみに貰った馬車はというと2頭引きの豪華な馬車だ。

外に御者台があり後部は個室になっているタイプの・・・貴族が乗る様な豪華な馬車。


そして、御者までは用意されていないので俺が御者台に座るしかない。


御者台に飛び乗り。


「それでは、また」


馬車を走らせる。

今度こそ獣人の国に向けて。


そんな目的があった事は馬車を走らせ出してから思い出した。

もっと言うと、この街に来て以降ずっと忘れていた。


「それにしても・・・」


めちゃくちゃ良い馬車だ。

サスペンションがしっかり効いていて多少の段差なら御者台からでも感じない。

後ろならばもっと快適なはずだ。


御者を雇うべきか・・・?

雇うとして、どうやって雇う?

獣人の国に着くまで御者をやって欲しい。片道だけの契約なんて誰が受けてくれる?


超長距離の片道契約。うん、俺なら断るね。



そして、俺が巻き込まれ体質なのを忘れていた。

視線を先に向けると、そこには厄介事が待ち構えていた。


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