233話 お勧め
エーリッヒへの研ぎの指導もそこそこにベッドの設置を済ませ。危うく忘れそうになっていたがリンさんにカーテンを買いに行って貰った。
「研ぎやった後、意外と汚れるから毎回掃除は必須な」
「そうなのか?」
「しかも、ここで寝泊まりするんだから掃除は尚の事必要だろ」
「ふむ・・・」
「先に言っとくけど・・・あんまり汚すと追い出すからな」
「マジかよ・・・」
こうは言ったがエーリッヒは綺麗好きだ。
掃除もマメにやるタイプではあるが・・・俺が居ると面倒がって何でも俺にやらせようとしてくる嫌いがある。
なので先んじて釘を差しておいた。
「ところで、フーバスタンクに行く依頼ってどんな依頼受けたんだ?」
「あぁ、別にフーバスタンクに行く依頼じゃなくて、フーバスタンクは通過するだけだな」
「ふーん」
「だから、折角教えて貰ったが明後日からしばらくは戻らん」
「しばらくってどんくらいだよ」
「っても、1ヶ月か2ヶ月くらいだ」
「結構だな」
その間にリンさんに研ぎをやらせたら2度と追いつけない程の差が開きそうだと思ったが・・・それを言うと不貞腐れるどころか完全に心がへし折れそうなので必死に飲み込んだ。
「まぁ、戻ってきたら頼むぞ?アテにしてるんだからな」
「おう」
「それで、今日からここに泊まるのか?」
「いや、宿にはもう金払ってるから帰ってからだな」
「それまでにはカーテンも着けて普通に寝泊まり出来る様にしとく」
「ん?今、買いに行ってるじゃねぇか」
「カーテンは、な」
「??」
「カーテンを取り付けるレールが無ぇ」
「あ・・・」
「っても、外に大工がこれだけ居るんだから言えば明日には着けてくれるだろうけどな」
「んじゃ、帰った頃には快適な部屋になってるって訳だな」
「カーテンが着くだけだけどな」
「よし、んじゃ、そろそろ行くわ」
「お?」
「買い出しやら準備がまだ残っててな」
「そうか。って、飯はどうする?」
「あー、帰ってからの楽しみにしとくか」
「おっけー、んじゃ、気を付けて行ってこいよ」
「おう」
エーリッヒと入れ替わりにリンさんがカーテンを抱え・・・ずに手ぶらで帰って来た。
「明日、採寸に来てくれるそうです」
「あー、はいはい」
カーテン屋さん・・・なんてものは無いだろうから布系全般を取り扱っている店だろうか。
「取り付けとかは」
「レールも用意してくれるそうです」
なるほど。餅は餅屋って事だ。
だったら変に手を出さずに任せておいた方が良いっぽい。
「じゃあ、この後もリンさんに任せても良いですか?」
「かしこまりました」
「それで、研ぎはどうでした?」
「楽しかったです・・・」
「これからもやってみたかったりします?」
「えっ、良いんですかっ!?」
お?ある程度予想はしていたけど、予想以上の反応だ。
「むしろ、手伝って貰えたら助かります」
「やりたいですっ」
「あ、でも、仕事もあるでしょうから。出来る範囲でお願いするかもしれません」
「お母・・・母が居れば正直私がする事は無いので・・・」
「シェリルさんとも相談してから決めましょうか」
「はいっ」
労働力ゲット。
出来はするけど、そこまで好きじゃない研ぎの作業を減らせるのはラッキーだ。
その後、シェリンさんと相談した結果・・・リンさんは研ぎに専念して良いとお許しが出た。
正直、フーバスタンクのお屋敷と違ってこの普通の家ではやる事も少ないそうだ。
「どうでしょうか?」
「うん、これなら十分任せても良いかも」
「やったっ」
今回の事が無ければ存在そのものを忘れていたアイテムボックス内にあった盗賊から奪った武器の数々はリンさんの研ぎの練習台として大いに活躍してくれた。
研いで貰ったのだから売っても良いと思ったが元が元なだけに品質は良くない。なので、折角研いで貰ったが鋳潰して別の剣へと生まれ変わって貰おうと思う。
そして、俺が打った剣をリンさんに任せても良いと思えた頃には倉庫が完成し、残すは平屋の家だけとなった。
ここ最近は職人さん達と一緒にシェリルさんリンさんも帰っている。
まぁ、その大群には俺も居て2人を送り届けた後は皆で飲み会という流れではあるが・・・。
そして、朝方まで飲み。職人さん達は朝早くから出勤。俺は昼くらいまで爆睡。
相変わらずこの世界の人達のショートスリーパーっぷりには驚かされる。
終電で帰って持ち帰った仕事を家でやって始発で出勤する様なブラックな人も多く居るだろうが・・・こっちの世界では皆遊びも仕事も楽しそうにやっているのでブラック企業にお勤めの人はチャンスがあれば転生とか転移もオススメではある。
しばらくして帰ってきたおっさんはまた増えた建物を見て目を白黒させていたが・・・説明すると、ついでに自分が鞘を作る用の工房も建てろとか言い出したりもしていた。




