236話 木材
これで何度目だろうか?シェリルさんに任せっきりなので納品した回数を全く把握出来ていないが俺が打った剣を載せた馬車がフーバスタンクへ向けて出発していった。
「まだロングソードですか?」
絶対にロングソードじゃないと卸さないと言われている訳では無いが。出来ればロングソードを打って欲しいと言われている。
ただ、毎日毎日ロングソードを打っているのにも流石に飽きが来た。
飽きて飽きて飽きて無になって無感情なままロングソードを打ち続け。そして、それにも飽きて飽きの絶頂状態に至った。
「槍を打って欲しいそうです」
「槍!?」
打った事が無い。
何故なら槍の金属部分は先っちょの穂先だけで大半は木製の柄だから鍛冶仕事という認識じゃなかったから。
いや、石突きも金属か。
「それは、柄の部分もこっちで作るんですか?」
「出来れば完成品を納品して欲しいそうですが。無理であれば槍頭部のみでも構わないそうです」
「ちょっと考えます・・・」
「はい」
ナエジに剣を卸した金は農協の口座に入れて貰っている。
大金ではないにしろ口座に金が入れば農協に取っても多少はプラスに働くはずだ。
それが回り回っておっさんやジョーさんに返ってくれればという迂遠な礼として農協の口座に金を入れている。
おっさんだったら、そんな細かい事気にするくらいならエールの1杯でも奢れと言いそうだ。
「おっさん、槍の柄の部分作らないか?」
「それ以外はお前が打つのか?」
「うん」
「作ってやっても良いが・・・」
「お?良いのか?」
「材料はあんのか?」
「木だろ?」
「何でも良い訳じゃないからな?分かってんのか?」
「槍用の木があるのか」
「槍用・・・まぁ、生木じゃダメなのは分かるな?」
「伐ったばっかの木だよな?」
「そうだ。伐って乾燥させてから加工する訳だが」
「っても、大抵の木工品ってそうだろ?木製の鞘とかも」
「鞘なんかは変形しなけりゃ良いだけでな」
「ふむ」
「槍の柄なんかはしなりが要るよな。粘りのある木で重くて堅い木じゃないとダメだ」
「どういう事だ?」
「まぁ、待て。槍だから長さも要るだろ?」
「うん」
「簡単に言うと。そんな木はあんまり流通してない」
ふむ・・・。
なら穂先だけの納品になるのか。
「いや、待てよ」
「ん?」
「お前、時間あるな?」
「時間?これからか?」
「いや、そんな短時間じゃなくてしばらくだ」
「まぁ、別に槍を作るくらいしか用事は無い」
「仕入れに行くぞ」
訳も分からないまま準備をさせられ馬車に乗せられてどこに何を仕入れに行くのかすら説明されないまま馬車は走り出した。
「そろそろちゃんと説明してくれ」
「んー?さっき言っただろ?」
「仕入れだろ?もうちょい詳しく」
「森行って木を伐る」
「仕入れって買付けに行くんじゃないのかよ」
「んで、アイテムボックスに入れる」
「乾燥はどうすんだよ。何ヶ月も掛かるもんなんじゃないのか?」
「アイテムボックスの中でどうにか出来るんじゃねぇのか?」
「あ・・・出来る。多分だけど」
「だろ?これで問題は解決だ」
アイテムボックスの中に木を入れて、時間経過の速度を上げてやればそれで乾燥させられるような気がする。
「もしそれが出来るんならさ?」
「おう」
「酒の熟成も一瞬で出来そうな気がするんだけど」
「だろうな」
「だろうな!?」
「そりゃ、出来るだろうよ」
セラーを作るくらいに熟成に熱を上げてるくせに・・・え?なんで?
「あ、金か」
「何の話だ?」
「セラー作って熟成させてんのって安く美味い酒を飲む為だろ?」
「まぁ、それもあるな」
「だから、俺のアイテムボックスで時短したら。それに掛かるであろう費用を俺に払うべきとか考えそうだろ?おっさんの場合」
「まぁ、そうか?」
「でも、そんな事したら本末転倒だから頼んで来なかったって事じゃないのか?」
「安く美味い酒が飲みたい。それは正解だ」
「おう」
「でもな?熟成はそれだけじゃないだろ」
「なんだ?」
「ロマン感じないか?」
「あー、まぁ、分かる」
「ロマンが欲しいのに、そこを横着したら本末転倒ってヤツじゃねぇのか?」
「確かに」
なるほどな。
セラーで酒を熟成させるのは美味い酒を飲む為とロマンを追い求められるおっさんの中で効率の良い遊びだったんだな。
「酒の方は納得出来た」
「おう」
「で、木はどうするんだ?」
「ん?」
「伐った木をそのまんま突っ込んでもダメだろ?」
「だな」
「どうすれば良いか着くまでに教えといてくれよ」
「モノも無いのに説明しても分からんだろ」
「うーん・・・」
「現場で実際にやって見せる。それのが早い」
「まぁ、そうか」
何故かおっさんは説明したがらない。
相変わらずの事だから慣れた・・・と、言いたい所ではあるが簡単にで良いからサラッと説明して欲しくはある。
でも、まぁ・・・そんなこんなで目的地である山に到着した。
山までの距離も教えてくれなかったが意外と近くて助かった。




